朽木ルキア大ブレイクの予感パート11 :  ハルキ氏 投稿日:2005/10/16(日) 18:54:37

※続編になります。先にこちらをお読み下さい。


『――繋』


しがみ付くルキアをそっと横抱きに抱えると、浮竹は己の足へと力を込めた。
「隊長!?」
「少し、掴まっていろ」
一刻も早く彼女を安全な場所へと連れて行ってやりたくて、浮竹は発作の直後だというのも構わず瞬歩を使用した。
体力と霊力をかなり消耗するそれは病身の彼にとって本来あまり推奨されない行為なのだが、そんなことを気にする余裕など無い。
今の浮竹に大切なのは、自分の身体よりルキアの心の安らぎだった。
風を切って夜の闇の中を移動し、彼がルキアを連れ帰ったのは己の屋敷――即ち浮竹家本邸であった。
地面に下ろされ入り口の門をくぐったルキアは、その予想以上に簡素な造りに内心驚く。
彼の屋敷は同じ貴族であるはずの朽木家の半分の敷地も無く、その外観もあまり立派とは言いがたいものだった。
意外そうなルキアの表情を横から見ていた浮竹が、くすりと苦笑して呟く。
「ウチは名前だけの貧乏貴族だからな」
「いっ、いえ、そんなことは……」
慌てて取り繕おうとするルキアに、浮竹は疲れたような笑顔を崩さないままで告げる。
「いい。本当のことだ」
それだけ言ってすたすたと廊下を行く浮竹に付いて歩く。暫し行ったところにあった曲がり角で立ち止まると、浮竹は振り返ってルキアに命じた。
「この先に湯殿がある。突き当たりだから、一人でも分かる筈だ」
つまり身体を清めてこれから夜の相手をしろという意味だろうかと考えたルキアに、浮竹が言葉を付け加える。
「その……汚れて気持ち悪いだろう。何もする気はないから、入ってこい」
顔を薄く曇らせてそう口にする浮竹に、ルキアは安堵して言われたとおりにする。
事実、一角に触れられた部分は全て、余すところなく洗い流してしまいたかった。
風呂の戸を開けて、中へと入る。
たっぷりの清潔な湯と石鹸を使って全身を洗い清めながら、ルキアは今日あったあまりにたくさんのことに溜息をついた。
散々時間をかけて身体を洗ったあと、ゆっくりと湯船に浸かってから、脱衣所に用意されていた代えの浴衣を着なおす。
渡り廊下へと戻ると、最前別れた場所で浮竹が待っていた。
視線を床に逸らし言葉すくなの浮竹に促されるがまま、ルキアは彼の住む当主室へと向かう。

初めて訪れた彼の部屋は、調度や花が品よく飾られひどく居心地がよさそうだった。
置いてあった座布団の上に座したルキアが、浮竹と正面に向き合う。
まるで彼女の視線を怖がるような浮竹の様子に、ルキアが不審そうに尋ね声を上げる。
「隊長、どうされました? やはりまだお身体が……」
「……すまない!」
顔面を蒼白にしてそう叫び、額を畳に擦り付けた浮竹に、ルキアは唖然として戸惑ってしまう。
「隊長?」
「さっき、外から見て初めて気づいた。俺が今まで、お前に何をしてきたのかを」
先刻、一角がルキアを襲っているのを見て、浮竹は全身の血液が頭へ上るほどに怒り狂った。
けれど次の瞬間、ふと思ったのだ。自分に一角を責める資格などあるのだろうかと。
ルキアを泣かせ、苦しませ、甚振っていたのは自分も同じではないのか、と。
「許してくれとは言わない。ただ、教えて欲しい。俺はお前に何をしてやれる? どうすれば、お前は笑ってくれるんだ」
「隊……長。私は……」
言葉に詰まって目をおろおろとさせるルキアに、浮竹は今更ながら己のしてしまった事実を深く思い知らされる。
自分は、彼女にこんな顔をさせたかったわけではないのに。
ただ、初めて見たときのような笑顔を、ずっと隣で振りまいていてほしかっただけなのに。
「お前の好きなようにすればいい。……お前があいつの元に行っても、俺はもう何も言わない」
伏せていた顔を上げると、浮竹は喉に何かつかえたような声でそう口にした。
彼は、既に理解していた。ルキアに再びあの表情を取り戻させる人間は、阿散井恋次を置いて他にいないと。
彼以外には誰にも、ルキアを真に幸せにすることなど不可能なのだろうと。
しかし、その言葉に対する彼女の返答は浮竹の予想を裏切るものだった。
「それは……できないのです」
「……どうしてだ」
消え入りそうな声でそう言ったルキアに、尋ねる浮竹も思わず言葉を震わせる。
「俺のせいなのか。俺がお前を抱いたから、それでお前たちは……」

自分自身の行いを更に深く責めるような浮竹の台詞に、ルキアは慌てて小さく首を横に振った。
その仕草が酷く弱弱しくて、浮竹は彼女が今にもぱたりと倒れてしまうのではないかと気が気でなかった。
「いいえ。悪いのは私一人です。私が――愚かだったから」
ルキアはそれだけ言って、桜色の唇を閉じ合わせた。
頑としてそれ以上の理由を言おうとしないルキアに浮竹が焦燥の色を見せ始めたころ、彼女はやっと口を開いた。
「隊長。さっき、仰いましたね。『自分に何が出来るのか』と。それなら一つ、お願いがあります」
「何だ?」
「――私を抱いてください」
ルキアの頼みに、浮竹が声を失って硬直する。
彼女が自分から温もりをねだるなど、今まで一度としてなかったことだったからだ。
けれど今なら、ルキアが何を思ってそれを望むのかも浮竹には分かる気がした。
その浮竹の推測を裏付けるように、ルキアが小声で言葉の続きを口にする。
「……抱いて、私にあいつを忘れさせてください」
泣く寸前のように潤んだ瞳でそう乞われて、浮竹は呆然とした顔で一言だけ彼女に訊いた。
「……お前は、それでいいのか?」
涙を湛え、けれど真っ直ぐと前を見据えた両目が浮竹を射抜く。
その真剣な目つきを崩さぬまま声を出さずこくりと首を頷かせたルキアに、浮竹は彼女の決意の強固さを知った。
「……分かった。お前がそれを望むなら、俺は、言われた通りにしよう」
浮竹は、優しく包み込むようにしてルキアの背に腕を回した。
折れてしまいそうに華奢なその身体を壊さぬよう、力を加減して抱きしめる。
腕の中に感じるルキアの身体は凍てついた氷の冷たさで、浮竹は彼女に自分の熱を分け与えるかのように長い間そのままでいた。
強張った背中をひたすらに撫でながら、浮竹はルキアの唇に己のそれを重ね合わせる。
小鳥の啄ばみに似たキスをしてすぐさま口唇を離すと、その軽い口付けを嵐のように全身に降り注がせる。
額、目元、頬、首筋、喉元、鎖骨の上。キスで道を作るように、浮竹は時間をかけて色々な箇所に唇を寄せる。
その暖かな感触に、ルキアがくすぐったそうに身体を左右へ反らせた。

「……んっ、はぁ……」
胸元をちゅっと吸われて思わず小さく漏らした吐息に、浮竹が目を細める。
それでも普段のように手荒なことはせず、彼は舌先に力を込めルキアのそこを繰り返し吸引した。
「うき、たけ……たいちょう……」
気持ちよいのかすでに目をとろりとさせているルキアの頬に右手を寄せて、そこに流れる汗を拭き取ってやる。
その腕を引っ込めようとした刹那、ルキアがはっしと彼の手首を握り締めた。
「こうしていても……よいですか?」
「ああ」
ルキアの掌を感じながら頷くと、浮竹はそのまま彼女の唇へもう一度口づけを落とした。
先ほどと違う舌を絡め合う深いキスに、ルキアの口の端から熱の篭った吐息が溢れ出る。
上顎の裏や頬の内側の粘膜を長い舌で刺激されて、びくびくと身体が揺れる。
それでも掴んでいる手首は離したくなくて、ルキアは浮竹にきゅぅと縋り付いた。
浮竹は握られている右手をそのままに、もう片方の手で彼女の乳首を下から上へ撫で上げるように愛撫した。
そこがぴくんと張り詰めていくのと同時に、浮竹の手首を掴むルキアの指先の力も強くなる。
「……あっ、ふ、」
ぞくぞくと背中を粟立たせるルキアに、もっと感じてほしいとばかりに浮竹はそこを攻め続ける。
くりくりと立てた指で弄ってやると、彼女は切なそうに身を捩って、掠れる声で「もっと」とねだった。
ルキアが自ら愛撫を求めるのなど、浮竹は今まで経験したことがなかった。
快感に身を預けている間は、他の男のことを考えずにいられるからだろうかと思考しながら、浮竹は言われたとおり力を強くする。
丹念な指使いで胸先を煽り立てながら、びくびくと痙攣するルキアの下腹部に舌で線を引く。
臍の窪みにまで舌を差し入れると、ルキアが苦しげに腹筋に力を込めた。
「は、ふぁ……ん、んっ」
その様子が愛しくて、浮竹は尖らせた舌先でほじるようにしてそこへ刺激を繰り返す。
ひくひくと腹を上下させるルキアに笑いつつ、浮竹は唇をより下へと移動させた。
薄い茂みを鼻先でかき分けて、洪水のように水浸しになったそこをぴちゃぴちゃと舐め清める。

舐めても舐めても更に溢れてくるその水に、浮竹はルキアが感じてくれているのを知って嬉しく思った。
「ぁあ……は、ふっ」
陰核をねっとりと包み込んで、丁寧に舌で包皮を剥いてやる。
赤く芽を出したそこに舌を這わせてぺろりと一舐めすると、ルキアは声もなく全身を震わせた。
行きつ戻りつする波のように緩急をつけて吸引してやれば、ルキアは耐え切れないといった風に身悶えする。
いつもの浮竹ならわざと焦らして遊ぶところだが、今日ばかりはそのままイかせて楽にしてやろうと吸い上げる力を強くする。
「ん、ぁ……ふぁあっ!」
大きく一啼きして身体を弓なりにしたルキアに顔を寄せ、汗で濡れたルキアの頬をさわりと一撫でする。
その腕を軽く引き寄せると、ルキアは自分に乗る浮竹の重みを感じながらそっと目を閉じた。
「……暖かい」
縁側で日向ぼっこでもしているようにそう言われて、浮竹はなんだか気恥ずかしくなる。
彼女の細い首筋を指先で撫ぜて、浮竹はいとおしむ様に彼女をかき抱いた。
頭を埋めた黒髪からふわりと香る石鹸の匂いに、理性が霧散していくのを感じる。
「朽木、……好きだ」
そう言われて、ルキアは安心しきったような表情を作る。母猫の腹の下で眠る仔猫のように、その顔は穏やかだった。
ルキアは、浮竹と共に在るのもよいのかもしれないと思う自分がいることに、自身でも驚いていた。
方法こそああだったとはいえ自分を心底愛してくれていた彼となら、きっと幸せになれるのではないだろうかと。
激情のような恋次への想いとはまた別の、静かな凪のような愛しさを、ルキアは浮竹に感じていた。
「隊長……」
ルキアは未だ握ったままだった浮竹の右手を、自身の濡れた秘所へ導いた。
「して、ください……」
その手に促され、浮竹は愛液で溢れたそこへ人差し指をゆっくりと差し込んだ。
痛まないよう細心の注意を払って挿れたそれを、そっと上下に律動させる。
その動きに呼応してルキアが切なげな嬌声を上げるのを確認すると、浮竹はそこへ入れる指の数を二本に増やす。
彼女が辛くないよう、落ち着くまで指を動かすのを待ってから、ようやくゆるゆると軽く中を扱く。

「苦しいか?」
内部を割り開かれる弱い感触に小さく呻いたルキアに、浮竹が慌てて心配そうに尋ねる。
それに首を横に振って大丈夫であるのを説明すると、ルキアは恥ずかしそうに顔を横に逸らして言った。
「もっと……激しくしてください……」
いつもの荒い行為になれている彼女には、浮竹の優しさが逆に焦らしになっていたらしい。
それに思い至った浮竹が彼女の申し出どおり指を三本に増やすと、ルキアは強い刺激を予想してか身体をびくんと跳ね上げた。
ぐちゅぐちゅと荒っぽく指を動かして中を掻き回せば、ルキアが声を限りに甲高く叫び続ける。
「ひ、ぁ……あぁあっ!」
その嬌声に追い上げられるように、浮竹も奥を蹂躙する指先に力を強める。
じゅぷじゅぷと卑猥な音が鳴り響くほどにそこを指で往復させれば、たらりと溢れた蜜が太腿をしとどに濡らした。
小さな川のように流れるそれを舐めとると、腿を這う舌の感触にルキアが思わず足をバタつかせた。
「ぁ、あっ!」
「綺麗だな、朽木は。髪の生え際から足の爪の先まで、何もかも綺麗だ」
言いながら、浮竹はルキアの上半身を持ち上げた。肩口に頭をもたれかからせると、無防備に覗いたうなじを強く吸う。
なめした皮のように手触りのよいそこにぽつんと赤い痕をつけて、浮竹は魅入られたような瞳で呟いた。
「本当に、綺麗だ」
黒く流れる髪を梳きながら言って、浮竹は思い出したように指での攻めを再開する。
片手では慈しむ様な手つきで髪を撫でているというのに、もう片方の手では激しい注挿を繰り返している。
そのどこかちぐはぐな二つの動作に、けれどルキアはひどく感じ入って間断なく喘ぎ続けた。
ただ梳かれているだけの髪の一本一本まで、まるで性感帯に変わりでもしたかのように感覚が鋭敏になっている。
その優しい愛撫だけで十分気持ちよいのに、同時に内奥の弱い部分をずぼずぼと強烈に押し上げられるのだ。
彼の巧みな指遣いに翻弄されたルキアに、もう我慢などできなかった。
解された中を強く突き上げられながら濡れた髪をつんと一房指で引っ張られ、ルキアは再び痙攣しながら達した。
「……っく、ぁ、あぁんっ!」

胸の内に倒れこんだ彼女を浮竹が引き寄せる。
イったばかりでうつろな少女の瞳が、徐々に悪戯な笑みに変わった。
「ふふ」
顔を緩めて笑い声を上げるルキアに、浮竹は何がおかしかったのかと首をひねる。
「どうした?」
「こんなに優しくされたのは久しぶりなので」
そう言われて思わず絶句した浮竹に、ルキアは追い討ちをかけるように浮竹に顔を迫らせる。
「いつもは、あーんなに卑猥な言葉をかけたり、あーんなに恥ずかしい格好を取らせたりするのに」
くすくす、と再び堪え切れないように笑い始めたルキアに、浮竹がそっぽを向いて頭を掻く。
気まずさに赤く染めた目元がルキアに見えぬよう顔を逸らしたまま、浮竹はぶっきらぼうに言い放った。
「…………悪かったな! いいから、今日はもう寝ろ!」
「はい」
まだ笑いに声を震わせながら了解して、ルキアは浮竹の隣に身体を横たえる。
窓越しの月明かりだけが微かに室内を照らす真っ暗なそこで、ルキアは久方ぶりにぐっすりと眠った。
その気配を横で感じながら、浮竹もまた満ち足りた顔で深い眠りについた。

*          *          *

翌朝、起床した浮竹は横にルキアがいないのに気づいて、はぁと溜息をついた。
おそらく、自分が眠りこけていた早朝の間に帰ってしまったのだろう。
そう思うと、なんだか惜しいような気がする反面、これで良かったのだという諦めもついた。
けれどやっぱり未練がましい思いが強く、不貞寝する気でもう一度布団にもぐりこもうとした瞬間、室内に少女の声が響いた。
「あっ、隊長。お目覚めですか!」
さすがに予想していなかった。
いくらなんでも夢の続きなのではないかと思わず頬を抓った浮竹が、その現実的な痛みに顔を顰める。

白い前掛けをしたルキアは、起き抜けの浮竹の目の前に両手に持っていた膳を置いた。
「隊長が中々起きられないので、お手伝いの方に頼んで朝餉の支度を手伝わせてもらったんです」
碗の蓋を取れば芳しい味噌の香りがぷんと鼻腔を刺激して、寝ぼけ頭の浮竹に食欲を沸かせる。
それを手にとってずずっと流し込み「美味い」と口にしてから、浮竹は当然の疑問を尋ねた。
「なぜ、帰らなかった……?」
「泊めてもらって、何もしないわけには……。もっとも、私にはこんなことしかできませんが」
いや、『こんなこと』どころではない。
エプロン姿を見ることができたうえ、手料理まで食わせてもらえるのである。
これ以上の幸せなどあるだろうかと思いながら浮竹が茶碗に腕を伸ばそうとしたそのとき、騒音とともに襖が倒壊した。
「うわぁっ……」
幼い子供が四人、破れた襖の上に折り重なって倒れていた。どうやら隙間から中を覗こうとしていたらしい。
恐らく浮竹の弟妹なのだろう。皆一様に、しまったといった表情で顔を合わせている。
「お前たち……ここで何をしているんだ?」
「いや、これはその……十兄が初めて彼女を連れてきたって聞いたから」「そう、俺ら、気になって」「だって俺たちの義姉さんになる人でしょう?」
その言葉に浮竹が顔を真っ赤にしておろおろと目を泳がせた。
「ば、馬鹿を言うなっ! 彼女はただの部下でだな……俺とは何の関係も……」
しどろもどろになってそう答える浮竹に、ルキアがくすくすと笑いをかみ殺す。
困り顔の浮竹に助け舟を出した彼女の言葉は、しかし浮竹を更に困らせる内容だった。
「ええ。浮竹隊長の婚約者で、朽木ルキアと申します」
その突然の言葉に子供たちがきゃいきゃいと無邪気にはしゃぎ立てる一方、浮竹は困惑した顔でルキアを見返した。
しかし当のルキアは、微笑を湛えたまま平然と小声で浮竹に囁く。
「私の頼みなら何でも聞いてくれるといいましたよね?」
「あ、ああ……確かに……。いや、でもな朽木……」
唖然とする浮竹を横目に、ルキアが目を半月型に笑わせた。
その瞳の奥で本当は何を考えているのか、知っているのはルキア本人だけだった。


(完)



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