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朽木ルキア大ブレイクの予感パート10 :  456氏 投稿日:2005/06/14(火) 00:19:12


日曜日の夕方、俺とルキアは商店街。
「日曜日は白玉が安いと井上が教えてくれたのだ!行くぞ!」
嬉しそうに頬を染め、気乗りしなかった俺を引っ張り、
気づけばコイツの両手には、お目当ての品。
んで?俺がこれ全部払うわけですか。
レジに打ち出された緑色の数字を横目で見ながら呟いた時には、
ルキアの姿は既に無かった。
見渡すと、斜め向かいの本屋の店頭でラックに並べられた中古本を物色している。
またそれで日本語覚えるつもりか。つーかそこは洋書のコーナーだぞ…
「3180円になります」
余所見をする俺に向かって、営業スマイルで催促する『研修中』の札を下げた店員。
っ畜生、この借りは返してもらうからな、絶対に。

自動ドアから一歩外に出ると、外は夕焼け、日も落ちる。
心配の種だった虚も出没する様子が無い。全く、平和なもんだ。

「いっ、一護!」
声がしたのはまさにその時。
もしかしなくても、ルキアだった。
一直線に走ってくると、いきなり俺の腕を取った。
いきなりの事に驚くことも恥らうことも忘れた俺に、泣きそうな声でこいつは言う。
「助けて…くれ!」
「…!?」
そのままルキアは俺を引っ張る形で走り出した。
弱音を吐くという事を決してしないルキアが、俺に向かって助けを求めている。
俺にとっては人生のトップ3には入るであろう一大事である。
「どうした!何があったんだ!?」
ルキアに引っ張られ、両手の袋が更にバランスを取りにくくする。
それでも躓かぬよう気をつけながら俺が訊ねると、
コイツは眉根を寄せたまま答えてくれた。
「チャドのような奴が…私に謎の呪文を発してくるのだ!」
ハァ??
朽木さん、言っている意味が良く分からないのですが。


ルキアが俺を連れてきた場所は、さっきまでコイツがいた本屋だった。
俺をグイグイと押すと、半分後ろに隠れる形をとり、
「…コイツだ」と恐る恐る指差す。
その人差し指の先には、苦笑いをした黒人の男。
ルキアの知り合いと分かってか、男は俺に向かってゆっくりと話しかける。
「Would you tell me the way to the library?」
俺たちが日本人と知ってか、教科書に出てきたそのままの文章を喋る男を見て、俺は色々と理解した。
一つ、ホリが深くて色黒で大柄な外国人とチャドは同類項。
(…まぁ、チャドも外国の血混ざってるらしいし分からなくもないが)
一つ、謎の呪文は英語だった。
(そうか、コイツは英語読めねぇだけじゃなくて聞いたこともねぇのか)
一つ、洋書眺めてたから英語出来ると勘違いされた。
(大方「これはどんな呪文なんだ?」とか思って見つめてたんだろ)
「えぇー…と」
頭を掻くと、俺は今までの授業内容を総動員して、
使えそうな単語を全て引っ張り出した。
「OK,now…Turn left at the second signal,and…」
持てる力を出し切って喋りきると、
「Thank you very much.」
男は嬉しそうに答え、そして目線を俺の斜め下に逸らし軽く手を振って去っていった。
何だよ、お前ルキアに気があったのか?
少し腹立たしく思ったが、会話がとりあえず通じた充実感の方が大きかった。
それなりに勉強やってて良かったかもな、そう感じて俺は振り返った。
「とりあえずなぁ、こういう時は『Yes』か『No』かどっちかで通じるから、
 大体は『No』って連呼しとけば相手も諦め…!?」
ルキアが、今まで一度も向けたことの無い眼差しで俺を見つめていた。
「一護…貴様は凄いな…私には理解できない呪文をすっかり心得ているとは」
「いや、だから違う」
「私は誇りに思うぞ!一護、貴様は素晴らしい!」
「やめろ気色悪ぃ!俺の話聞いてたのか!?」
「勿論だ!『のぅ』と何度も言うのが初歩的な呪文なのだろう?」
分かってねぇよ、アホ。


「ふぅー」
息を一つ吐き出すと、ポスッとルキアは俺のベッドに腰掛けた。
「それにしても今日の一護は見直したぞ!」
この台詞、帰り道からもう何度目か分からない。
正直ここまで褒められて俺は参っていた。
涙ぐんだ目で頼られて、その後紅潮した顔で褒め殺しだぜ?
あーもう俺にどうしろと。
つーかルキアにこれだけ頼られたのは、初めてかもしれない。
たどたどしい英語の文を一つ喋ったと言うだけで、
間違った知識満載なコイツの頭ん中では俺はまるで英雄に映ってるってわけだ。
そこまで独りごちた所で、まるで漫画のように脳内で電球が光った。
…まてよ、間違った知識って言ったよな、俺。そうだ言ったな。
コレを使わない手は無いじゃねぇか。
誰も見ていないが、俺はここ数ヶ月間で一番の笑みを浮かべているだろう。
「…おい、ルキア」
こんな所でケイゴの無駄知識が役に立つとは我ながら驚きだ。
「何だ?」
ベッドから足を投げ出しリラックスした雰囲気のルキアに、俺は一言投げかける。
「Why don't you knockin' boots with me?」
スラングだ、意味分かんねぇだろ。つーか分かられたら俺のイメージぶち壊しだぜ。
「またその呪文を…」
「ほら、こういう場合は『Yes』か『No』か、さぁ果たしてどちらでしょう?」
間髪いれずにじり寄る俺。
俺の雰囲気に気圧されたのか、息を一つ呑んだルキア。
嫌な予感がしてるだろ?そう、おそらくお前の予想で大当り。
でもなルキア、俺がお前の考えを逆手に取ってるって事までは予想できねぇだろうな。
口角を上げ、顔をキッと上げると高らかにルキアは宣言した。
「『のぅ』と言うとでも思ったか?残念だったな一護、私の答えは『いぇす』だ!」
その瞬間、勝ち誇った顔をしていたのは果たしてどっちでしょう。

商談成立とばかりに、俺はベッドへダイビング。
「うわっ!莫迦者私はちゃんと言ったではないか、コラいきなり何を…ぁ…っ!」
これで今日の借りはチャラにしてやるぜ。
ただしてめぇが買った袋の分やってやっからな、覚悟しろよ。



(完)