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朽木ルキア大ブレイクの予感パート10 :  531氏 投稿日:2005/06/29(水) 23:03:04


※続編になります。単体でも読めますがこちらもお読み下さるとより楽しめます。


恋ルキ・ランチDEデート』


広い通りから一本入った、落ち着いた佇まいの…、立派な塀を回した建物に入っていく二人連れがある。
門には、"茶寮・有栖"と書いた小さな角灯がついている。
「恋次、何だここは?」
「メシ食うとこだよ」
「縄のれんの定食屋ではないのか?貴様のことだから、そう思っていたが…」
「給金出たばっかだからよ。たまには、いいとこで奢ってやるよ」
「無理はするなよ」
「うるせえ」
声高に話すのは、恋次とルキアだ。
ここはいわゆる、高級料亭だろうか。背伸びをして、お昼のコースでも奮発しようというところか。
貧しさを分け合った幼なじみが、やっと人並みの生活をしている。
彼女は貴顕の家に入ってしまったけれど…それでも、自分の金で、美味いメシでも奢ってやりたい。
一連の事件が落ち着いた今、それがやっと叶いそうだ。

恋次はどきどきしながら、仲居の後に続く。こんな場所など、生まれてこの方入った事が無い。
ルキアはさすがに板についた様子で、姿勢を正して歩いている。
やがて座敷に案内され、大きな座卓を挟んで、程よい場所に落ち着いた。
入り口には、"弥生の間"とあった。春の弥生か、床の間には桜の枝がいけてある。
「うーむ。何だか、緊張するものだな」
「オメーはいつも、こんなとこで暮らしてるだろうに」
「このような大きな座卓など無い。誰かと向かい合うことも無い…。
食事は兄様とご一緒だが、銘々膳で…鍵の手に向いていただく。おしゃべりをしようとすると、たしなめられる」
「…」
恋次は胸が詰まった。金持ちだからって、必ずしも幸せとは限らないのか。
もしかしたら…、自分と…どっか壊れたちゃぶ台を一緒に囲むような生活が…貧しくともにぎやかな生活が、幸せかもしれない。
ガキが、二、三人いたりしてよ…へっ…。恋次は自分の空想を哂った。
ルキアを好きというのもあるが、誰かと共に暮らすことに憧れているのだ。あんな、子供時代を送ったから。

しかし実際、ルキアの言う食膳は、二の膳・三の膳と並ぶ立派なものだ。
そして彼女が、食べながら話をするとこぼすので、兄に叱られるという訳である。


まず、熱い茶が運ばれる。
お約束通りごくりと飲んで熱さに騒ぎ、ルキアを笑わせた。
小皿に乗った菓子を食べようとする彼女に、通ぶって注意してみる。
「こういうとこじゃ、手をつけねえもんだぜ」
「何故だ?」
「その方がかっこいいから、だよ」
「よく分からぬな。何故かっこいいのだ?」
まじめに問われて返答に困ってしまい、恋次は窓障子を開けた。
中庭をはさんで、向こうにも座敷があるようだ。
そのうち、一つの障子が開いている…。

「あれ?」
どこかで見たような人物が…。
恋次が首を傾げていると、向こうも気づいたのだろう。軽く、手を挙げる。
「京楽隊長…やべっ!」
恋次は慌てて障子を閉めた。勢いが良すぎて、端がまた開いてしまったことなど気づきもしない。
そして、振り返ると…。
ルキアが、恋次の分の金つばに、自分の黒文字を刺していた。
「テメー、何すんだよ!」
「要らぬと申したではないか」
「ったく。要らねえとは言ってねえだろ!ガキのころから、すばしっこいやつだな!」
「なかなか美味いぞ。痩せ我慢などしないことだ」
一口大だが、しっかりと小豆と砂糖が練りあげられた質の良いものだ。
美味しそうに食べる笑顔のルキアを見て、悪態をつきながらも、恋次の口元は緩んだ。

昼の定食は、松花堂弁当だった。
黒塗りの立派な容器に、品良く料理が盛り付けてある。刺身に煮物、焼き物、揚げ物と、瓢箪の形に抜いた豆ご飯、そして右上の隅には甘味。
「おおっ。これは…うさぎやのくずまんじゅうではないか!」
巻いてある緑の笹に、雪うさぎの焼印が押してある。有名な老舗である。
「だから…それを真っ先に食うなよ…」
「美味いのだから仕方あるまい。食後には、貴様のを食べることにする」
「冗談じゃねえ!俺だって、食いてえんだから」
恋次も、甘いものは好きだ。だが…。
「…いいよ。やるよ。代わりに、メシを半分寄越せ」
返事をする前に、ルキアの前から瓢箪の下半分が消えた。
「貴様…。ひさごの下の方が甘くて美味いと知って、このようなことを…」
「んな訳あるか!どこも同じ味だろうが!」
「いや、違う!返せっ!」
「バカヤロウ、それじゃ取りすぎだ!」
やかましく喧嘩する声は、窓の隙間から中庭を越え…その向こうまで響いていく。


「元気がいいねえ…」
まだ、窓の手すりにもたれていた春水が、苦笑いで呟いた。
「阿散井君の慌てようだと、彼は知ってて連れて来たみたいだけど。ルキアちゃんは何も知らないね」
何を、知っていて。何を、知らないのか。
実は…。
ルキアが背にしている襖を開けると、艶かしい床仕度がしてある。
ここは料亭ではあるが、提供されるのは二間続いた座敷で、それをある程度の時間、自由に使うことが出来るのだ。
そのため、かなり値段が張るが…。この店を秘密の逢引きに使う者たちもいる。
もし万一のことがあっても、食事に来たと言い抜けることが出来る。
恋次が春水を見て驚いたのは、春水なら逢引きに決まっていると思ったから。そして自分の下心もすぐに看破されたと思ったのだ。
「ここに連れて来たことだけでも、彼女の兄上に知られたら、ただじゃ済まないだろうねえ。僕は別に、誰にも言わないけどね…」
笑顔になって、振り返る。窓障子を閉めながら、床の上の女に優しく語りかけた。
「もう、帰ろうか。顔を合わせたら、向こうさんもばつが悪いだろうし。大丈夫?……ちゃん…」
声が低すぎて、名前が聞き取れない。

結局、ぺろりと食事を平らげた二人である。
茶を替えに来た仲居に、恋次はくずまんじゅうを追加して貰った。
「それでは、ごゆっくり。お時間になりましたら、声をかけさせていただきます」
「あ、はい」
品良く手をついて頭を下げると、座敷を出て行く。
「どういうことだ?」
「…時間で、借りてるからよ。まだもうしばらく、いられるってことさ」
「ほう。だが、食事は済んでしまったぞ。いくら菓子は別腹でも、もう入らぬ」
「…色気もクソもねえな…」
「何か申したか?」
「いや…」
恋次は言いよどむ。さて、どうしたものか。
「ルキア。後ろの襖、開けてみろよ」
ストレートに行くことにしたらしい。
「隣でも、誰かが食事をしているのでは?」
「大丈夫だから」
そう言われて、ルキアは立ち上がり、さっと襖を開けた。
「何と…」
薄暗い座敷には、桃色の行灯が一つ。そして艶かしくも紅の掛け布団に、枕が二つ並んでいる。
「どういうことだ?」
振り返ると、いつの間にか恋次がすぐ後ろにいた。彼女の肩を抱き、喉に引っかかったような声で言う。
「どうって…こういうことだよ。後はこの座敷を、時間まで使えるから…」
ルキアは少し考える風情をしていたが、顔を上げた。
思いのほか優しい眼差しに、恋次はどきりとする。瞳が潤んで、ゆらゆらと揺れるような…。
「それ程、疲れておるのか…気の毒に、激務であるのだな…。
兄様には申し上げずに置くゆえ、安心して休むが良い。一人の方が良ければ、私はこれで帰るぞ」
幼なじみの健康を気遣い涙ぐむ、優しいルキアだった。


「じょ、冗談じゃねえ!」
「違うのか」
きょとんと首をかしげる。恋次は頭に血が上り、そのまま突き飛ばすようにして床の上に押し倒した。
「な、何をする!私は、寝足りておる故、大丈夫だ」
「くっそー!もう少し、察しのいいやつだと思ってたけどよー!」
恋次は悲しくなった。ルキアは別に、とぼけている訳でも無いらしい。が…。
「済まぬ、恋次。分かったぞ」
「ん?」
「一人で休むのが寂しいのだな。相分かった、時間までここで、共に過ごしてやろう」
「ち、ちが…わねえ。うん、それでいい…けど。だったら…」
もういい。分からないのなら、分かるようにしてやろう。ルキアの無知に付け込むような真似は、したくなかったけれど。
「少しの間でも、布団の中なら、着物脱げよ」
「え…」
「俺とお前の仲じゃねえか。今更」
「まあ、そうだが…」
何だか良く分からないけれど、ルキアは黒い死覇装を脱ぐ。真っ白な襦袢は紗綾の織り模様が浮き出て、見るからに高級そうだ。
「おろしたてか?」
まだ折り目までありそうな襦袢に、恋次は触れるのをためらう。
「いや、毎朝新しいものを着せてくださる。穢れに染まらぬようにとおっしゃって…」
用意して、ではなく、着せてくださる…と言っている。着せてくれるのは誰だろう。
侍女に敬語など使うはずが無いが…。恋次は、細かいことには気づかない。とりあえずそのまま、抱き寄せた。
久しぶりに触れる幼なじみの身体は、いまだ少女のままだ。いつの間にかたくましくなった自分の腕に、すっぽりと隠れる。
思えばよくもまあ、あんな治安の悪いところで生き延びたものだ。
そして、暮らし良いと聞いた死神の世界も、決して安寧ではなかった…。だが、危機は去った。
「ルキア」
「何だ?」
「これからはずっと、俺がこうして護ってやるからな」
「そうか」
何だか、あっけない。仕方ないので言葉を続ける。
「だから、俺の側にいてくれ」
「今のところ、遠出の予定は無い」
「いや、そうじゃなくて…」
抱いた腕に、力をこめる。
「れ、恋次、苦しい」
じたばたと身動きするのも、余計に欲をそそる。彼女の叶わぬ抵抗が、男の欲望に火をつけた。
「ル、ルキア!俺のものになってくれ!」
ぎゅっと抱きしめ、脚を絡めて押さえつけた。互いの裾が乱れ、ルキアの白く細い下肢が、直に触れる…。


「恋次」
腕の中で、小さな声がする。
「力ずくで押さえぬとも、私は何処へも行かぬ。激するでない」
「あ、ああ…すまねえ…」
少し力を緩めると、くすくすと笑う気配。
「貴様は昔から、一人で興奮して騒ぐから…」
「テメーが鈍いからだ」
「ふふっ…。口の悪いのは、相変わらずだな。ところで恋次、少々言い難いのだが…」
「あん?」
「先程から、私の下腹に何か、当たっておる」
「うっ!」
恋次は言葉に詰まる。なぜかルキアは楽しそうに続けた。
「これは、あれだろう?…辛いものなのだろう?」
「…」
「貴様はいろいろ言うが、私とて察しのよいときもある。このような時は、女の中に入れれば収まるという」
「ルキア、何故それを…」
恋次は驚いた。何故、そこまで知っている?いや、教えたとすれば、それはたった一人だ。
あの変態むっつりスケベ野郎!!!恋次はぎりぎりと歯噛みをする。どうも、凶暴な野犬のような顔になっている。
「まさか…屋敷で…その相手を、させられているのか…?」
怒りのあまり、言葉が途切れがちだ。ルキアは驚いたように恋次の顔を見上げる。
「まさか。兄様は知識として教えてくださっただけだ。
私はまだまだ幼いゆえ、あと五十年は無理だと。そして…」
「そして?」
そして、何だよ!時期が来たら、自分のものにするつもりかよ!恋次はいらいらと、続きを促す。
「成熟して嫁した後に、その相手に成してやれと、おっしゃられた。
だから…恋次がこんなに苦しんでいるというのに、今は私の身体で鎮めてやることは出来ぬ。済まぬな…」
ルキアはしょんぼりと俯く。白哉の子供扱いが寂しいのだ。
恋次もがっくりとなる。自分が情けない。ルキアに申し訳ない。そして、白哉にも…。
"隊長、悪態をついてすまねえ!あんたは、兄貴の鑑だ!
ねんねのルキアに、分かりやすく性の知識を教えながら…同時に倫理も…。
俺なんか、こいつの無知に呆れて、だけど今度はそれを利用して…もう少しで、力ずくで自分のものにするところだった…。
情けねえ…俺は、何て情けねえやつだ…"
(もちろん、恋次が落ち込む必要はまったく無いのだが)

「どうしたのだ、恋次」
ルキアがまた見上げると、恋次は顔を背ける。
不思議に思って追うが、どうしてもこちらを向かない。
「恋次、恋次ってば」
「うるせえ。黙ってろ」
怒ったような言葉が降ってくる。それでも手を伸ばし、頬に触れると…濡れているような気がする…。
手首をつかみ、引き剥がされた。
「恋次…」
「鼻水だ」


ルキアはくすっと笑った。恋次の強がりが可愛い。
急に激したりして、よほど疲れているのだろう。こんなときは、いつも兄様がしてくださるようにして、気を落ち着かせてやろう。
身体を滑らせて、そっと恋次の頭を抱く。閉じたまつげに唇をつけると、滲んだ涙を吸い取ってやった。
そのまま袖で包み込むように抱いてやる。これで、落ち着いてくれるといいのだが。
「何だよ、ルキア」
「嫌か?」
返事は無い。だが、恋次はルキアにしがみついてきた。ふふっ…やっぱり、同じだ…。

しばらく経つと、眠ってしまったのだろうか。恋次の呼吸が小さく、規則正しくなった。
袖を外し、顔を覗き込む。幼いころと同じ、無邪気な寝顔だ。頬を指先で突いてみる。何言か口を動かしたが…よく眠っている。
ルキアはそのまま手を伸ばし、恋次の下腹部に触れる。いつの間にか、落ち着いている様子だ。
"良かった。いつか兄様がおっしゃったように、時間が経って自然に鎮まったのだな。
身体では無理だから、口で…とも思ったが…。その必要も無かったようだ。まあ、あれはどうも苦いから、しなくていいのならその方がいい"
笑顔を浮かべ、そんなことを思う。恋次が聞いたら、目を回すだろう。
起さぬように、そっと…そうっと…身体を離した。手早く着替えて、座敷の外に出る。

廊下を進むと、仲居が歩いてくる。ルキアは呼び止めた。
「連れが、眠ってしまったのですが。こちらは、時間貸しと聞きました」
「左様でございます。では、お時間が参りましたらお起しいたしましょう」
「いえ。疲れているようなので、自然に目覚めるまで、そのままにしていただけますか?
お代は…あいにく持ち合わせが無いので、私の屋敷の方に取りに来ていただければ有難いのですが」
「お嬢様の、お屋敷でございますか」
「ええ。朽木と申します」
「ま、まさか…あの…朽木様で…」
「おっしゃっているのが、どの朽木か存じませんが。私は朽木ルキア。当主・白哉の妹です」
「…私どもの店の者が伺っても、よろしいのでしょうか…」
「当然ではありませんか。料金を踏み倒すような真似は致しません。お手すきの方がいるようなら、今から一緒に…」
「え、ええ。では、少々お待ちくださいませ」
やがて何事か言い含められた店の者がルキアに従い、送っていくような形になる。

「お嬢様、できましたら…裏から。なるべく誰にもお会いしないうちに、帰らせていただきたいのですが」
「お忙しいのですね。分かりました」
忙しいというよりは怖いので、早く帰りたいのだ。だがルキアは知るよしも無い。


やがて屋敷に帰り着き、ルキアは家令を呼んだ。
「持ち合わせが無かったので、店の人についてきて貰いました。言うとおりの金子を、支払って貰えますか」
「かしこまりました。本日はこの場でお支払いいたしますが、いくら店の方とはいえ、ルキア様がご一緒に道を歩かれるなど。
今後は当屋敷の方へ、後ほどご請求ください。間違っても、遅延などはありませんから」
「恐れ入ります」
「ところで、何というお店でしょうか。これからももし、ルキア様がお出かけになるのなら…」
「お昼のお弁当をいただきました。大変、美味しいものでした」
「おお、それはそれは…。で、どちらの?」
店の男は困る。告げても、良いものだろうか。表向きは料亭だが…。
「茶寮・有栖と申します…」
消え入りそうな声で言うと、やはり。家令の目がきらりと光った。
「ルキア様。本日はどなたとお出かけで」
「恋次に誘われて、食事に参りました」
「左様でございますか。では…」
代金を貰って、店の男はすっ飛んで逃げ帰る。後ろから刀が追ってくるような気がする…。

ルキアが自分の部屋で着替え、くつろいでいる頃。
家令は、白哉に先程の事件を伝えていた。
「今しがた、出先で持ち合わせが無かったと、ルキア様が店の者を連れて参られましたので、支払いました」
「名乗って、後日取りに越させればよかろうに。真っ正直なことだ。
それに其方も、いちいち私に告げぬとも…」
「それが…。茶寮・有栖の、延長料金なのでございます」
白哉の頬が、ピクリと動く。店のことを、知っているらしい。
「同輩の娘たちと、昼の食事でもしに入ったか。鷹揚なところを見せたくて、自分が支払うと申したのか?」
「いえ、阿散井様とお二人だったと…。店の者の話によれば、阿散井様が眠ってしまったので、ルキア様が先に帰られたとの…あの…白哉様…?」
「…相分かった。下がって良い。なお、この件は他言無用」
「あの…ルキア様のご様子では、店のことは何もご存知無いようで…」
白哉は返事もしない。非常に機嫌が悪い様子に、家令はそっと座を立った。

まもなく、侍女がルキアに声をかける。
「ルキア様、湯殿の仕度が整いました。白哉様ももう、お帰りでございます」
「分かりました」


そして今日も、仲良く入浴することになる。
その間に白哉は、手を変え品を変え、優しくしつこくねちっこく…ルキアから全てを聞き出した。
「兄様」
白哉にさんざん悪戯をされ、ぽうっとした顔のルキアが呼びかける。
「如何した」
先ほどとは、打って変わって上機嫌である。
「私は…、恋次が疲れていて、少し休みたいのだと思って…」
「うむ」
「兄様には申し上げずに置くゆえ、ゆっくり休めと申してしまいました。
お腹立ちとは存じますが…どうか…」
「相分かった。職務中に居眠りをしたと思って、そのことについては叱らずに置こう。それでよいな?」
「有難うございます」
良かった。やはり兄様はお優しい。そう思う、ルキアだった。
白哉にとっては、恋次がさぼって昼寝しようが、くずまんじゅうを山ほど食べようが、そんなことは何でもない。
だが。下心を持ってルキアを誘い…あまつさえ床に引き込んだことは…万死に値する。
未遂であることなど、何の容赦にもならぬ。この仕置きは、どうしてくれようか。

「ルキア。今宵は、共にやすむか」
「ええ…」
わざわざ、そんなことをおっしゃるなんて。どうなさったんだろう?ルキアは訝しく思う。
「いつの間にかルキアも大人びて…男を胸に抱いて寝かしつけるようになったらしいぞ、緋真」
白哉が天を仰ぎ、呟くように言う。
「兄様の意地悪。私は…私は…」
「何だ」
「兄様がいつも、そうしてくださるから…とても、安らぐから…」
「ほう。それで、好いた男にも成してやったと申すか」
「違います!恋次など、男と思って見たこともございません」
思い通りの言葉を引き出し、白哉はわずかに表情を緩めた。
「では今宵は、私を抱いて眠ってくれるか」
「はい…」
頬を赤らめつつ、ルキアは答える。またも、兄の思うつぼに填まったらしい。

夜は更けて。
ルキアは兄の寝室で、共に床に横たわっていた。
夜着はきちんと身に着けたまま、袖を片敷いて、軽く白哉の頭を抱くようにしている。
いつもとは逆で、何だか恥ずかしい。
どきどきと響く鼓動を、きっと気づいていらっしゃるだろう。何と思われていることだろうか…。
気になって、眠るどころではない。

もちろん気づかれているが、却ってそれは心地よく、意地悪な男の耳に響いた。
いつまで…この初心な心根を持ち続けることだろうか。無下につぼみは摘み取らず、愛でておくか…この自分が、堪えうるぎりぎりまで…。
だがもちろん、他の男の接近は許さない。さし当たって、明日にでも…。
口元に、冷酷な笑みが浮かぶ。そのままゆっくりと、眠りに引き込まれていった。


翌朝、早く。
すっきりと目覚めた白哉は、寝不足の赤い目をしたルキアの頬に、軽く唇をつける。
現世のテレビドラマで彼女が見たという、おはようのキスだ。仲の良い兄妹だけが行うのだと、余計な知識をつけてやった。
「いま少し、やすんで居るが良い。私は、用事がある故…」
「はい…」
まぶたの重そうなルキアは、ぼんやりと返事をする。そのまま、また眠ってしまった。
やがて侍女が起しに来る。兄の床に丸くなっているルキアを見て、微笑ましく思う。
襟も裾も、ちっとも乱れていない。淫らな想像の、入る余地も無い。何か悪戯をしたとしても、証拠を残すような白哉では無いが。


その頃。
あくびをしながら、恋次が出仕した。
昨日はうっかり、昼寝してしまった。お陰で夜、よく眠れなかった。
しかし…ルキアの袖に包まれて、何であんなに寝ちまったんだろう…。余程、気持ちよかったんだな。
目が覚めたらもう夕方で、慌てて飛び起きたら、ルキアはいない。店のやつには、代金はお連れ様が…と言われた。
こっちが誘っておいて、とんでもねえ。後でこっそり、返しておかなきゃ。少なくとも、隊長に見つかる前に…。

だが、既に遅い。とっくの昔にばれている。

がらりと勢い良く、副官室の扉を開けると…窓辺に誰か、立っていた。
「あん?誰だ?…あ、おはようございます」
何故か知らないが、そこにいたのは白哉だった。
「…」
軽く頷くと、手から一枚の紙が離れる。そしてゆっくりと、恋次の前に落ちた。
拾い上げるとそれは、"茶寮・有栖"の領収証である。ま、まさか…。
蒼ざめた恋次が顔を上げると、周りにひらひらと、桜の花びらが舞っていた…それが、その日の最後の記憶である…。



(完)