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朽木ルキア大ブレイクの予感パート10 :  60氏 投稿日:2005/05/19(木) 01:49:20


『雨乾堂の朝』


十三番隊隊首室・雨乾堂。
湖に浮かぶように建てられたその庵は、本来病弱な隊長を慮り療養のために建てられたものであった。
だが今ではそこが隊首室であり、事実上十三番隊隊長浮竹十四郎の別宅で、書斎兼寝室であった。
その雨乾堂に、現在一人の訪問者があった。朽木ルキアである。


「隊長、そろそろご起床のお時間です」
枕元に正座した少女は、凛とした声音で浮竹を呼んだ。
「ん・・。あと五分」
別に眠いわけではないが、布団を深く被りなおし、浮竹はもぞもぞと寝返りをうつ。
「だめです。また会議に遅刻なさるおつもりですか?先日もそのようなことを言って、遅刻ついでに休むと会議をサボられたばかりです。お体が悪いのは重々承知ですが、具合のいいときくらいきちんと出席してください」
「ん・・・朽木も一緒に寝るか?」
「寝言は寝てからおっしゃってください。ご遠慮します」
一刀両断。
ルキアの言い様は、実に容赦がない。毎朝のやりとりである。当然だ。
「固いこと言うなよ・・な」
「冗談はほどほどにして、本当にいい加減起きてください。隊長」
揺り起こそうと、ルキアは浮竹の肩に手を伸ばす。
その手を掴まれたと思った瞬間、ルキアの視界は反転し、気付けば浮竹の腕のなかに収まっていた。


さすがは隊長職というべき早業である。
「細いくせに柔らかいなあ、朽木は」
「セクハラで女性死神協会に訴えますよ」
「それは困るな、こういう真似ができなくなる」
「でしたら・・」
「うん、訴えに行けないようもう少し強く抱いていよう」
「隊長!」
「名残を惜しむくらいいいじゃないか。明日からしばらく現世滞在の任務に就くのだろう?
そしたら仙太郎のやかましい声で起きねばならんのだぞ」
「そうですがっそれとこれとは別問題です!」
声を荒げ、もがくルキアを逃がさぬよう抱きしめた。
彼女が本気で抵抗する意思のないことを浮竹は知っている。
本当に嫌ならルキアは毎朝のように浮竹を起こしにはこないし、そもそも浮竹自身このような真似はしない。
これはただの戯れあいだ。戯れあいに過ぎないことをお互いよくわかっていた。

浮竹の手はルキアを優しく包み、目元に口付ける。
「ん・・」
触れるか触れないかのぎりぎりの口付けに、ルキアはこそばゆさを感じ、瞼を震わせた。
浮竹は、決して女にするようにルキアに触れなかった。
背を撫で、そっと髪を梳く。鼻先に額に唇を落とす。
その仕草は小動物をいとおしむのに似ていた。


慈しみに満たされた腕の中は心地よく、ルキアはいつのまにか微睡んでいた。
眠ってはだめだと思うほど瞼は重くなり、やがて安息を与えてくれる腕の中、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。



「やっと眠ったか。まったく。目の下のくまに気付かぬほど、俺は節穴ではないぞ」
体を丸め、浮竹の腕を枕に眠るルキアを見下ろす眼差しは穏やかで、慈父のようであった。
「んむぅ・・」
もぞもぞと体を動かすと艶やかな黒髪が流れ、細い首筋が露になる。
白いうなじに、花弁に似た赤い鬱血はよく映えた。
痛々しいほどに。
白哉が義妹に向ける感情の正体を浮竹は知らない。
愛なのか憎しみなのか。執着なのか無関心なのか。
いずれにせよ、白哉はルキアに無体を働く。
浮竹は白哉がつけた唇の痕にそっと触れた。
それは普段は髪に隠れるが、ふと気を抜き無防備になれば、容易に人目に触れる。
そんな微妙な位置に所有の証を施す白哉の真意を、浮竹は測りかねていた。
「疲れた顔をしよって」
知れず、眉間に皺が寄る。
浮竹から白哉を諌めることもできるだろう。だがそれは藪蛇になりかねない。
突き出されたら、蛇はルキアを囲い込み、外界から閉じ込め放さないだろう。
そうなれば飼い殺しだ。長い死神の生を無為に過ごさせることになる。


それでも、家族という絆はルキアを捕らえて放さない。
ルキアの未来を想うとき、どうしても浮竹の心は晴れない。
「何か、変わるきっかけでもあればいいんだがな」
彼女の未来が、穏やかで笑顔に満ちたものであればいい。
浮竹はそう祈ってやまない。
「・・・いっそ嫁に来るか?」
半分冗談、半分本気の呟き。
応えるのは、健やかな寝息のみであった。



ルキアが死神の力を失い、尸魂界に未曾有の動乱が巻き起こるのは、これより間もなくのことである。



(完)