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朽木ルキア大ブレイクの予感パート9 :  875氏 投稿日:2005/05/10(火) 00:00:14


『やまない雨』


時折、夢を見る。
さあさあという雨の音が耳の奥で響いている夢だ。
それ以外は何もない。
雨粒は見えず、体を濡らす冷たさも感じない。
闇の中、ただ雨の音だけがこだまする。幻のような雨だった。
その夢を見ると、目を覚ましたとき決まってどこからともなく濃い血の臭いがした。
その臭いが体に染み着いていくようで、首筋が粟立つ。やがて口の中に鉄錆の味が広がっていく。

錯覚だとわかっていても、いつも吐き気が止まらなかった。

夜半に降り始めた雨は、予報によれば明日まで降り続けるらしい。
明かりを落とした部屋の中を、かすかな雨音が満たしていた。


微かな悲鳴が聞こえたような気がして一護は目を覚ました。
半覚醒のままぼんやりと部屋を見渡す。見慣れた自分の部屋だ。変化はない。
雨雲に遮られ月明かりは届かず、いつもより暗い部屋。夏が近いにもかかわらず少し肌寒いのはたんたんと窓を叩き続ける雨のせいだ。
悲鳴と思ったのは気のせいだったのだろうか。それとも犬でも吠えたのが聞こえてきたのだろうか。
いずれにせよ、寝なおそうと寝返りをうつ。
ふと、押入れに目が留まった。
ただの押入れではない。そこは二ヵ月程まえから押しかけ居候の住まいと化している。

「ルキア、起きてるか?」
返事は期待していなかったが、身じろぎする気配があった。
「今、なんか聞こえなかったか?悲鳴みたいな」
「知らぬ」
一護の言葉をさえぎった声は、あまりにか細く頼りなげだった。
意外だった。こんな弱々しいルキアの声を一護は初めて聞いた。
「おい、どうした」
不審に思い、襖をあけてさらに驚く。

ルキアは泣いていた。見開かれた瞳からは音もなく涙がしたたり落ち、頬を濡らしていた。その涙を拭おうともしない。
嗚咽ひとつ立てず布団の上に半身を起こし、全身を強張らせていた。
「なに泣いてんだよ」
「泣いてなど・・おらぬよ」
不思議そうに一護を見るルキアは強がっているようには見えない。本当に泣いていないつもりなのかもしれない。

張り詰めたようで、だがどこか虚ろな瞳。ルキアの心はここではないどこかを見ていた。

一護はがしがしと頭を掻く。
「ったく・・」
ひとりごちると、無造作に押入れからルキアを引きずり出し、軽々と抱き上げた。
「なっなにをする!?」
面食らったルキアを無視してそのままベッドにもぐりこむ。
「怖い夢でも見たんだろ。一緒に寝てやるから、ゆっくり寝直せ」
乱暴に涙を拭ってやり、抱き寄せる。小柄な身体は一護の腕にすっぽりと収まった。
一護に他意はない。ぐずる妹をなだめるのと同じつもりだった。
だが抱き寄せた後、己の不覚を悟る。

腕から伝わる、瑞々しい弾力を持つしなやかな肢体はなんだ。
肌から匂いたつ、甘やかな芳香はなんだ。

いま一護の腕の中にいるのはまぎれもない「女」だった。

(って冗談だろ!?なんで反応してんだよ。おちつけ俺!静まれ俺!)
一護の葛藤も知らず、ルキアはその額を一護の胸に押しあて、涙の混じった声で呟いた。
「・・・雨がやまないんだ」
「あ?」
「ずっと耳の奥で・・」
それが現実に外で降っている雨ではないことは明らかだった。
「ずっと私を責め続けている」

ふいに一護の脳裏に母の最期の姿がよぎる。
雨が降りしきるなか、己をかばって死んだ母。冷え切った体の重さと雨に流される血の赤さを今でも鮮明に覚えている。
忘れられない雨の日。耳の奥に、記憶の底に時間を止めたあの日がある。

そう、一護はルキアと同じ雨音を知っていた。

ルキアにもあるのだろうか。取り返しのつかない過去が。悔恨と自責で眠れない夜が。
抱きしめた肩が微かに震えている。
「泣くな」
「泣いてなど・・」
「ウソつけ」

同じ心の傷を感じた。急速に愛おしさが湧いた。
例えそれが同じ傷を舐めあうような、慰めあうような愛おしさでも。

気が付けば口付けていた。衝動的な自分の行動に驚く一護を尻目に、ルキアは自嘲する。
「血の味がするだろう、私の唇は」
「しねえよ。そんなもん」
「私はする。あのときからずっと」
ルキアの指すあのときがいつの何を意味するのか、一護は知らない。
それでも、否定したかった。
こんな、自分を傷つけるような笑い方をするルキアを見たくなかった。
「しねえ」
再び触れたルキアの唇は柔らかかった。
「よせ・・んっ」
身をよじるルキアのあごをつかみ、強引に唇を奪う。薄い唇をねぶり、舌先で歯列をなぞる。小さく喘ぐルキアを無視して口内を犯した。
「さわ・・るな、血のにおいがうつるぞ」
見当違いな気遣いに腹が立った。
「うるせえ。どこからするっていうんだよ!第一血のにおいがするっていうなら俺だって同じだろっ」
母の血に、虚の血に、己の血に、塗れている。
「違う!お前はっ」
「・・違わねえだろ」
グランドフィッシャーとのことは記憶に新しい。
ルキアの紫暗の瞳が、言うべき言葉を探すようにさ迷い、そして失敗した。
黙したルキアのシャツをまくり、素肌に触れた。
「いっ一護!」
首筋に口付け、さらに耳の輪郭をなぞる。耳朶に甘噛みする。
「っあ・・」

軽くはねたルキアの腰に腕を回す。細い腰は片腕で容易に抱きとめられた。
シャツのボタンをはずし、小振りな乳房を空に晒す。その頂を口に含むと、ルキアは小さく鳴いて一護の腕をきつく掴んだ。
冷えた手がむしろ一護を興奮させた。
のけぞった首筋は夜目に白い。まるで仄かに光っているようだ。
その光に近づきたくて、一護は真珠色の肌を撫でる。
頬を摺り寄せ、舌を這わす。胸を合わせ高ぶる鼓動を確かめる。

一護は己が溺れていることすら気付かず、夢中でルキアをかき抱いた。

しかし秘所に指を伸ばそうとして、一護はぴたりとその動きを止めた。
ルキアは抵抗らしい抵抗をしなかった。
だが、かといってこのまま一線を越えていいものかどうか。
理性と本能の板ばさみになり硬直してしまった。
しかしこのままでは収まりがつかないのも事実であった。
「一護・・」
切ないような、息苦しいような、だがどこか嬉しいような、奇妙な思いがルキアを支配した。同時に罪悪感に似た気持ちもあった。
やめようと思えば、やめられることもわかっていた。
突き放し、気の迷いだと諭して押入れに戻ればいい。

だが卑怯だと分かっていても、いまはひどく人肌が恋しかった。

ためらう一護の背にルキアは腕をまわした。
「貴様の好きにしたらいい」
その囁きは決して投げやりなものではなく、はっとするほど柔らかだった。
「・・・馬鹿野郎。あおるんじゃねえよ」
意表を突かれ歯軋りする。
たかが外れた。


しっとりと濡れた秘裂の輪郭をなぞる。
指を挿し入れるとそれに絡みつくように蜜があふれた。
「ふ・・あっ」
ルキアは異物感に息を乱した。声を押し殺し、体を突っ張る。
小さな悲鳴はいつのまにか甘さが勝った。
華奢だが張りのある腿を抱え上げ、一護は充分に潤った入り口に己をあてがう。
「加減なんかできねえからな」
無遠慮に押し入ってくる若い熱にルキアはたまらず声をあげた。

なにもかも違うのに。

髪の色も、瞳の色も、頬をなでる手も。顔立ちだってこんなに幼くはなかった。
なにより、あの人はこんな風に私に触れはしなかった。
なのになぜ、こんなにもあの人の面差しと重なるのだろう。
「ルキア・・」
ああ、声は少し似ているかもしれない。
こんな熱を帯びた声で私を呼んだりしなかったけれど。

あんな夢を見たせいだ。でなければこんなに思い出したりはしないのに。

愛しいと苦しいはひどく似ている。


情事の最中に他の男を思い出す不謹慎な余裕も、すぐに内で暴れている熱に乱され崩される。
ルキアは追い立てられるように夢中で一護の背に爪を立てた。
高まる熱を持て余し、すがるように口付けを求めた。
のしかかる体の重さの確かなぬくもりと、曖昧で陽炎のようにゆらめく愛おしさに気が狂いそうだった。
「ふ・・あっ一護・・もう、も・・だめ、だ・・あっ」
「ん、ル・・キア」
「やあっ、いち・・ごっ・・一護ぉ・・んあぁっ」
名を呼ぶのが精一杯だった。

「なんだ?神妙な顔をして」
情事の余韻も覚めたころ、冷静さを取り戻したルキアに対し、一護はいささか落ち着きがない。
ベッドの上に胡坐をかき、まともにルキアの顔を見られずそっぽを向いている。
「あー、そのなんだ。何も考えずに中に出しちまったけど・・その・・(ごにょごにょ)」
「ん?ああ、所詮義骸だ。孕みはせぬよ」
「・・・・・。ふん、そういうもんか」
「・・・・?」
「・・・・・・・」
「なんだ、ちらちらと。私の顔に何か付いているのか?」
「あ、いや。俺とおまえの子供ってどんなかなと・・」
「ぶっ!」
間髪おかずルキアは吹き出した。真夜中でなかったら腹を抱えて大笑いしていただろう。
思わずこぼれた本音を笑われ、一護はきまりが悪い。
どうもルキアの前だと隙が多いようだ。
それでも一護はいつものように怒鳴りはしなかった。むっつりとへの字に口を結んではいたが、必死で笑いをこらえているルキアの頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「笑ってろ。そのほうがましだ」
仏頂面の耳は赤かった。
「一護・・」
ルキアの目頭が熱くなる。胸の奥があたたかいもので満たされていく。
「おい、泣くなって」
「たわけ。これは笑いすぎたせいだ」
目尻に溜まった滴を指先で払い、ルキアは微笑んだ。

自然、二人は口付けを交わす。
熱を高めるためのものではない、そっと唇をついばむ優しいキスだ。

一護はルキアを抱き寄せ、そのまま布団に包まる。
ルキアは凪いだ心のまま一護の腕に頭をあずけた。
腕に鼻先を擦り付けるそのしぐさはひどく幼く無防備で、頑是ない子猫を連想させた。
「もう寝ろ」
「・・ああ」
ルキアはそっと瞼を閉じる。



二人のなかの雨は降り続ける。
やむことは決してない。
それこそが故人が生きていた証であり、心を残すということなのだから。


ただ今夜だけは安らかな眠りを。
「おやすみ」



(完)