朽木ルキア大ブレイクの予感パート11 :  ハルキ氏 投稿日:2005/10/08(土) 00:55:51


『――縛』


十三番隊の隊室内から間断なく聞こえる男女の叫び声は、まさに佳境を迎えたところであった。
ヒステリックなほどに大きな声を上げて目の前の少女に懇願する青年の姿は、傍から見ればひどく道化じみていた。
「どうしてだ!?」
「……何度も言ったはずだ。貴様と私とでは住む世界が違う」
その突き放すような言葉に、緋色に燃える髪を逆立たせた青年が苛立った顔で少女の腕を掴んだ。
その細く白い手首を赤く爪の痕が食い込むほど力強く握って、彼は彼女を己のそばに繋ぎ止める。
「いいか、ルキア。朽木隊長のことなら、俺が何とでも説得する。だから――」
「くどい。私はお前の妻になる気など欠片もない。……分かったらとっとと自分の部屋に戻れ」
何度も交わした問答。その度に告げられる一方的な拒絶。
けれど、彼女が口にする冷たい言葉がでまかせである事に、阿散井恋次は気づいていた。
ルキアが自分に向けて『好きではない』と吐き捨てるとき、その瞳には隠しようのない戸惑いの色が残されている。
それがただの自惚れや勘違いではないと確信できる程度には、彼は彼女についてよく知っているつもりだった。
故意に聞こえるような舌打ちをして握り締めていた手をぶっきら棒に振り払うと、言われるがままに室内を後にする。
無言で乱雑に襖を開けた恋次に、ルキアもまた何も言わずに立ちつくす。
先ほどまで掴まれていた左手首をそっともう一方の掌でさすりながら、彼女は視線を床へとそらした。
その姿に心を掻き乱されるのを気力で振り払うと、恋次は後ろ手で力任せに襖を閉め、振り返りもせずに渡り廊下へと歩き出る。
岩でもくくりつけられたような重い足取りで廊下を行きつつ、恋次は思っていた。
ルキアを幸せにしたい。自分が願うのはただささやかにそれだけであるのに、どうしてこうもうまくいかないんだ、と。
全ては、そう全てはあの家が悪いのだ。
家名の元に彼女を縛りつける朽木の家が、そしてその当主である朽木白夜という男が、彼はひどく憎かった。
「くそっ!」
苛立ち紛れにそう叫ぶ表情には、不甲斐ない自身への焦りと苛付きばかりが覗いていた。

*          *          *

――恋次は一つ、大きな思い違いをしていた。
彼女が朽木白夜以外の男に雁字搦めにされているという事態に、彼は思い至らなかったのだ。
しかしそれは、仕方がなかったと言えるだろう。
朽木ルキアを真に閉じ込めているその男は普段余りに人当たりがよく、誰も裏に秘めたもう一つの顔があるなど思いもしなかったのだから。
その男の名は――――。
「浮竹隊長。……いらしたのですか」
先ほど恋次によって閉ざされたばかりの襖がするりと開き、そこから長身の男が姿を現す。
猫のように音を立てずに室内に足を踏み入れた彼は、一見温厚そうな笑みを顔に張り付かせて口を開いた。
「朽木が俺の言いつけを破らないかどうか気になったんで。
けど、安心したよ。阿散井君の頼みはしっかりと断った様だったからな」
その聞き流しただけではまったくもって穏やか極まる声音に、ルキアは至極冷徹な声で返す。
「当たり前です。隊長の命令は絶対ですから。それに、そもそも今の私にはあいつの申し出を受ける資格などありません。こんな……」
「こんな汚れた身体の私には、か?」
その言葉にひくりと半分眉根を持ち上げて心底嫌そうな顔をしたルキアを毛ほども気にせずに、浮竹はどこか空恐ろしい表情で微笑みかける。
「何でそんな顔をする?」
「いえ……」
「お前は汚れてなどいないさ。何せ俺はお前を一度たりとも抱いていないからな。そうだろう、朽木?」
くっくと小さく喉の奥で笑いながらそう問われ、憎憎しげに唇を噛み締めながらルキアが答えを返す。
「……はい」
それは一つの側面から見た事実であった。
何故ならこのひどく病弱な男は、幼い頃に罹った熱病の影響だとかで女を抱けぬ身体をしているのだから。
そのため確かに契りを交わしたことは皆無だったし、無下に純潔を奪われたというわけでもなかった。
けれど。けれど代わりにこの男は――。
「今日も……ですか」
「ああ、頼むよ、朽木」
およそ感情というものの感じられない声で尋ねたルキアに、浮竹がこちらも表情を変えずに応える。
元より予想していた返答にふぅと一つ息を吐くと、ルキアは己の隊服を締める帯にそっと手をかけた。
紺色の帯がはらりと床に落ち、同時に胸を隠していた前のあわせが大きく開け広げられる。
新雪のような肌を外気に晒したルキアを、浮竹が食い入るように見つめている。
「相変わらず綺麗だな」
「褒められても、嬉しくなどありません」
「まぁ、惚れてもいない相手ならそうだろうさ」
言外に、恋焦がれる男に言われたのなら別だろうにと含ませて、浮竹はルキアの白い肌を注視した。
彼女のその素肌は、さながら蝋細工の人形を思わせる滑らかさであった。
それを目の前に、ごくりと浮竹の喉が僅かに上下する。
その好色そうな上司の姿を出来る限り視界に入れないように注意しながら、ルキアは手早く着物を脱ぎ去った。
そうした方が変にゆっくりと時間をかけるよりも羞恥が少ないのを、ルキアは長い経験から学び取っていたのだ。
ぱさりと乾いた音を立てて身を覆っていた薄布を剥ぎ取り、一糸纏わぬ裸体を惜し気もなく浮竹の前に曝け出す。
腕は必ず後ろに組まねばならず、決して胸や性器を隠してはいけない。浮竹にきつく厳命されているからだ。
そのため、発達途中の薄い胸元の膨らみや、その中央に揺れる桜色の小さな突起、下腹部の薄い下生えまで、その全ては視線の刃に捧げられることとなる。
微かに獣じみた瞳が放つ暴力は、筆舌に尽くし難い苦痛であった。
上から下まで舐めるように凝視ながら、時折何を思うのかぺろりと唇を舌で濡らす。
そのときの表情と舌の動きがはっとするほどに嫌らしくて、ルキアはそれを見るたびに肌をぞくりと粟立たせてしまうのだ。
直接的な陵辱をしない代わりに手と口、そして視線と言葉とを使ってルキアの全身を犯す浮竹が、ルキアはひどく怖かった。
彼が何より好むのが、ルキアが己で己を慰める様を見ることだというのも、彼女には理解しがたく吐き気がした。
「……それじゃまずは首筋を外から内へ」
「……分かりました」
言われたとおりに右手を首に添え、細い頚部を指先でなぞる。
ぞくぞくと背中を総毛立たせる彼女を見つめながら、浮竹が命令を続ける。
「そのまま、もう片方の手で胸の周りを撫で回すんだ」
頷いて、未だ背中に回していた左手を右胸に寄せる。円を描くように周囲を愛撫すると、張り付いた汗が玉になって床に落ちた。
徐々に中心の突起部が硬くなっていくのを感じるが、浮竹の『お許し』はそうすぐには出ない。
触れたい部分に触れられず、周りだけを撫で回さねばならないもどかしい思いに、吐く息が荒くなっていく。
「…………っ、んっ……」
「触れたいのか?」
一言だけ唇から漏れ出てしまった声を聞きとがめ、浮竹が意地の悪そうな口ぶりで訊く。
情事の最中は決して嘘を吐いてはならない。これも浮竹から言われている気色の悪い命令だ。
それを律儀に守り、ルキアは己の胸の内を言葉にして伝えた。
「……はい」
「まだ駄目だ。両手で胸の周囲だけを撫でろ」
仕方なく、手に隠れそうなほど小さな両の乳房をさわさわと擦り続ける。
刺激を待ち焦がれて勃ち上がりかけたそこをわざと避けて愛撫するのは、さながら甘やかな拷問のようだった。
「浮竹隊長…………っ!」
熱っぽく湿った声で名を呼ばれ、浮竹が仕方ないなと言いたげな顔で口を開く。
「嫌らしいやつだ。……まあいいさ、そんなにしたいなら勝手にすればいい」
そのやっとでた許しの言葉に、ルキアがそれぞれの手の指先を乳首へと向かわせる。
摘み上げてきゅっと横に捻ると、そこを中心に甘美な快感が全身へと広がっていった。
くりくりと指の腹を用いて弄くってやれば、思わず嬌声が溢れる。
「……ぁっ、……ふ、はぁっ」
快楽の渦に押し流され、ルキアはもっともっとと言うように自身の胸先を突付きまわす。
ピンと勃ったそこを強く引っ張ってから傷つけるように爪で痕を付けると、痛みと同時に堪え切れない快感が身体を襲った。
その官能的な光景に、浮竹がくすりと笑みを浮かべながら茶々を入れる。
「いい手つきだな。随分と気持ちよさそうな顔をしてる」
「……はっ、そん、な……い、言わないでください……」
「初めてウチに来たころは一人遊びも知らなかったのに、まったく変われば変わるものだ」
その言葉に、ルキアがびくんと肩を揺らして反応する。
そうだ。入隊した頃は、自分もこんなに淫乱な娘ではなかった。
しかし、護廷十三隊において隊長の命令は常に絶対である。
学院を出たての新入女子隊員の最初の指令が隊長の夜伽の相手であるのなど、死神の内では最早暗黙の了解に近い。
――対面したその日に寝所へ赴くよう告げられ、何が何やら分からぬうちに約束の刻が来た。
恐怖と恥辱で慄く私に、隊長はきっぱりとした口調で自身が男として機能しないことを告げた。
そして願ったのだ。代わりに君の美しい素肌を見せてほしいと。ただそれだけでいいからと。
正直、拍子抜けした。
隊によっては正気の沙汰とは思えない辱めを受ける場合もあるらしいのに、たったそれだけで構わないのかと思いながら私は従った。
恥ずかしさこそあったものの、この時の浮竹隊長は優しく、ひどく紳士的であったのでそこまでの嫌悪は感じなかった。
……けれど何故か、その後徐々に隊長は変わっていった。
昼の任務のときは常に冷静で温和に務めているのに、夜になると野獣のような目をしてこちらを視姦する。
毎年新人が勤めるのが慣例であるはずの夜伽相手は、自分が入ってからは以後何年経っても私一人が毎夜のように指名されるようになり、その行為も段々とエスカレートしていった。
――嫌だった。隊長がではなく、拒むことの出来ない自分が。
断ること自体は簡単だ。しかしもしそうして隊長の機嫌を損ねれば、自分程度の実力の人間は生涯席官入りなど望めないだろう。
そうなったら折角の朽木の家に泥を塗ることになる。それだけは何としても避けねば……。
ひどく強かに打算的にそう考える自分が、心底嫌で嫌で仕様がなかった。
「私をお変えになったのは……隊長ではないですか……」
手を止めてぼんやりとそう呟いたルキアに、浮竹は無言で冷たい視線を突き刺した。
どこか心苦しそうな沈黙のまま目線を下へと降ろすと、落ちてくる前髪を苛立たしげに耳に掛けて声を荒げる。
「そうだな。でも逆に、俺をこんな男に変えたのはお前だよ。お前と出逢って初めて、俺は女を心から欲望する想いを知ったんだから」
暗い瞳でそう言って、浮竹はふぅと細く息を吐く。
一瞬、遠くを見るように目を細めてから、何かを揶揄するような冷笑を唇に乗せてルキアに向き直る。
「……胸は終わりだ」
その言葉が意味する内容を、ルキアは当然分かっていた。
命じられたままに胸から手を離し、既に濡れそぼった内股の間へと指先を滑らせる。
くちゅくちゅと音をさせてそこを弄るうちに、溢れる吐息が熱を持っていく。
自然に零れ出る愛液を指で絡め取って鋭敏な萌芽に塗りこみ、ぐりぐりと力強く指の腹を押し付ける。
そのまま上下に掌を動かすと、快感以外何も考えられなくなって部屋中に響く大声で喘いでしまう。
「あっ……ぁっ、はぁっ……あぁっ!」
「朽木はそこが好きなんだよな。でももう少し声を抑えないとまずいんじゃないか?」
浮竹が声について指摘するのは、外にまで聞こえてしまうほどの声量の時くらいだ。
焦って嬌声を抑えねばと指の動きを止めると、しかし彼は鬼畜じみた表情で矛盾する命を告げた。
「おいおい、指は止めるなよ。そんな命令はしてないだろう?」
「でも、たいっ、ちょう…………」
見えない糸で操られてでもいるように手を動かしながら、腿の内側をがくがくと震わせてそう懇願するルキアに、浮竹はにべもなく返す。
「ほら、早く続けろ。それともそろそろ自分の指じゃ足りなくなってきたか?」
「そんな、ことっ……な……です」
「そうか? 気づいてないだろうが、お前、女の顔になってるぞ。……男の熱が欲しくてたまらないって感じのな」
そう言ってようやく、浮竹はこの晩初めてルキアに触れた。
熱の塊のように火照った指先で彼女の顎をくいと斜めに持ち上げ、眼下の怯える少女に貪るような口付けをする。
獣が獲物を喰らうような勢いで、浮竹はルキアの口腔を犯した。
尖らせた舌を彼女のそれに絡ませて、ちゅぅっと強く吸い上げる。
それに反応し、びくびくと全身を震わせて腿を擦り合せるルキアが面白くて、浮竹はなおも接吻を続ける。
こちらの唾液をどくどくと送り込んでやると、何とか飲み下そうとルキアの細い喉が一生懸命に鳴った。
それでも飲み干しきれず溢れた唾液の一部が、唇の端を伝ってつぅっと首筋へ線を落とす。
それを拭い取るという建前で首に唇を押し当て、わざと痕が残るように歯を立てて吸い付く。
淡雪に似た肌に、誰が見ても明白な男との情事の痕がぽつぽつと付けられていく。
黒子一つない彼女の白い肌に、キスマークと歯形はよく映えた。
「いけないな。いつも、全部飲めと教えているはずだけれど」
そもそも彼女の小さな口にそれが収まりきらないのを知っていて、しかし浮竹は咎めるように声にする。
本来なら己の精液でも飲ませたいのを、仕方なくこれで代替しているのだ。
一滴でも零されるのは、癇に障った。
「すみません……」
謝るルキアを無視し、浮竹は彼女の小さな身体に馬乗りになった。
長身の彼が上になると、小柄な少女は重みですぐにでも壊れてしまいそうなほどに脆く感じられた。
少年を思わせる小ぶりな胸に顔を埋め、大きく息を吸い込む。
つんと甘酸っぱく香る汗の匂いを胸いっぱいに取り込んでから、浮竹は乳房に舌を這わせた。
「っ、……ひぁあっ!」
途端、ルキアの口から悲鳴が漏れる。
「相変わらず胸は弱いな」
愉しんでいるらしい満ち足りた口ぶりでそう言って、浮竹は乳首にふっと息を吹きかける。
それだけで、ルキアの全身は電撃を受けたかのように小さく断続的な痙攣をした。
しこったそこを器用に尖らせた舌先でちろちろと舐り、時折意地悪く歯先を引っ掛ける。
痛くない程度に力を抑えて噛んでやると、身体の下のルキアは喉が枯れそうな勢いで絶叫した。
「ぁっ、……っふ、……あ、嫌ぁっ!」
「何が嫌なんだ? こんなに硬くして、それでも俺が嫌なのか?」
サディスティックに質問しながら勃った乳首を左右同時に指で捻り上げると、返事代わりの嬌声が喉を割った。
苦しそうに小刻みに身体を波打たせる彼女の両足を乱暴に割り開き、閉じられぬよう間に自分の身体を押し込める。
そこがびしょ濡れになっているのをちらりと見て確認すると、浮竹は再び問いかける。
「答えろよ、朽木。嫌なら、どうしてこんなになってるんだ? それともお前は、大嫌いな奴相手でも濡れるような女なのか!」
片手で胸を荒っぽく揉みしだき、もう片方の手で湿った腿の内側を撫で上げながら、浮竹は激昂した。
しかし当のルキアには、浮竹の尋ねに答えられるだけの十分な体力も理性も残ってはいなかった。
ただ彼に愛撫されるままに快感を叫ぶ他、彼女は身じろぎ一つ出来ない。
敏感に充血した突起をつんと小突かれて、くりくりと撫で繰りながら包皮を剥かれていく。
その快楽に目の前は真っ白になり、あられもないほど艶声をあげてもまだ足りないほどだ。
「ひあっ、浮……け隊……長っ! ……っ、もう……めてくださ……」
眦に涙を浮かべて懇願するルキアに、浮竹は余計劣情を煽られる。
女の泣き顔がこれほどそそるものだと知ったのは、ルキアに逢ってからだった。
「何をやめろって? いつの間に俺に指示できるほど偉くなったんだお前は?」
「……ぁふっ、す、すみ……っ、ませっ……」
謝罪する彼女を尻目に小さな果実のようなそれに舌を絡ませて音がするほどに吸い上げると、断末魔のような鋭い悲鳴が空を切り裂いた。
その声に嫌悪の色が含まれているのを、気づかない振りをして聞き流す。
――自分が卑怯な行いをしているのは、よくよく理解していた。
隊の皆を導き守らねばならない隊長という役職を利用して己のエゴを満たすなど、あってはならないことだ。
けれど、生まれつき物欲の薄い自分が唯一心から欲しいと思ったのが朽木ルキアだった。
幼い頃より何でも兄弟と分け合うのが当たり前だった浮竹が、初めて誰にも渡したくはないと思った。それがこの少女だったのだ。
思考よりも欲望が、理性よりも本能が先に動き、冷静な考えが付いて来ない。
「……ぁっ、ひっ、ん……ぁあっ!」
陵辱に息を荒げる彼女が愛しく、浮竹は彼女のそこを二度三度と舌で撫上げる。
ねちゃねちゃと唾液をまぶして甘噛してやると、ルキアは快楽に支配された瞳でいやいやと言うように首を横に振った。
その仕草が、なぜか浮竹の目には更なる愛撫をねだる様子として映る。
強く口腔全体で吸引しながら両の手で乳首をかりかりと引っ掻くと、ルキアは悶え狂いながらあっけなく達した。
「んっ、あっ、……、っ……!!」
全身を熱病のように震わせる彼女から一旦顔を離し、すぐさま熱く蕩けたそこに中指をゆっくりと押し込める。
どろどろと濡れそぼった内奥が、浮竹の節くれだった指を折れそうなほど強く締め付けた。
中の感触を楽しむように何度か抜き差しを繰り返すと、イったばかりで敏感になっているルキアの身体は面白いほどの反応を見せた。
指の関節が一つ出入りするたびに、「んっ」と小さな嬌声をあげて何とか両足を閉じようとする。
その行為は脚の間を遮る浮竹の下半身によって意味を成さないのだが、それでも彼女は左右の脚に力を込めた。
そうすると、必然的に両足で浮竹の腰を抱え込む淫らな体勢を取ることになってしまうのだが、今の彼女はその事実に気が回らないようだ。
「……いちょ……、たい、ちょうっ……!」
名を呼ぶ声に呼応して、浮竹はそこへ挿入する指の数を増やした。
右手の中央三本の指を束ねてルキアの花園に捻り込み、落ち着くのも待たずにぐちゃぐちゃと内壁を掻き乱す。
いきなり中を広げられて、ルキアは「ひゃっ」と苦痛の悲鳴を上げる。
浮竹がそれに構わず三本の指を手前勝手にばらばらと動かすと、しかし彼女の柔軟な身体は即座に快感に対応した。
彼の動きに合わせ、それ以上の快感を欲するかのように腰をくねらせる。
長年の夜伽で浮竹に開発されたルキアの身体は、いつの間にか自然とそうした行為をするまでに堕ちていた。
「ふ、ぁっ、……いや、やっ、やっぁあ……」
嫌だと言うわりには淫らに身体を泳がせる彼女を見つめながら、浮竹は自嘲を込めて瞳を笑わせる。
本当なら、猛った性器をここに打ち刺したかった。
浴びせるように精を流し込んでいっそ子でも孕ませてしまえば、朽木は自分から二度と離れられなくなるだろうに。
そう思うと、こんなときばかりは男としての用を成さない己の身体が憎かった。
しかし、そんな無様な自分でも巧くやれば彼女を啼かせることくらいは容易だ。
整えられた爪で膣の内を掻き上げつつ、ずんずんと強烈に挿れた指を突き上げる。
余っている左手で彼女の胸元の突起を抓りながら、唇で柔らかい耳朶をくちゅくちゅと優しく食む。
瞳を精一杯に見開いて快感に耐える彼女の気を失わせんとばかりに、胸に置いていた左手を離した。
何をされるのか分かったルキアが、恐怖のためか最前以上に目をこじ開けて懇願する。
「っ、無理……です……ぁ、こわ……」
「大丈夫だろ」
あっけらかんと返して、浮竹は彼女の入り口にその手の人差し指を添えた。
既に三本の指で一杯にこじ開けられたそこに、限界を超える質量が新たに無理やり押し挿される。
その苦しさにルキアが呼吸を乱れさせたのも気にせず、浮竹は少女の狭い膣内をがつがつと陵辱した。
初めは辛そうに顔を顰めていたルキアも、その獣のような責めにいつしか激烈な快楽を感じるようになる。
「……っ、は、ふ、ぁ……っっ!」
総身を震わせて叫びながらぐったりと倒れ伏せた彼女の姿にようやく満足顔をして、浮竹はやっと彼女から手を離した。
もう動くのも億劫だといった素振りの彼女に、今思い出したように友人からの伝言を告げる。
「そういえば今日、藍染から打診があってな、五番隊の十二席に空きが出来たからお前を譲ってくれないかと頼まれたよ」
その言葉に、さっきまで倒れ込んでいたルキアが慌てて起き上がる。
「ほ、本当……ですか? ……私を席官に!?」
気だるげだった顔をぱっと薔薇色に高揚させ、わくわくとした瞳を落ち着きなく動かす。
その偽りのない喜びに満ちた笑顔を、浮竹は無残にも一瞬で摘み取った。
「何をはしゃいでいるんだ? ……断っておいた。まだ早いからと言って」
冷たく言い捨てられて、ルキアは落胆と怒りがないまぜにされたやるせない表情を作る。
握り締められた拳が、憤怒のためか僅かにふるふると打ち震えていた。
「そんな……、何の権利があって勝手に……!」
「権利? ふん、そんなもの、俺が十三番隊の隊長であるただそれだけで十分さ」
胸を反らし堂々と自身の肩書きを口にする浮竹に、ルキアは改めてこの男のいる圧倒的な地位を思い知らされた。
隊員の異動人事については、移動先の隊だけでなく現行所属隊の隊長の承諾がない限り本決定として認められない。
隊内に敷かれたその定めは、確かにルキアも知識として知っていた。
もっとも、それを楯に愛人を自身の隊に縛り付けるような馬鹿な真似をする隊長がいるとは流石に思わなかったが。
「お前は誰にも渡さない。……一生俺の隊にいろ」
悪魔の呪縛の如きその言葉を、まるで朗らかな詩でも暗誦する様に微笑しながら浮竹は告げた。
「…………了解しました。浮竹隊長殿……」
感情なくぽそりとそう返したルキアの睫に、朝露のような涙が薄っすらと光っていた。
その涙を流させたのは眼前に座す白髪の男への憎しみではなく、燃え盛るような赤い髪をした幼馴染への愛慕であった。

*          *          *

――恋次。私が愛しているのはお前だけだ。
流魂街で二人寄り添って生きていた頃からずっと、私の瞳の中にいるのは常にお前一人だった。
お前の隣にいたかった。共に背中を守り手を取り合って戦えるような、そんな存在になりたかった。
死神になるのを決意したのも、朽木の家に入るのを了承したのも、全てはお前とつりあうだけの力が欲しかったからだ。
けれど、今の私には最早お前に愛される資格などない。
私の身体はどす黒く穢れ、心までも暗い汚泥に引きずり込まれてしまった。
夏の太陽のように一点の曇りもなく明るく輝くお前に、私という存在はいまやむしろ負担になるだけだ。
……だから、忘れてくれ。私との過去も描いた未来も、現在抱く感情も全て。
きっと私も、全て忘れてみせるから。


(完)



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