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朽木ルキア大ブレイクの予感パート12 :  188氏 投稿日:2005/12/26(月) 02:52:57


イチルキカレンダー@エロなし1


追い風が煙とクラスメイトの騒ぎ声を運んでくる。俺は彼女の視界に入らないあたりで足を止める。
目の前に広がるのは青い空とミニチュアみたいな町、そして小さな背中。

「織姫ぇー」
「きゃ! ヤダー、たつきちゃん。いきなり撮らないでよ」
振り返ると、チャドの横でたつきと井上がカメラを手にじゃれあっていた。
今日はクラス総出のバーベキュー。提案者は今年新しく副担になった熱血野郎だ。
最初は渋っていたクラスの連中も「肉は全部俺持ちだ」という副担の言葉で俄然やる気になった。
俺は休みの日ぐらいゆっくりしていたかったが、キラキラした目で「バーベキューとはなんだ?」
と聞いてくる少女に無理やり引っ張り出された。
その当の本人は満腹の腹を抱えてぼけっと景色を見ている。と、さらに端に向かって歩き出した。
「おい、落ちたら危ないぞ」
足元の数十センチ先は草で覆われているがちょっとした崖だ。俺はあわててルキアの腕をつかむ。
すると、ルキアは俺のほうを見ると小ばかにするように笑った。
「たわけ、貴様じゃあるまいし」
「俺だって落ちねえよ、こんなとこから」
そう言うと、ルキアはまた笑ってしゃがみこんだ。ワンピースの裾がふわりと揺れる。
「これなら落ちないであろう?」
尻が汚れると思ったが、俺もつられて腰を下ろす。
「あそこが貴様の家だな」
ルキアが指差したのは川向こうに家が密集した所。何の変哲もない住宅街だ。ここから看板が見えるわけでもない。
「ああ、そうかもな」
確認できるわけもないので適当に返す。
「あそこが駅で、あっちが公園だな。学校・・・はここからじゃ見えないか。浦原の家も方向が違うな」
ルキアは次々と指差していく。体の小ささも相まって、子供みたいだ。

「あそこが廃病院だな、一護」
名前を呼ばれたので指先を辿る。だだっ広い土地に、車が二、三台止まっていた。
「ああ、あそこ駐車場になったのか」
ドン観音寺に散々振り回された廃病院。取り壊されたとは聞いていたが、何になったかは知らなかった。
「あれが妹たちの小学校。・・・あの近くのビルでコンを捕まえたのだったな」
「そういやそんなこともあったな」
よわっちいのに虚を倒そうとするから、俺の体がぼろぼろになっていた。
「あの広場で、一番最初に貴様がメノスを撃退したのだ」
あん時は石田が対決しようと言い出したんだっけ。で、石田は・・・・一人っきりで木のふもとにたたずんでいた。
ルキアの指差す場所全部からここ一年の記憶がよみがえる。チャドの家の前ではチャッピーに押さえつけられた。
井上の家に行くまでにルキアをおんぶさせられた。雑居ビルの陰にいたのはオタクの整だ。
ルキアがいなくなった場所――ルキアに勇気付けられた場所。
「案外狭いな、こうして見ると」
ポツリと漏らした言葉に、ルキアが首をかしげる。
「そうか? 私は結構広いと思うぞ」
「狭いよ。死神になればひとっ跳びだ」
「たわけ。もしそうならもっと虚の出現場所に早くつけるはずだ」
「へーへー、どうせ俺は一人じゃどこに虚が出るかわかりませんよー」
小言に耳をふさぎながら、そういえばと思う。一年前俺はどこを歩いていたんだっけ。
思い出せるのは中学とゲーセン、あとよく喧嘩した川原ぐらいか。今じゃほとんどの記憶がルキアと共にある。
つかんだら折れそうなくらい細い肩。真っ白な首に沿って流れる黒髪。まっすぐ見開かれた大きな瞳。
どの景色を見ても隣にいるルキアがすぐに思い浮かぶ。
そういえば一年前、俺は空が青いことにさえ気付かなかった。
「あれが、俺んちか」
「たわけ、そこはさっき私が指差した」
知ってるっつーの。思ったが口には出さなかった。
あそこでルキアと出会い、俺は死神になった。そして
「朽木さーん、一緒に写真撮ろうよー」
井上の声が後ろから聞こえる。
「はーい、今行きますわー」
今更井上に向かってお嬢様かよ。思いっきり固まってるじゃねえか。
スカートを持ち上げ駆けていくルキアを見送ってから、ある一点を見つめた。
あそこが、お袋の眠る場所。
そしてここが俺の護る場所。護る力をくれた人は、他の女子に混ざって笑顔を振りまいてる。
どっからどう見てもただの女子高生だ。
「ありがとう」
届かぬ呟きを唇に乗せる。願わくば、ここが君の居場所にもなるように。俺は全力で護ってみせるから。


(完)