朽木ルキア大ブレイクの予感パート7 :  477氏 投稿日:04/08/03 14:59


月おちる


胸騒ぎがした、といえばそれが理由だろうか。
俺は懺罪宮、四深牢へ向かっていた。廷から牢へと通じる、ただ一本の橋を歩んでいると、腹のあたりに重みを感じた。
牢の入り口に、白装束の奴らがいた。
「阿散井、副隊長どの……」
「数刻でいい、開牢を願えまいか」
「それはなりませなんだ、我らの役目は、囚人を禁固することにあり」
「御託はいいからよ、ちょっとどけや」
一歩、踏み出す。
「な、なりませぬ」
「ちょっとだけだっつーの」
白の一人の懐に、手を差し入れ、「それ」を握らせる。
「何にも言わねーからよ」
困惑したように俺から離れ、他の奴らを集めた。
番人、清廉な奴ばかりじゃない。掴ませれば大人しくなる奴は、雰囲気で分かるもんだ。
……俺が生きてきた場所なんざ、もっと糞みてぇなところだからな。
「わ、われわれは」
「あん?」
うわごとのようだった。
「何も知らない、何も見てません……」
「へぇへぇ、俺ぁ何にも知らねぇよ。……開牢を願う」
分厚い扉が、重い音を立てて開かれた瞬間、むっとした空気が俺の足をかすめていった。

「ルキア?」
暗い牢のなかにボウっと浮かんで見える。……この匂いは。
「お……お前ら?!」
ちっぽけな霊圧からして、護廷十三隊でも下の奴ら三人だというのは分かった。
四深牢にいること自体おかしいことだが、それよりも、奴ら、奴らはルキアに跨っていたのだ。
「おや、六番隊の副隊長どの」
一人が振り返ってニヤつきながら、俺にそう言った。
丈のある一人が胡座の上にルキアを座らせ、足を開かせている。
もう一人はその脇に立って、棒切れをルキアの鼻先にぶらさげてやがる。四番隊にいそうな、ひょろひょろな奴だ。
「貴方ともあろう人が、犯りにきたってのか」
キツネみてぇな切れ目の男が、俺に近づいてくる。
「お前らどこの隊だ」
「そんなことはどうでもいいんだ。あんたも混じるかい?」
キツネ目の野郎が、ふとルキアに視線を戻す。
「ううっ」
やせ男が、呻いた。
はっ、はっ、はっ、と犬のように舌を出してそれを舐め、咥える。でもルキアの口は小せぇから収まる訳もねぇ。
「てめぇら、今のうちに失せやがれ。斬るぞ」
「おや、あなたも入りたいのですか?」
「ざけんな、俺は……」
「うああああっ」
ルキアの叫び声が響いた。
「あっ……んう……、はっ」
細い腰を掴み、無理矢理に下からねじ込もうとしていた。叫ぼうとしている口に、またそれを咥えさせようとしている。
「てめっ……」
「……おまえら、ちょっと下がってろ」
キツネ目が二人の死神を引き剥がそうとしている。
「何でだよ……俺らは無理矢理やってるんじゃねぇのに」
「へ……へへ、ここまできてやめられるかっ」
「黙れよ。副隊長どのに譲ってやれ。後々のことを考えたらな」
振り返り、また薄ら笑いを見せる。

「俺たちはね、この囚人に頼まれたんすよ。そこんとこ忘れてもらっちゃ困るんす」
俺は、斬魄刀に手をかけていた。
「嘘じゃない。試しに乗ってみたらいいっすよ」
三人のくそったれ死神は大人しく俺の脇に下がっていった。まん前に、打ち捨てられたように蹲る、ルキアがいる。
「ルキア」
声に反応するように、ふと顔をあげる。
隊舎牢のころの、あの腐った目をしてやがる……。
「……」
「あ?」
「……て」
「て?」
「こわして……」
ぽと、と涙が落ちた。
「ほら、俺が言った通りでしょ?」
右足を擦り下げ、振り向きざまに抜刀しながら、ありったけの霊力を乗せる。驚き、後ろに退こうとする死神の頬を掠めるように、斬魄刀で空を突いた。

「失せろ。腹の下のを潰すぞ」

……あの時、俺は言った。
身の程の大刀をもった、オレンジ色の髪の死神。
あの時、あの生きたツラはどこにいった?
「恋次……」
鞘に刀を収めながら、俺はルキアを見下ろした。
口から白いものが垂れ、もう着物は腰のあたりに下がってしまって、相変わらずの小せぇ胸が剥き出しだった。
「恋次……」
「本当に壊していいのか?」
腰をおろし、ルキアの顎を持ち上げる。「なぁ」
ルキアは虚ろな眼のまま頷き、そろそろと俺の股のあたりに手を伸ばしてきた。
くそったれが。
「……勃たせてみせろよ」
腹の下から、何かが沸いてくる。ルキアは俺のものを啄ばむように口に入れては、小さく呼吸をしていた。
ぴたぴたと吸い付いてくる。ぞくぞくっと、背筋を何かが走る。
俺は天井を見上げた。

なんか、違う。

「そんなんで勃つかっつーの」
小せぇ口で、必死に喉の奥まで飲み込もうとするが、苦しそうに咳き込んでいるように見えた。歯がこすれるのも分かる。
「へったくそ。お前が売女になれっかよ。 ……くそったれ」
頭のなかで考えるより先に、ルキアを抱いていた。
「お前、償いたいなんて思ってるんじゃねぇだろうな。んなこと……犯られたからって消えるもんかよ。ばぁか」
背中の皮が毟れてしまうくらい、手に力がはいってしまう。ルキアが腕の中で壊れてしまうかと思うくらい。
「……恋次い」
耳元から、ルキアの震える声がした。
「わたしは……どうすれば、いいのか、分からぬ」
「お、俺が知るか」
「胸が苦しくて、もうどうでもよくて、でも……」
離れようとするルキアの頭を、胸のあたりに埋めた。抵抗は、しなかった。髪を梳くと、するすると滑り落ちていく。小せぇ頭。
「夢を、見たいのだ。だんだん、私が虚無になっていく……怖いのだ。恋次」
細い身体が、震えている。こんな姿を見るのは、俺は初めてのような気がした。
「俺を……あいつと思えばいい」
「?」
「俺が代わりになってやろーって言ってんだよ」
「恋次?」
「うるせーな! ……あん時俺が教えてやったってのに、意味なかったじゃねーかよ……」
「何をぶつぶつ言っている?」
「あーもー、うっせーなー」
面倒くさくなって、俺はルキアの腿の間に手を差し入れた。
「あ、いやっ、恋っ」

「俺は、恋次じゃねえぞ」
ぬる、とした感覚に変わっていた。濡れりゃ入るもんだろう、俺は入り口のあたりでちょっと指に力を入れてみる。
「やぁっ! あぁ、いち……、っ!」
息を呑む。
見開いた眼が、俺を映していた。あの時の、光の戻った眼。ぱき、と何かが折れる音が、アタマん中で響いた。
「……入れるぞ」
「ばかぁ……、あっ、あぅっ、ああっ」
周りから、ぐぅっと締め付けられる感覚に驚きながら、そのナカを中指でこねくり回す。こんなんなってるのか……。
「わぁあっ」
奥のあたりに指が当たった瞬間、がくん、とルキアの身体が跳ねた。
「はぁんんっ……うあぅっ」
「ルキア」
首筋に口をつける。
「……っ」
ルキアの囁いた名前は、俺じゃなかった……

いつの間にか、自分のが勃っていることに気付いた。こればっかりは、どうしようもねえもんだな。自分の浅ましさに少し笑えた。
「もっと足、開けよ」
ぐいぐいと奥へと侵入させる。
「はっ……ああ、ああっ、はぅんっ、……ぁっ」
小せぇ胸の先っぽをさすりながら、首筋に喰らい付く。
「はっ……、ああっ……、いやっ」
「柔らけぇ……、お前ん中って狭いなぁ。俺の入んのか?」
指は二本入ったけど、そう簡単に入るもんか?
「……ささえて」
小さく息をしながら俺の肩に身体を預け、ふらふらの身体で、俺の足を跨ごうとする。手に、力は入ってない。
「入れちまうぞ、いいのか」
小さくかぶりを振り、俺のものに触れる。
「ふぅうっ……、んんっ」
そおっと指で支えながら、腰を落としていく。
「いてっ、無理すんな」
「ううっ、んんー」
入り口でつっかえるばっかりで、ちっとも入らねぇ。
「やったこともねぇのによぉ……」
 俺はルキアを床に押し倒し、片足をぐいと開く。先導しているようだが、俺自身、もう限界だった。
もう一度、その場所に触れる。
「壊れても、しらねぇぞ」

俺はルキアの返事を無視して、そこにぐいと押し込む。
「いいっ……ううんんっ」
「くっ……」
痛さで顔が歪んでることに気づきながら、俺はそれを無視していた。
「ルキア……、ルキア……!」
熱にうかされたように、俺は自然とその名を呼んでいた。ルキアの呼ぶ声は違えど、俺は、ルキアの名を呼び続けていた。
「はっ……あううっ、あ、あっ」
しきりに俺の頬を撫でる。必死に俺の首にすがるように腕を伸ばしてくる。
「あんま……締めるな……、出ちまうぞ」
いやいやをしながら頬を撫でる。
「おねがっ……あぁっ」
恐怖に似た寒気がした。全身の筋肉が軋むような、感覚全部が開かれるような、そんな感じがした。
俺は、その細い身体を抱いた。いや、すがりついた。
「ルキア……!」
「ぁっ、ああっ、あぅっ、……!」
ルキアの爪が背中に突き刺さる痛みすら、俺は分からなくなっていた。自分の身体に詰まっていた、その感情だけが、俺を動かしている。惨めに。浅ましく。
お互いの鼓動が溶け合うように寄り添っても、身体が繋がっても、すべてを注ぎ込んでもルキアの眼には、俺は映らない。
それを知りながら、それでも離す勇気をもてない。
「っあ、はぁんっ、あっ」
「っ……、くそっ……」
野良犬根性が染み付いてやがる。月に吠えたって、届きはしないってのによ。
「ルキ……っ」
「ああっ……、あぁ……」
どくん、どくん、と身体が脈打つ。
頭ん中がパーンと弾けちまったように、もう考えられなくなった。ただ、ルキアの眼から、また涙が落ちていた。

ルキアは静かに、俺から離れた。
「ルキア……」
何も言わずに、背を向けて小さく座っている。手を伸ばせばすぐ捕まえられるのに、届かないように感じる。
「すまない……」
か細い、声だった。
「私は……ずるいな」
「泣いてるのか?」
答えなかった。
「……どうでもいいんじゃねぇの? そんなこと」
「恋次……」
何故、抱いてやらない? 震えているじゃねーか。あの、細い肩が。
「……死ぬな」
俺はルキアに背を向けて立ち上がった。
「お前は、お、俺の……」
言いかけて、それを飲み込んだ。
「死なせねぇよ」

きっと助け出してやる。
あのガキと……
もし、どちらかが死んだら、お前は俺に泣くのか?

お前は、俺の月だ。



(完)