朽木ルキア大ブレイクの予感パート10 :  24氏 投稿日:2005/05/18(水) 00:06:06


『イチルキハワイ旅行 1日目-2日目』


空港の内の涼しさから一変、外に出た途端、日は俺達の体を刺す様に降り注いだ。
暑いなんてもんじゃない、クソ熱い、加えて痛い。
燦々と照り付ける太陽は、なけなしの俺の体力をアスファルトを焦がす臭いと共に霧散させた。
まだ初日の頭、こんなことでは先が思い遣られる。身体中から汗を流し、
暑がりの顔で俺はこれから三日間共にする隣に居る相手、ルキアに話しかけようとした。
「……いねぇ。」
既にそこにルキアは居なかった。一つ大きな溜め息を溢し、眉間に皺を寄せ辺りを見回す。
―居た。
麦藁帽子を浅く被り、こんな熱いところだというのに七分丈の色気無いワンピースを着、
いつもより少し大きめのリュックをしょっているルキアは、
密集するビルの隙間から少し見えては、しかし位置をずらすと建物に隠れる海を探し見つけていた。
「勝手にうろちょろすんな。迷子になったらどうするんだよ。」
「あっ、こら!返せ!!」
側まで寄った俺は麦藁帽子を奪い、自分の頭に乗せた。
それを奪い返そうとルキアは手を俺の頭に伸ばすが届かない。
おかしく笑っていた俺に対し最初は不機嫌にふくれていたが、
やがて諦めたのか、また隙間から海を見始めた。
「何見ようとしてンだよ?」
「いやな、黒船だ。」
「…てめぇ……、」
目線を合わせてないが、こいつは本気で言っているのは明らかだ。
「学校で習っただろう?外国といえば黒船があるはずなんだが…
どうにもここの眺めが悪いらしい――…オイ!一護、どこへ行く!?」
俺はルキアをおいて、汗だくで重い荷物を肩にしょって歩き始めた。
それに気付いたルキアは小走りで俺を追う。
―全く、こんなので大丈夫なんかよ…!?
また大きな溜め息が自然と俺の口から溢れた。
行きの飛行機でもテイクオフする時なんか、ビビって縮こまっていれば良いものの、
不安だだの嫌だだの、ついには「もう行かんでも構わんから下ろしてくれ!!」
なんて無茶なことも言い出して周りから白い目で見られるわ―。
突然視界が明るみを拾った。
後ろからルキアが、俺の被っていた麦藁帽子を自身が飛び上がって取り戻したようだ。
「ほら、早く行くぞ。」
帽子を被り直しながら、そして微笑みながら催促する。俺は僅かに口の端を緩ませ
「おう。」
と答えて俺もまた歩き出した。

そう俺達は今、夏終りのハワイに来ている。


イチルキハワイ旅行 一日目


まず、なぜ俺達はこの地に来ているかだ。
『この回すやつは何だ?』
二週間ほど前、二人で買い物に出かけた時のことだ。
ルキアは初めて見る福引きのあの回すやつに興味をそそられていた。
俺は問掛けに答える代わりにポケットに突っ込んでいた、
先ほど買ったジーンズのレシートをルキアに渡した。
手にしたは良いが、一体どういう意味か分からず困った顔をして俺を見た。
『これ、あそこに持っていってみろ。回させてくれるから。』
『莫迦にするな!!こんな塵の紙切れで一体―』
『いーから行ってこいって。』
そう言われて、俺を疑ったままルキアは福引きの列に並んだ。
手に確り握られたレシートを見ては心配そうに俺を見返す仕草が愛らしい。
笑った俺に気がついたのかルキアはそっぽを向いた。
福引きの群衆にルキアの小さな体は容易く隠れてしまう。
やはり見ていないと不安になる俺がいる。そんな自分を自嘲しながら待った。
突然鐘が鳴った。
『特賞!ハワイ旅行ペアチケットです!!』
へぇ、めでたい奴も居るもんだ。海外とか縁の無い、かつ運のない俺には羨ましいとか思わなかった。
福引きの会場の後ろのボードには特賞を当てた人間の名前が書いてあった。
そして今、新たに引き当てた運のいい奴の名前を書こうと、会場の人は黒ペンを持つ。
一体どこのどいつだ?少し興味に駆り立てられた。書き終えた会場の人がボードから離れる。
目に入った名前に一瞬間理解に苦しませた。
『朽木ルキア 様』
ただ驚いてボードを見る俺にいつの間にか戻っていたルキアが俺に言ってきた。
『喜べ!一護!!紙切れが金玉に化けて、金玉が旅行に―むぐっ!?』
『金玉とか言うな馬鹿野郎!?』
興奮するコイツの口を押さえた。そんな中、ハワイの三文字が俺の頭で木霊する。
―マジかよ!?
俺の手を小さな両手で外し、小憎たらしい笑顔を浮かべながら驚きの収まらない俺を見る。
『どうやら、ちけっとは二枚あるらしいな。』
封筒を目の前でチラつかせる。
『…貴様も行きたいか?』
ふっ、と我に戻る。多分食い付いた表情を俺はしてしまったのだろう。
ルキアは思わず吹き出した。
『なっ!なんだよ!!』
一頻り笑い終えたルキアは、またさっきの笑顔を作って俺に言葉を続けた。
『もし、貴様が行きたいと言うなら連れてってやろう。ただし―』
出た。タダで連れていく気はないらしい。とりあえず突っ込みは入れる。
『つーか連れてくのは俺だけどな。』
『やかましい!せっかくの好意を!』
『へぇへぇ。で、ただしなんだよ?』
『そう、ただしだ。貴様は旅行中、私の何でも言うこと聞くなら―
連れていってやっても構わんぞ。』


ハワイの響きに飲み込まれた俺は、思わず承諾してしまった。
そして今ここに俺達は居る。目的地のホテル前までバスに届けてもらい、丁度下車したところだ。
ここのホテルはハワイでもかなり外れた場所で、遠出するにはかなり難する所に位置している。
最初は失敗かと思ったのだが、なんとすぐ側にはプライベートビーチさながらの穴場が置かれていた。
夏終りの時期であってか、砂浜には片手で数えれる程の人間しかいない。
ルキアは目の前に広がる透き通った青い海に見入っていた。
ただビーチから離れた路傍、波の音は聞こえないが感動を与えるには十分である。
俺はコイツの隣に立ち、海とルキア、両方に見入る。
潮風はルキアの髪をなびかせ、少し眩しそうに目を浅く閉じる横顔はひどく艶やかだった。
普段は余り見せない大人っぽいルキア。いつの間にか海よりも見ている自分が居た。
それに気付いたか、気付かないか、振り向き俺と目が合う。思わずすぐに俺は視線を海に移した。
「なぁ、一護…。」
どうした?いつもと少し違う、落ち着いた調子で言う言葉。
来て早々ロマンチックな気分にでもなったのか?
「なんだよ?」
海からルキアに視線を戻す。すると潤んだ目で俺を見ている、
と思ったが、コイツの視線は海に戻っていた。そ
して続いて出た言葉は俺の先走った妄想に歯止めをかけた。
「…この国に黒船はないのか。」


とりあえずフロントでチェックインを済ませた俺達は、
これから少しの間お世話になる部屋に着いた。お世辞にも広いとは言えないが、
ルキアにとってはいつもの押し入れと違い十二分だろう。それにこの階はホテルでも上の方。
ガラス越しに青い絵を満喫できる。
ただ残念なのが、ベッドはシングルのが二つ。その位気ぃきかせろよ、と愚痴を内で溢した。
その横では俺がそんなこと考えているなんて思っていないだろう、
ルキアはベッドの上に立ち、トランポリンの代わりにして楽しみ始めた。
「ったく…お前はガキかよ。」
しかしそんなガキに俺は深く惚れ、深く愛している。言葉には出さないが。
今のように無邪気に笑うルキア。そして先ほどの大人びた横顔。
どんな言葉、仕草何もかもが俺を満たしてくれている。
そして俺はそんなガキに発情もしている。
それなりの回数、俺達は肌を交じ合わせていた。
正直な話、俺の目当ては海でなくハワイでなく、ルキア自身だった。
跳び跳ねる度に鳴るベッドの軋む音が、過去の情を思い出させる。
そのまま回想を続けると押し倒してしまいそうになった。
―なぁ、男と一室で二人っきりだぜ?
―警戒が足りねぇんだよ。
「だれが餓鬼だ。」
暴走しだした俺の意識。あと少しでコントロールできなかっただろうが、
突然ルキアは跳び跳ねるのを止めて俺のことを睨んでいた。
どうやらさっきのが聞こえていたらしい。そこでやっと我へとかえった。
「また餓鬼と言ったな貴様!」
「言ってねーって。」
「いや確に聞いたぞ!」
ベッドの上でペタンと座り睨む姿は、全く怒っていても迫力はない。
寧ろ誘っているように見えもした。
ただ俺も今すぐなんてのはもったいない気もするし、ルキアも嫌だろう。
沸き上がる興奮をなんとか自制した。
冷静になって、そういえば、と気付く。
「そーいやお前、」
「なんだ?」
「海とか行きたくねぇの?いつもなら連れてけ!とか言うだろ?」
そう。普段なら目を輝かせて俺に催促するだろう、
しかし今日は一度もコイツの興味に踊る瞳を見ていない。
「………。」
それに対しての答えは無言で、うつ向き加減に目をそらすという行動だった。
だいたいそれで検討はつく。
「…お前、泳げないのか?」


「そっ!そんなわけないだろ!!私は死神だぞ、泳ぐことなどできて当然だ!!」
嘘だと言うのはバレバレだった。そういえば学校の水泳でもコイツはいつも休んでいたし。
「泳げねぇんなら俺が教えてやるよ。せっかくハワイに来たんだぜ?泳がなきゃ来た意味ねぇよ。」
「だから泳げると言ってるだろ!!」
「わかったよ、お前は泳げる。だけど俺が泳ぎ方教えてやる。
それでいいだろ?なっ!とりあえず行こうぜ海に。」
相変わらず愚痴を溢すルキアを無視して、俺は二人分の荷物が入ったトランクを開き、
自分の水着にバスタオル等、ルキアの水着以外二人分をビニールの袋に詰めた。
「水着はお前持ってんだろ?ほら、入れといてやるよ。」
ルキアは自身の下着などは俺の荷物と一緒にしたがっていなかった。
まぁ当然といったら当然かもしれないが。
「………。」
またルキアは黙りこんだ。少し焦った様子で乾いた笑顔を浮かべて、眉は困った角度に向いていた。
「お前…忘れたんか?」
「忘れてはおらんが、」
「じゃぁ、」
「いや、な…海など入らないと思ったから、
というか'はわい'とやらに海が有ることを知らんでな、その……水着は元々持ち合わせておらん。」
肩を垂らして俺はうなだれた。相変わらずのボケっぷりに言い返す気すら起きない。
ハワイに来て海に行かないなんてもったいなすぎる。
というよりも、コイツはハワイを理解していなかったのか…。
しかしそんなことよりも、ルキアの水着姿が見たかった。
「しゃーねぇなぁ。」
俺は体を起こして水着の入った袋を持って立ち上がった。
「まさか一人で楽しむわけではないだろうな!」
ルキアは少し潤んだ目で、寂しそうに俺を睨んだ。
―コイツ、一人置いてかれると思ってるのか?
おもしろ可愛くて、少し意地悪してやりたくなった。
「どうすっかなぁ。」
俺はルキアに背を向け靴紐を結びだした。
「…ズルイぞ……。」
か細い哀に染まる声が背中に当たった。それでさえも良く感じる俺は変態か?
靴紐を結び終えた俺はルキアの方を振り向くと案の定、
いつもと違ってしおれたルキアがベッドでうつ向いていた。
いつだってコイツは俺の冗談を真に受けてしまう。だけどそんな正直なところが好きだった。
これ以上は可哀想に思った俺は、ルキアの腕を引っ張ってベッドから降ろした。
「冗談に決まってんだろ?お前の水着買いに行くんだよ。」
俺の言葉を聞いた途端、しおれたな花に水を与えられたように艶を取り戻す。
が、俺に対する怒りがすぐに沸いたようだ。
「くだらん冗談をつくな!」
顔を赤くして怒っているが、どこか安心したような表情は隠しきれてはいなかった。
そんなルキアに俺は声を出して笑った。


ホテルにあった水着売り場に来た俺はコイツの気に入りそうなのを模索していた。
ただ男の俺としては居づらい空間だ。
「一護…やはり水着とはこういうのばかりしかないのか…?」
隣に居たルキアは、手に持った黒い水着を引っ張りながら呟く。
まぁ確に普段から露出の少ない服ばかり着ているのだから、恥ずかしいに決まっているだろう。
「あぁ?なんだよこんなババくせぇの。」
その競泳用に似た黒い水着を奪い、元あった場所に戻した。
「ならどういうのが良いのだ?」
「え?俺に選ばせるんかよ?そうだなぁ…。」
手元から一番近かった場所を探す。どれもこれも派手な色で、
いまいちルキアに合いそうなものはなさそうだと思ったが、一つ、あった。
「これなんてどうだよ?」
それは無駄な飾りのないシンプルな白いビキニだった。
「こっ!こんなの下着と同じじゃないか!!」
そう反論されるのは目に見えていた。でも似合うと思うのだが。
惜しむ俺を尻目に、俺のセンスは当てにならないと判断したルキアは売り場の更に奥へ行くと、
納得のいくものを見付けたのか、声を大きくして呼んだ。
「これだ!これなら文句ない!!」
このフロアに入った時からだいたい予想はついていた。
全くコイツへの予知能力も幾分上がったもんだ。
こいつは水着じゃない。スキューバダイビング用のやつだ。
これ以上まともにやりとりしていては潮が満ちてしまう。
突っ込む気力も失せた俺はフロアを真っ直ぐに出て、
さっき俺が選んだ水着を乱暴に取り、レジまで歩く。
「もうこれ決定な!!騒ぐな反論すんな文句言うな!」
ルキアの制止の声を聞き流し、結局この白いビキニを買うことにした。


やっとハワイを満喫できる。来たときに感じた鬱陶しい暑さも、
あの青い海に入れば溶かされるだろう。

―今日は厄日か?

俺はこの異国の空へ問掛ける。
その答えは質問する前から知っていた。
ついさっき迄の晴天は何だ?空は灰色に染まり大粒の雨が熱を奪ってく。
目の前に広がっていた青い海の荒げる波はテンションを侵食する。
外へ出る前で不幸中の幸いか、俺達は今、ホテル外の屋根のあるエントランスで途方にくれていた。
「雨が降ってはしかたがないなぁ!いや、残念でしょうがない!」
素で落ち込む俺の背を叩くルキアは、助かったと言いたげな笑顔をしている。
「…本当は泳がなくて済んで喜んでんだろ。」
全く、柄になく一人で盛り上がっていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
無意識にルキアへの返す言葉も荒くなる。
それに気が付いたか、切な気の困った顔で情気る俺の眼前に、そっと周り込んだ。
「お前らしくないな。」
そう言った息が吹きかかりそうな位の急接近だ。俺は思わず驚きと恥ずかしさで身を後ろに引いた。
「―っ!なんだよ急に!?」
耳が熱くなるのを自分でも感じられる。多分俺は顔を赤く染めているんだろう。
そう思った途端さらに増した気がした。
「元気がないのでな。」
「あぁ?そんな事ねぇよ。」
内が身透かされた気がして、それが嫌で眉に皺を寄せながらぶっきらぼうに答えた。
すると何故だ?ルキアはいつもの表情を取り戻す。
「やっとお前らしくなった。」
そんな俺の態度に微笑しながら言葉を続けた。
「眉間はいつも寄せておけ。その方が良い。」
どうやら俺は消沈しているうちに眉間は緩んでしまったようだ。
誤魔化すように眉間を訳もなく触る。

―多分…コイツの前以外ではこんな姿を見せないだろうな。

ふとそんなことが脳裏に浮かんだ。
柄にもなく盛り上がる俺。残念がる俺。ケイゴや水色、家族にも見せない緩みきった俺。
でもコイツの前だと無意識に現れる感情。

それに気が付いた刹那、俺は素直にその感情へ従った。
体を横に向けていたルキアの肩を両手で優しく、とはいかず、少し強めに掴み俺の正面に立たせる。
突然のことでルキアは体を強張らせた。
「どうしたんだ、急に?」
僅に怯えの入った黒曜色の瞳に俺の姿が映る。ガキみたいにあどけない無垢の瞳。
無言でじっと見つめ続けていると、微かにルキアの唇が震えた。
そんな些細なことでさえ、俺の気持を大きく高ぶらせる。
「ルキア。」
不意に口から出た俺の言葉は既に熱を帯ていた。自身が恥ずかしく顔が赤らんだ気がする。
俺の右手をそっと、ルキアの顎に沿え、顔をもたげた。
一瞬驚いたようだが、ようやく今の状況を把握したのか、
みるみる同じように顔を赤らめ、そして瞳に熱が篭る。
思わず俺は、右手親指でコイツの唇を触れていた。柔らかく、甘い感触。また気持は上気する。
ルキアの潤んだ瞳は哀願しているみたいだ。
俺はそれ答えるために、ゆっくり、じらすように顔を近付けていった。


「オゥ!?」
場に似つかわしくないマヌケな声が雨の音に混じる。
それは互いの息が肌に感じれる距離まで近付いた時だった。
俺とルキアは同時に声の元に顔を素早く向けた。
そこにはこのホテルから出ようとする男性外人宿泊客数名が自動ドアを開けたところだった。
俺達とソイツ達とで目が合う。
やっぱり、俺達の状況はどう見られてもそれ以外に取られる筈がない。
やがて沈黙を破ろうと俺はコイツの方へ向き直し、何も考えず言葉を並べる。
「なぁルキアぁ!お前腹減ってんだろ?!」
引きつった笑顔から出た、裏返ってスッとぼけた声は泣きたい位に情けなかった。
「?!突然何を言い出す?!」
「お前腹減ったからってヨダレ垂らすなんてなぁ〜!
だらしがないぞ!!そうだ!今から飯食いに行かね?!」
俺は名残惜しく右手親指をルキアの唇から、左手を肩から離した。
無茶苦茶な言い訳を並べてる自分が痛い。つうか適当な事言っても外人だから分かってねぇし。
つうか外人指笛してあおってるし。久しぶりに殺意を覚え、
俺は自分の中で一番の悪人面で外人を睨むと、ビビったのかそそくさと撤収しやがる。
俺は居なくなるのを見届けてからルキアをまた見ると、赤面で、
「私は本当に涎を垂らしていたのか?!確に腹は減っていたが…。」
と信じていやがるし。つうかコイツ腹減らしていたのか。
それよかもうムードもへったくれもねぇ。やっぱ今日は厄日だ。
俺の落胆は今日何度目になるか。こんな後だから仕切り直しするのも決まりが悪い。


結局あの後ルキアの欲求に答え、俺達は少し早い夕食を済ませ部屋へと戻った。
ルキアは先に風呂へ入り、俺はベッドに横たわる。
天井を見上げ顔をしかめた。俺は雨が嫌いだが、雨も相当俺が嫌いなんだろう。
ガラス一枚隔てて聞こえる雨脚は相変わらず激しい。
―明日まで降るつもりはねぇよな。
苛立ちと不安が交錯するなか、風呂から上がったルキアが部屋に戻ってきた。俺は視線を移す。
のぼせたのか、ほんのりと顔を赤め、首に掛けたタオルで髪を拭いている最中だった。
半袖のシャツに半ズボン、外では見せない膝は新鮮身を感じさせ、
ちゃんと拭き切れていなかったためか、シャツは肌に張り付きしなやかな体のラインを強調している、
その中一際目立たせたのは、
―コイツ?!着けてねぇな…!?
胸の上で遠慮がちに自己主張する二つの突起だ。ルキアが髪を拭くのに腕を動かす度に擦れている。
その動きに魅了され下半身に熱が入るのが分かった。
「しかし、異国の風呂は変わっているな。使いにくいったらなんの。」
「―! そりゃそうだろうな。」
見とれていたところを突然話しかけられ、俺は思わず早口になってしまった。
が、気が付かなかったようで、まだ髪を拭いている。
「貴様も早く入れ、風呂が冷めてしまうぞ。」
「あぁ。」
まだ見ていたい気持はあったが、この後のことを考え、
俺は熱くなった下半身を悟られないように前屈み気味に立ち上がった。そこでふと疑問が浮かぶ。
―湯、入れたんか。でも浴槽で体洗うにしては早く出てきたよな。
―…つうかユニットバスだぞここ。
扉を開けると案の定、洗面所までびしょ濡れになっていた。


俺も結局周りは濡れてるんだし、ルキアと同じように洗面所で体を入念に洗い、
湯船に体を沈めた。つかる間、俺のこの後についての妄想を膨らます。
今日は何一つ良いことがなかったのだ。せめてこれだけでも成功しておきたい。
その為にも色々な手を考え、ようやくこれに決めたとした時、部屋がやけに静かなのに気が付いた。
嫌な予感がする。
思考を停止させた俺はこの後に脱ぐ筈であろう寝巻きを着、浴室を出た。


「ルキア?」
静かになった部屋に問いながらベッドの元へ。問掛けの答えはない。
そこには俺の嫌な予感が待っていた。
―まじかよ……。
ルキアは自身のベッドに横たわり、ゆっくりと規則的な息を繰り返していた。
肘、膝は緩く畳まれ、自身をより小さくしている。
―何勝手に寝てんだよ、俺の気も知らないで…。
中で暴れる焦りを無理矢理沈めながらベッドの縁に体を持ってきた俺は、
見えない方に顔を向けていたので、そっと頬に触れこちらを向かせる。
いったい俺はこの熱をどこに吐き捨てればいいんだ。嘘寝をしていてくれ。と小さく願う。
「…んっ……。」
その反応は睡眠を邪魔され、不快を表すものだった。コイツはマジで寝ている。
男と二人っきりの部屋で、何も交すものなく。
このまま起こしてやろうかと一瞬脳裏をかすめたが、
ルキアの安心しきった寝顔を見てしまい、そんな酷いことできなくなってしまった。
それを見ていると、ふと口許が緩んだ。
「俺だからそんな顔、見せてくれるんだよな?」
どこか自分を納得させるように呟く。
「しょうがねぇな。」
俺は人肌の恋しさか、そっとまだ濡れたルキアの前髪を掻き上げる。それだけに止めた。
まだ旅行は始まったばかりだ。
名残惜しく手を離し、電気を消す。そして自分のベッドへ入ろうとした時、
そうだ、と掛け布団をルキアにかけてやった。すると暑いのかすぐに体から布団を離す。
全くコイツらしいな、と俺は思わず笑ってしまった。
何も暑がっているのに掛ける必要はないな。とベッドに戻ろうとした時、
俺の目に飛込んできたのは、離したときに乱れたのか、ルキアのシャツは捲り上がり、
そして両胸の下半分を晒けだしていた。肝心のところは巧く布に引っ掛かり見えない。
それは今日は手を出さないと決心した矢先のこと。


やっぱ今日は厄日だ。




目が覚めたとき、昨日の雨は何だったのかというように刺さる日が窓から差し込んでいた。
昨日来たときはあれだけ憎たらしかった太陽も、今は再会できたことに俺は喜んだ。


イチルキハワイ旅行 二日目


起きるのが遅かった俺達は、遅めの朝食を取り早速念願の海に行くことにした。
浮かれる俺に対して、泳げないらしいルキアは気分が乗らないようだがそんなのは無視だ。
昨日は行こうとした途端雨が降るわ、良いムードになった時に外人に邪魔されるわ、
夜は夜で、先走る高ぶりを無視したルキアは先に寝てしまうわ、
その後のコイツの無意識の誘いに耐え抜くわ―。俺はよく頑張った。
沸き立つ青少年がここまで我慢したことは自参してやれる。


ホテルから歩き五分ほどして、俺達は潮の香る透き通った蒼の海に着いた。
「すごいな一護!こんな綺麗な海、見た事がないぞ!!」
散々海に行く事へ文句を垂らしていたルキアだが、
輝くように白い砂浜と、この雄大な海を目の前に感動しない筈がない。
隣ではしゃぐコイツを見て、やっぱ来て良かったな、と嬉しくなれる。
昨日は離れて聞こえなかった漣は何もかも浄化してくれる気がした。

シャツを脱ぎ膝まである長さの海パン姿になった俺は、
旅行に行く前に買わされたウサギの絵付きレジャーシートを天の下に広げ、荷物の置き場をつくる。
まだ十分空いたスペースに俺は座って辺りを見回した。
人は相変わらず片手で数えれる位が遥か向こうに。
この砂浜は全く人の手加えられていないプライベートビーチさながらの場所で、
後ろにある、俺達が宿泊しているホテルが作った簡易脱衣所とシャワー以外には何もない。
俺は事前に海パンを履いて来ていたので使わなかったが、ルキアは今そこで着替えている最中だ。
頭の中でルキアの水着姿を浮かべる。
きっと似合うだろう白い布と白い肌は厭らしく姿を映し出していた。
そんなことを考えていたからか、いつの間にか背後に来ていたルキアに遅れをとって気が付いた。
少し胸を鳴らし振り向く。するとそこには、期待を裏切る白とは真逆の黒が目に入る。
「ルキア、てめぇそれ俺のシャツだろ!」
そう、コイツは勝手に持ち出した俺の黒のシャツを水着の上から来ていた。
「着てはみたが…やはりあれは下着ではないか!!…だから着た。」
Lサイズのシャツは10才児並のコイツにとって、
勿論上はダボダボで、そして下は超ミニのスカートのようになっている。
ただその下から覗かせる太股は裾を引っ張り下げるが隠しきれず、恥じた顔をしていた。
「せっかく買ったんだから脱げよ。」
「いやだ。」
「どうしても?」
「ぜったいだ。」
全く埓があかない。
「言っておくが、黒だから透けんぞ。残念だったな。」
と、腕を組みながら勝ち誇った笑みを浮かべた。また腹が立つことを言いやがる。
シャツをひん剥いてやろうかとも思ったが、そこまでサディストじゃない。
だからといって耐える気もない。どうやってこのシャツを脱がせるか思考した。
しかし、太陽の熱が脳を鈍らせてしまう。良い案が浮かばず、ぼやける意識で思い付いたのはこれだけだ。
荷物の入った袋から日焼け止めクリームを取り、とりあえず自分の届く範囲を塗った。
一方ルキアは俺のしていることが理解できず無言で見ていた。
「…あ?これ塗ると日焼けしないんだよ。」
説明を聞き、納得したコイツに日焼け止めを向け、
「背中。塗ってくれよ。」
と頼んだ。
「自分で塗れば良いだろ。」
「だって届かねーだろ?」
「…まぁ。そうだな。」
渋々納得したルキアにクリームを渡し、背中を向ける。間もなくして背中に柔らかい感触が這った。
「うわ!汗でヌルヌルしてるぞ。」
「うるせっ。」


背中を撫でる小さな手は癒してくれた。こそばゆさもあるが、どちらかと言えば快感に近い。
もう少し続けてほしいなと思ったのだが、塗り終えたルキアは背をパンと叩き、
「終ったぞ。」
と、言った。その後ルキアも俺に倣って、顔周り、腕、足、
あくまで見せたくないのか、両手を袖から入れて体前面と。
しかし、ここでルキアは気付く。自身の背中はどうすればいいのかと。
必死に手を後ろに回すがシャツを着ていることもあってか、ほとんど意味がない。
困った表情のコイツを見て、待ってましたと助け船を出す。ただし泥船だが。
「塗ってやるからシャツ脱げよ。」
両手をシャツに突っ込んだ変な格好で振り向く。そして策にはまったのが悔しいのか怒りはするが、
「別に塗らんでも構わん!……というか、第一シャツを脱がないのだから必要ないな。そうだろ?」
と気が付き、また勝ち誇った表情をした。
俺の敗けだ。もう何も策は思い付かない、畜生め。
だがシャツの上からでも塗っておいて害はないだろう。
それにコイツの白い肌には必要なことが俺にでも分かる。
「わかったよ。脱がなくて良いから塗ってやる。」
「別にいらんといっているだろ。」
「お前知らねぇぞ。日焼け痛くて寝れなくても。」
少し誇張したが、それを聞いてすこし悩んでから後ろを向いてしゃがみ、
ルキアは袖から出した手で背中のシャツを僅に上げた。
何故かそんな仕草だけでも厭らしく見えてしまう。
「早くしろ。」
催促に従い、クリームを右手に広げてシャツの中にあるコイツの腱康骨辺りに掌を置いた。
「―冷たっ…!」
一瞬体をこわばらせたルキアの背の周りを撫でる。
俺と同じように汗ばんでいた小さな背中はあっという間に上半分を塗り終え、
下へずらして行く。すると脇腹辺りで別段大きく体を反らした。
「…ぅぁっ……」
―?!
俺がその声の意味を理解する前に、ルキアの背中は俺の手からすり抜け、正面を向いて俺を蹴飛ばした。
「貴様っ!そういう魂胆か!!このたわけが!!」
怒るルキアはそう言い放って海の方へ逃げるように行ってしまった。
いや、今回に限っては本当に誤解だ。頭がシャツを脱がす事しか考えていなかった為か、
冷静になればこちらの方がおいしいのではないかと思う。
が、そんなのはどうでも良い。俺は立ち上がってルキアを追った。

ルキアは波打ち際で俺を背にしていた。どこか本気なものを感じ少し気まずくなる。
ただ何もしないのも嫌なので、俺は声をかけた。
「おい、ルキア。」
無視。重い空気が満たす。俺はそれを振り払いながらさらに近付きルキアの横に立つ。
「ルキア!聞いて―」
「一護っ!!一体なんだあの黒いのは!?」
ルキアは声を上げて、海の浅瀬に指を向ける。怒っていなかったのか、と表情には出さず安堵した。
俺はコイツの指す先に従って視線を向けると、そこには確に水中に潜む黒い溜りがところどころ。
興味が沸き、確かめるために一人海へと進んでいった。足先からの冷たい海水が心地良い。
膝くらいまで入って、一番近くにあった固まりを取って水から上げる。
掌大のカリントウの化け物みたいなやつ。
「あぁ、ナマコだこりゃ。」
「放せ一護!毒を持ってるかもしれないぞ!!」
結構本気で俺の心配をしてくれているようで、しつこく制止を言い続けていていた。
「毒なんてねぇよ。もしあったら今頃死人出てるって。」
「そうかもしれんが…!!」
「そうだって。それに以外と感触良いぜ。こいつ。」
そう言いながら、ポイとルキアに向けて投げた。
黒い塊はコイツの足元辺りで落ち、浅瀬に飛沫が上がる。
すると血相を変えて、小さく悲鳴を溢しながら後退さった。
「うわっ!!投げるやつがあるか!!」
「そんな怒んなよ。」
海から砂浜に戻った俺はコイツの頭をグシグシと撫でながら笑った。
そんなに嫌いかナマコさんが、可愛そうな奴め。
と、浅瀬で沈んでいるナマコを見てふと思い付いた。
海水で体を冷やしたから頭が冴えるのか、俺はニヤリと笑った。
崩れた髪を直そうとしているルキアに気付かれないように、先程のナマコを手に取り、背後に回る。
「全く…」
そして一瞬の隙をついて、ルキアの着ているシャツの背中にナマコを入れた。
「ひゃぁっ?!?!」
ルキアの真抜けで裏返った声が溢れた。
何が起こったのか解らない本人は、背中に入った湿っぽくて気持悪い感触のものを取り出そうとする。
「きっ、きっ、貴様っ!!!一体何を入れた?!」
「なにって、ナマコ?」
背中の異物が何か分かった途端、更に必死になる。
しかし背とシャツの間で張り付いてなかなか落ちてくれなかった。
「はやく取れ!はやく取れ!!」
俺に背中を見せ、取ることを懇願するが、
「シャツ脱げば落ちるんじゃねぇ?」
と拒否をする。
「ふざけるのも大概にしろぉ!!」
水着になるのは嫌だが、それよりもこの異物を取り除くのが先決と判断したルキアはたどたどしくシャツを脱いだ。
すると背中からボテンと、水っぽい音をしてナマコが落ちる。そして間髪いれず、
「この大莫迦者がぁ!!!」
笑っていた俺の腹にまた蹴りが炸裂する。脇腹に入り、
頭から水に浸かり、目鼻に水が入り立ち上がった俺は咳き込んだ。
だが蹴られることも範疇の事。


「あっ!?わっ!!返せ!!」
俺は蹴られる時にルキアの手に持たれていたシャツを奪ったのだ。
やっと見えてきた目を開く―。するとそこには、自身の肌を晒すことに恥じらう表情のルキアがいた。
白く艶やかな肌。細く長い綺麗な手脚に、華奢でしなやかな腰、色っぽく見せるなだらかな肩。
下の水着の角度は若干急で、下半身の露出度が高い。上の水着は脇から回して付けるタイプなのだが、
試着しないで買ったのが原因か。少し大きめで緩そうだった。
しかしコイツの控え目な胸は水着の上からでも分かるように、つやっぽく張りがあり、綺麗だった。
じっと凝視しているのに気が付いたルキアは、
「見るな…!!」
と、膝を抱えながらしゃがみこんで体を隠した。
「もう見ちまったからおせーよ。―でも似合ってるじゃねぇか。」
素直に感想を述べると顔を俯かせてルキアは呟いた。
「…似合っているとかではなく、これは恥ずかしい……!!」
しょうがないな、と言う感じに俺は隣にしゃがんで、頭にポンと手を置いた。
「ここには知り合いなんていねーし、このビーチにだってあんな向こうにあれだけだぜ?
きっとあいつらだって見えねーし、恥ずかしがんなって。」
「しかし…」
俺は立ちあがって、
「またナマコ投げるぞ。」
というと、
「なっ…!やめてくれ!!」
ルキアが立ち上がったと同時に腕を掴んだ。
「これでしゃがめねぇ。」
俺はやっと勝ち誇った笑みを浮かべる。腕は持ち上げられると、緩い水着から中を覗かせそうになった。
それもあり、やがて観念したのか恥じらいで視線をずらし、ふてくされながら、
「もうっ…わかった!!隠さんから離せ!!」
と諦めたようだ。


こうしてやっと俺達の海水浴が始まる。


俺は深いところで頭まで突っ込んで泳ぐが、肝心のルキアはというと浅瀬で足を入れるだけだ。
一人で泳いでいるんじゃさすがにつまらない。というか意味が無い。
俺はルキアを呼んだ。
「なぁ、ここら辺浅いから。ここまで来いよ。」
そう言った位置はコイツの胸辺りまでの深さ。
最初は躊躇ったが、本当に浅いかを確認すると少しずつ前進してみた。
が、膝辺りまでを沈めるとそこで止まってしまう。
そういえば気が付くとコイツはさっきから終始無言だ。よっぽどの金づちなんだろう。
水面に立つ細い足は微かに震えていた。
―しょうがねぇな。
俺は乱暴に飛沫を上げながら浅瀬のルキアの方へ近付く。
どうやらコイツは無理矢理入れられるのかと思ったようで身じろいだが、
「待ってろ。」
と言って、横をすり抜けてシートに戻った。


急に戻ってしまい、待てというものだからどうしようもなく、
しゃがんで浅瀬の残波と遊ぶしかなかった。
はぁ、と、愁えの溜息が口から漏れてしまった。
「ルキア!」
「わっ!!」
鬱々とした気分の中突然声をかけられたかと思うと、
ルキアの頭に何かが弾力のあるものが当たる。足元に落ちたそれを取って眺めた。
「何だ?これは。」
「浮き輪だよ、知らねぇのか?それを使えば溺れることねぇ。」
昨日水着を買った時、とりあえず必要かと思って買っておいたやつだ。
まさか本当に使うなんて思っていなかったが。
「本当か?」
半信半偽のコイツはとりあえず俺に言われた通りに浮き輪を身に付ける。
思わず、本当にガキっぽく見えてしまい吹き出してしまった。
「何がおかしい!」
「何でもねぇよ。」
そう言いながら近づき、ルキアの腕を掴んで海へ向かっていく。
波に逆らい歩を進めコイツの膝元辺りまで浸った時、また立ち止まった。
「まっ…待て!」
いつも強気の姿はどこにいったのか、青くしたコイツの顔が目に入った。
「恐いんか?死神のくせに。」
「そ…そんなわけないだろぅ……」
否定はしてみるが消え入りそうな言葉は恐怖していた。
全く、水くらいで怯える死神がいるなんて誰が想像できるだろうか。
その背に掲げる名とのギャップが可愛らしく思えた。
それに感情がくすぐられたか、触れたいという衝動に駆られる。
「手間かけさせんなよ…。」
これ以上ダラダラしてると時間がかかるを口実に、俺はおもむろにコイツをお姫さまだっこをした。
「莫迦者!やめんか!!」
体制の恥ずかしさに抵抗するルキアを尻目に海へ進んでいく。
そして俺の腹辺りまで入った頃にルキアが口を開いた。
「なぁ一護っ、別に今日でなくても構わんだろ…?なぁ…」
自分を悟られたくないのか、引きつった笑みを浮かべている。
「だーめだって。死神様が泳げないなんて情けねぇ。」
俺はそれを軽くあしらって、ゆっくりと腕の中にいるコイツの体を降ろして行く。
「ひっ…!!」
尻が水に着いた途端、小さな悲鳴が溢らし体を縮こませた。ばつが悪そうに俺を睨みつける。
ただ、そういう態度が俺をあおっているとは知らないだろう。
「ほら、入るぞ。」
「ちょっ…待たんか…!!」
少しずつ沈む身の恐怖と海水の冷たさに、強く目を瞑った。
俺はそんな怯える姿をあえて見なかったフリをして、そっとルキアを中に入れた。
「なっ、大丈夫だろ。」
「……浮いてる?」
閉じた瞼を開き、今自身が溺れていないのを確かめる。
すると、体をこわばらせていたコイツの緊張が抜けていくのが分かった。
浮いているといってもまだコイツの足がつく範囲であるが、それでもこれは大きな一歩らしい。
「…絶対…放すでないぞ。」
自然と表情の和らぐルキアは浮き輪と俺の手を掴んで言う。


暫く泳いでいるうちにルキアも慣れたのか、少しずつあっちいけ、こっちいけと命令する。
ただコイツの足がつく範囲に限りだが。
命令ばかりされるのも嫌なので、俺は少し遊ぼうと思った。
「次はあっちだ!まだ行ってないだろ?」
興味に彩られた瞳が俺を催促する。
「行きたいのか?」
「うむ。」
楽し気に頷くルキア。そこで俺は掴んでいた手をパッと放した。
するとはしゃいでいたのから一変、目を見開いて恐怖に声を荒げる。
「こら!放すなと言っただろ!!」
溺れの不安から掴もうと伸ばしてくる小さな手を、俺は避けて、
「命令ばっかしてないで一度は一人で行ってみな!!」
と、浮き輪を向こうの方へ押した。すると浮力に任せてみるみると俺から離れていった。
「い、一護っ…!!」
恐怖で一色のルキアの顔は本当に泣き出しそうで、声は明らか震えている。
内に罪悪感が芽生えたが、いつまでも泳げないままでは駄目だ。
荒療治かもしれないが俺は心を鬼にした。とはいっても5m程しか離れていない。
「ほら、ここまで泳いでこい。」
「ふざけてないで…っ……本当は、私は泳げないんだ…!!」
「だから泳げるようになんねぇと、な!」
両手で浮き輪を抱くように掴む。ついに瞳にはうっすらと涙を浮かべているのが遠目でも分かった。
良心が疼き、そして恐がる姿に別のものが疼き、思わず俺は手をルキアの方へ差しのべ、距離を縮めてやった。
そしてルキアは暫く黙ったままであったのだが、やがて決心したのかばた足を始めようとした、その時だ。
一際大きな波がルキアを飲み込んだ。俺もその波の勢いに体制を崩して後ろに倒れる。
浅瀬なので俺はすぐに顔を海から上げることができた。
むせ返りながらも急いですぐに周囲を見回す。海面はまた緩い波に戻っていた。
しかし砂を巻き上げ透き通った海は濁っており、そしてそこにルキアの姿はない。
緊張が高まる。一秒が長く感じ、俺は首を絞められるような息苦しさに襲われた。
挙動する自分を戒めながら、目を細めて遠くを見ると、
30m位先の方にルキアの着けていた浮き輪が今の俺をあざ笑うように呑気に浮かんでいた。
―俺のせいだ…!!泳げないのに俺がふざけたから…!!
そんな後悔の念を抱いている暇はない。
しかしこの広い海、あそこまで流されているなら一体何処にいるんだ!?
思わず泣きごとを言いそうになる自分を抑え、どうしようもなく、まずは浮き輪の元へ泳ごうとした時だ。
先程までルキアの居た場所から細かい泡沫が浮かんでいる。
それから間もなく、探し続けていたルキアが現れた。
浮き輪を無くし、浮かぶ術も無くし必死に空気を求めて顔を上げ、
手は中空を仰ぎ、欲する空気だけを掴む。
「ルキアっ!!」
俺はすぐにルキアの元へ急いだ。


差しのべた俺の手をしっかりと握る。それを俺はたぐり寄せ、強くルキアを抱き締めた。
ルキアの腕は俺の手から首へ回し、しがみつく。そして俺の顔の横でルキアは咳き込んだ。
「大丈夫か?!」
勿論そんな筈がない。少しして息を整えたルキアは首に回した手を両肩に置き、正面に目と目が合う。
最初は、思いっ切り睨まれて張り手の一つや二つ覚悟していた。
しかし予想は裏切らてしまった。俺の顔を見たルキアは緊張の糸が切れたのか、くしゃっ、と表情が曇る。
そしてまた俺の首元に腕を絡ませ、俺の肩に顔を落とす。そしてやっとルキアから擦れた声が出た。
「たわけが……」
そう言って、抱きしめる背が不規則に震えて始めた。
むしろ引っ叩かれる方が全然良かった。
「すまねぇ………っ!!」
俺に言えることはこんな言葉しかなかった。謝る言葉は空っぽに聞こえるかもしれない。
だからその代わりに俺は強く抱きしめ、ずっとこのままでい続けた。



数分間、長くも短くも感じられない。俺の頭の中は自己嫌悪で麻痺していた。
一方ルキアは次第に落ち着きを取り戻したのか、顔を俺の方に向けた。
動揺と気まずさに言葉が詰まりかけたが、なんとか絞りだした。
「…大丈夫か……?」
「これが大丈夫なわけないだろう。」
俺の沈んだ声に対してルキアの声は普段と同じだった。
目線すら合わせられず、次も見付からない。
俺がくぐもっているのに気が付いたルキアは、ふっ、と微笑し俺の代わりに言葉した。
「まったく…眉は上げておけと言っただろ。らしくないぞ。」
胸がすかれた感じがした。コイツなりのいじらしい気遣いは何より俺を救った。
「すまねぇ…ホント。」
俺はやっと目を合わせることが出来た。
その瞳はもう怒りも哀もなく、いつもの済んだ色を取り戻していた。
「…浮き輪も流されたことだ、そろそろ上がるか。」
「あぁ、そうだな。」
と、ルキアに従って砂浜に上がろうとした時だ。
「…?……!!待てっ!上がるな!」


急のルキアの制止に驚き、立ち止まる。
「どうかしたか?」
ルキアの顔を見るとどうしたのだ、頬を赤くしていた。
合わせる視線も次は外され、宙を泳いでいる。
「何か言えよ?」
そう言われて戸惑った後、ルキアは俯きながら申し訳なさそうに呟いた。
「…なおしてくれ。」
「何を直すんだ?」
ルキアは何も言わない。俺は外されたコイツの視線に疑問を感じ、その方向へ移す。
溺れたときに乱れたのだろう。上の水着がズレていた。そして俺の位置からは、左胸の先端を覗かせていた。
それを目撃した俺、目撃されたルキア。一気に感情は紅潮する。
「わっ…!分かっただろ?!」
「…は?!っていうか自分で直せよ!!」
そこでルキアはまた沈黙する。一体どうしたんだ。
本当なら外してしまいたいのだが、先程の一件もあり素直に直してやろうと、
俺の右手をルキアの背から離した瞬間だ。
支えが一つ失われルキアはバランスを崩した。
「うわっ!?」
必死に、苦しいくらいに俺の体へすがりつく。そして今頃になって気が付いたのだが、
ルキアの足は俺の腰にもしっかり絡ましていた。
―もしかしてコイツ、
自分で直さない理由が分かった。
―手ぇ離すのが怖いんじゃないか?
だいたい俺は、コイツに言われるまで水着がズレていることは知らなかったのだから黙って直すことはできた筈だ。
でもわざわざ俺に頼むということは―。
口には絶対出さないが、自身の中では声に出てしまっていた。
―可愛すぎじゃねぇか…!?くそ!!
俺の下半身はみるみる膨張する。というかあんなの見せられた上に、
その愛らしい姿を見て正常でいろ、という方が無理だ。

昨日から溜り続けていた我慢はもう限界だった。


「おい…はやく――!?んっ!あっ…はぁ……」
熱に侵された俺はルキアの唇を奪った。潮に濡れた唇はしょっぱい。
「…んくっ…ふぁ、、一護…っ!こら、やめろぉ…!」
何度か口内に舌を侵入しようと試みたが、歯を閉ざしたルキアは許さない。
しかたなく俺は首筋へ目標を変えた。耳元の顎のラインから首に舌を這わす。
するとビクっと体を緊張させた。そのまま耳たぶを甘噛みして耳元で呟く。
「…いやか?」
荒く湿った俺の吐息だけでコイツはまた反応を示した。
「いっ、嫌だ…!」
体は素直に悦びの感情を示しているのに。耳の穴に舌を侵入させる。
妨害するものがないから容易だった。舌先で穿ると色欲をそそる声があがった。
「うぁ…っ!!やめろ…」
「どうしてだよ。」
俺はそう言いながら、ルキアの弱い耳の裏を舐めた。さらに高い甘声が上がる。
「あぁ…っ……だって…人がいる……、」
コイツの見解に、俺は周囲を見回す。
あぁ、あれか。この広いビーチで俺達が来たときからいた奴ら数人だけ。今はかなり向こうで寝ている姿が見えた。
ただこの距離なら起きても、二人とも胸くらいまで入っているし気付かないだろう。
それに外で、しかも海の中なんかで痴態を興じるなんて誰が想像できるだろうか。
「大丈夫だって。あいつらは寝ているし、気付かねぇ。」
「関係ない!そもそも外だし私は嫌だ…!早く上がるぞ!!」
どうしてもコイツはその気になってくれないらしい。
しかし一度火の着いた俺にはこれだけの水があっても消えることはないだろう。
俺はそっと右手を、ズレているルキアの水着に手をかけ、直そうとする。
ルキアは諦めてくれた、とでも思ったのだろうがコイツの予想に反して俺は乱暴に胸の水着を取り去った。
「えっ―?!いやっ!一護!!何をするんだ!!」
恥ずかしくて堪らない。しかし、露になった胸を隠したくても、両手を外すとバランスを崩すため外せない。
透明度を取り戻した水面にルキアの小振りの白い胸が浮かぶ。
顔を上げ、俺を見たルキアは一番に顔を真っ赤にして、怒りの混じった涙を浮かべる瞳で睨んだ。
それを尻目に奪った水着は俺の水着のポケットへ突っ込む。これでもう取り返せない。
そしてまたコイツの思惑と違うことをしてやる。
「わかったよ。上がりゃあ良いんだろ?」
俺は厭らしい笑みを浮かべて、抱いたまま砂浜へ上がろうとする。
「たわけが!!上がるなっ!上がるなぁ!!」
予想通りの反応に面白くなった。
「なんだよ。上がりてーの、上がりたくねーの?それとも俺をじらしてんの?」
今回、俺に全ての主導権がある。
「…貴様!地獄に落ちるぞ!!」
それは何故か?


「なら、てめーは海に落ちるんじゃねぇ?!」
俺の首に巻かれていたルキアの腕をほどいた。するとまたバランスを崩したコイツは、
「きゃっ!!」
と言って海に体が落ちそうになる寸前、片手はギリギリに俺の後ろ首にひっかけて体勢を戻し、強く俺を抱き締めてきた。
「なっ!ルキアっ?!」
思った以上に体を密着させた為、俺の胸板に二つの柔らかい感触とその柔らかさに反する突起が触れた。
普段にない感触がやけに興奮させる。
ルキアも遅れて自分のそこが俺の上でどうなっているか気が付き、離れようとしたがそれを許さなかった。
「こらっ…!離さ……、」
そこで言葉が詰まる。決まり悪そうに歯を食いしばる小さな背中を抱き締め、胸と胸を密着させる。
自分の鼓動が左から、右からは相手の鼓動が。互いに相手が速くなれば、
それに催され自分のが速くなり、その変化にまた相手が速くなり―と。
ルキアがバランスを崩さないように、しっかり左手で自身に押し付けながら、右手はコイツの顔に触れ、
恥ずかしそうに俯いていた顔をもたげて、俺はもう一度唇を重ねた。
「んっ…はぁっ………」
最初は歯でとだされていたが、次第に互いの上気した息が理性を痺れさせ、
自然に小さく空けられた口内に舌を侵入させた。
コイツの唇を貪りながら俺は、僅かに胸とを離す。
潰れていた小振りの胸は形を取り戻し、先端が俺のに触れるか触れないかの距離におく。
そしてそのままルキアの胸を俺の体に這わした。
「ぅあっ!?」
俺の胸板で擦れるルキアの先端はこそばゆかったが、
触れているものがそれだと思うと快感以外に何でもなかった。
ルキアは先端を遊ばれる快感に体を張りながら、声が漏れたことへの羞恥が身に染みた。
俺は自身との体の感覚をもう少し空け、左の胸に手を触れ、
そっと指を動かすと水に滑りながら形を変える。
ルキアはこみ上げる快感に、頬をほてらせキュッと目を瞑り、下唇を噛みながら堪えていた。
目を閉じているから俺が見ているのに気が付いていない。
その恥ずかしげだが恍惚とした表情はとても麗しかった。
その表情を壊したくて、俺は先端の突起を緩く摘む。
「あぁんっ…!」
せっかく頑張って絞めていた口許から悦びが零れた。
俺はもっと声を聞きたくて、執拗に左胸へ集中攻撃を浴びせる。
俺の親指と人指し指の間で、コイツの感情を伝える突起は、固く熱くなっていた。


この時になると、ルキアの理性の壁は倒壊を始めた。
左ばかりではもどかしく、右胸にも同じように快感を味合わせてあげたい。
そう思って不安定の中、ルキアは右胸へのおねだりしようと体を曲げた。
それは俺の愛撫で快感を貧ぼる、他人には絶対に見せない乱れた自身を、
俺にだけは見せてくれる―独占欲に心は満たされた。
「なんだよ。結局お前もじゃねぇか。」
「…うぁ!?ふ、ふ、ふざけるな貴様!!」
俺の言葉で理性を取り戻したのか、すぐに体を戻し、今した無意識の行動にコイツは赤面する。
それが面白くって可愛くって。だから俺はコイツのおねだりに答えてやることにした。
俺は水面下にあったルキアの体を持ち上げ、上半身を外気に晒させる。
「なっ!?降ろして―…っく…ぅ!!」
素肌が晒された事と、不安定になってしまったことに脅えていたが、
慰めてやると素直にルキアの体は機嫌をなおした。
眼前に置かれた愛しい右胸に頬を擦る。顔の上に乗せられた先端は固く、俺の顔をなぞらせる。
「くっ…!あぁ!!一護ぉ…んっ…降ろしてくれ…」
俺は待ちかねたように頂から突き出す桃色の突起に口を付けた。
「うぅっ…」
敏感に体を張り、よがらせる。最初はくわえるだけだったが、次は舌で転がす。
俺が転がせば転ばすだけ、勢いを増してルキアはどんどん落ちて行った。
じっくりと両胸を吟味した後、もう一度ルキアを水中に戻し抱き抱える。
俺の胸に当たる二つの突起は、確実に最初より固く張っていた。
水の中に戻されたからか上気したコイツの体は身震いをした。
「冷たいか?」
「…あぁ。」
「でもよ…―、」
俺は、冷やされて理性を取り戻しかけていたコイツに追い討ちをかける。
「ココは暖かいぜ?」
片手は水着越しにルキアの恥部に触れた。

「ひぁっ!!」
俺の腕からすり抜けてしまうのではないかと言う程に激しく体が跳ねた。
明らかソコは肌よりも熱を持っていた。布とは違う質感と海水、そして水着から染み出している、
海水とは違う別の水が俺の指を円滑に滑らせる。伸縮する水着は容易にルキアの恥部の形を指に伝えた。
その敏感な内側には触れず、外側に指を這わす。
「いやっ…ぃや…だ…ぁ…」
波のように打ち寄せる快感の中、力無くルキアは言葉だけで抵抗をしてみせる。
本当は俺の腕をソコから離させたいようだが、俺にしがみつくための自身の腕は外せない。
そんな葛藤をしながら、いやおうなく続けられる愛撫になされるがままで、
『快感』と『自身への背徳感』でいっぱいのコイツに、俺は言葉に出来ない興奮を覚えた。
そして俺は自身の手をルキアと水着の間に突っ込んだ。
「ふぁぁっ!?!」
ルキアはさらに体を弾ませた後、溶けるように俺の体に寄りかかる。
というか本当に溶けていた。突っ込んだ手にはまず、尋常でない熱、
更に奥へ進めると溶け出したコイツの感情の蜜でぬるりと指を滑らせた。
そこで俺はすぐさまその手を引き抜いた。これからの行為に身を構えていたルキアは拍子抜けしたようで、
だるそうに体を正面に起こして、何故続けてくれないのか?と言いた気な艶かしい瞳で哀願しているようだ。
その眼前に引き抜いた手をかざす。すると海水はサラサラと流れていくのに、
僅かに残されたぬめり気のある液体が指をゆっくりと伝う。
「すげぇな、お前。」
酷いことを言っているのかもしれない。
「…もう…いやだぁ……、どれだけ貴様は……」
そう言ったルキアは辱めに耐えきれず思わず滴が頬を伝った。
だけどこれは悲しくてなのかときけば、答えは違う。コイツは俺の一言一言に敏感に反応し、それを楽しんでいる。
コイツをもっと悦ばせてやりたい。
滴を舌ですくい、そのまま唇へ優しくキスをした。
「ルキア…。溺れたくなかったら、しっかり掴まってろよ?」
俺は両手を水中に沈めた。安定を失ったコイツは俺の言葉通りにしっかり手、足を俺に絡めた。
しかし俺は言ってることの逆でコイツの足を外した。
「いっ?!一護!!」
今繋ぐのは己の手のみ。支えを失ったルキアは自由を奪う浮力への恐怖色の声をあげる。
俺は手探りで暴れるコイツの水着の両端に手をかけ、一気に引き下ろした。
そして、この時ルキアはその華奢な体を惜しげもなく海に見せつけることになった。
下の水着も海パンのポケットに入れ、次にコイツを抱き寄せようとしたが、
先に恐怖から逃げるためにコイツから俺に抱きついてきた。
するとさっきは胸が密着していたが、今度は自身の恥部までも俺の腹に密着させた。
驚きと恥ずかしさに似た喜びが腹から伝わる。
コイツも壊れ始めているが俺もそろそろ壊れそうだった。
が、ギリギリの精神力で無茶苦茶にしてやりたい衝動を抑え、
コイツを優しく抱き締めると、先程みたく俺に体重を預けてきた。
俺はコイツの期待に答えるために、また片手を沈ませて、そしてソコへの愛撫を開始した。


「…ふぁ…はぁ……」
指で撫でる度に空気の篭った声が俺の耳にかかった。
俺はコイツの芽を皮から解放し、弾いた。
「うぁんっ!!」
神経を貫くような鋭い感覚に声を裏返して鳴いた。そのまま芽を指で挟む。
ソコは既に固く自身の存在を示し、いじめられるのをずっと前から待っていたようだ。
本当なら顔を近付けてやりたいのだが、
出来ない代わりに摩ったり、弾いたり、摘んだりと飽きさせないように繰り返してやる。
すると下半身は痙攣し、体も震わせ始めた。
いつの間にか俺の首に回していた筈のコイツの腕が俺の肩に置かれており、その手に、ぎゅっと力が入っていた。
おかしくなってしまう―ルキアは治まらない欲望に身を委ねてしまおうとした時だった。
手を止められた。
絶頂を向かえる瞬間。白みだした視界が色を戻し、力が抜けていく。
なのに頭と下半身は疼き、燃え尽きられないことが悲しくてしょうがない。
「いちごぉ…!!」
あと少し、あと少しで果てられるのに。ルキアは情けない、駄々をこねるような声をあげてしまった。
「どうしてほしいんだよ?」
俺は肩で蹲るルキアの顔が見えるように向かせて問掛けた。先程までの快感に濡らしていた瞳が弱々しく睨んだ。
「いい加減にしろ……!!」
「なら、やめようか?」
俺はその態度に気にくわなかったかのような、手を外すような素振りを見せた。
「えっ!…ちょっ…?!」
「ちょっと、なんだよ?」
ニヤニヤ笑う俺の反対に、唇を噛み、侮辱に耐えるコイツがいた。
だがコイツの中の痴情はもがき求めてしまう、一瞬間の沈黙の後、やがて観念したようだ。
「……頼むから……その……して…くれ……」
俯きながら消え入りそうな声を絞りだすが、俺もまだ引かない。まだコイツをいじめたかった。
「…何をだ?」
もう耐えるのは限界だった。顔を最高潮に染め、恥ずかしさでまた視界が涙で歪み出した。
さすがの俺も罪悪感にさいなまれた。
俺はその罪を滅ぼすようにまた唇にキスをする。
「わかったよ……」
そして俺は、海パンの間からやっと自身の感情を取り出した。
もう限界まで膨張し、痛さまで感じるくらいだ。その痛みを治めるためにも、俺はコイツの期待に答えなきゃならない。
水中に沈むルキアの太股を掴み、左右に割る。
「ほっ、本当にここで―…!?」
「なに今更言ってんだよ。俺だって耐えれねぇ。」
俺の上向いた愛欲をルキアの受け口にあてがう。
すると俺の先端にコイツの熱を、そしてあてがわれたことでさえ、僅かにソコが震えていた。
―だめだ。


刹那、俺は無心でコイツの中へ自身を埋めていった。
「…ああぁぁぁっ!!」
果てる瞬間までいきかけたソコは俺の侵入を歓迎してくれた。
熱く湿った肉壁をかき分けながら最深部に到着する。一気に沸いてくる快感に思わず唸ってしまった。
きつく、だけど優しく締め付けるソコによって、動かずにでも果ててしまいそうだ。
一方では、弾かれる刺激とはまた違い、
ジワジワと湧く気持良さにルキアは酔いしれ、さらに味わいたく無意識に下半身に力が入る。
俺はゆっくりと腰を動かす。その不安定な運動に恐怖を覚えたルキアは、俺を強く抱き締めた。
「うっ…あっ!あっ!!…んっ……!」
動きに合わせてコイツの声は弾む、そして水面からは俺達の情から僅かな波が起きる。
またコイツの胸は俺の体に擦れ、互いに快感を与えた。
「てめぇ…!そんな強くしがみつくな、動きにくいっつーの…!!」
「だってぇ…!!」
頬を赤らめ、涙が溢れそうな瞳で見つめるコイツは、俺の要求に答えるどころか更に身を寄せてきた。
「ガキじゃあるまいし怯えてんじゃねぇ…!」
「…餓鬼じゃないぃ……んっ!!」
俺はコイツに文句を言わせないように、唇を塞いだ。
「っ…やべぇな…!」
引き抜くと海水がソコを冷やすが、その分コイツの熱さが直に伝わり、それが更に気持よくさせた。
「っく…!…もぅ…おかしく……なってしまう…!!」
動きは次第に早くなる。俺もコイツも限界が近いようだ。
「ルキア…!イクって言えよ…!」
飛びかける意識の中、小さなお願いをしてみた。
今まで一度もこんな卑猥な言葉を聞かせてくれたことがなかったから、聞いてみたかった。
「いっ…ぃやっ…!だぁ…うぅん!!」
毎度のことだが断られた。俺はそれに不服を申し立てるようにさらに激しく打つ。
「はぁっ!!そんな…動く奴が……!」
そんなことを言うが、この激しさがさらに互いの快感を上昇させた。
またルキアは体を震わせだし、体に力が入っている―近い。
「ルキアっ…!もう…俺…!!」
「あっ!うぁっ!!一護…!私も…っ…一護ぉ!!…ふぁっ……!!」
ルキアは空気の篭った甘声と共に、弓なりに体をしならせ果てた。
その時の乱暴に締め付けてくる肉壁に耐えかねて、俺は精を出せるだけルキアに注いだ。


荒い息はどこへ行ったのだろう。懐かしいものになっていた。
俺の鼓動も、右胸から聞こえる相手の鼓動も今の波のように穏やかだった。
「…なぁ一護…。」
ルキアがまた頬を薄紅に染め、静かに問う。
「あ?」
俺はわかってるのにとぼけた。こいつの言いたいことはわかっている―。それは、
「貴様…早く水着を返せ!!」
「いいじゃねぇかよ、たまには。絶対普段お前こんな風に抱きついてくれねぇし。」
「莫迦者が!!また貴様に熱が戻ったらどうする!!私は絶対後免だっ!!」
渋々俺はコイツに水着を着させてやり、海を上がることにした。
ただ、今度も海には絶対行こうと俺は心の中で密かに誓った。


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