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朽木ルキア大ブレイクの予感パート9 :  844氏 投稿日:2005/05/08(日) 01:53:04


『日番谷ルキア』


己の執務室へ真っ直ぐに向かっていた日番谷は、普段滅多に目にすることのない組み合わせの二人の姿を目に留めると
珍しいものを見たとばかりに首を傾げながらその足を止めた。

「松本?今日はもう上がりの筈だろう。こんな所で何してる?」
「あら、隊長」

言いながら首を巡らし日番谷の呼びかけに応えるのは十番隊副隊長、松本乱菊。
そうして女性にしては割合長身と取られる彼女の身体の影から続いて顔を覗かせたのは、
十三番隊隊員の朽木ルキアであった。

「日番谷隊長…、お、お疲れ様です」

それまで乱菊との会話に集中していたのであろうか、突然の上官の登場に若干戸惑い気味の表情で
挨拶を述べる相手に対し「あぁ」と軽い返事を返すと、視線を上げ再び己の副官に最初に口にした質問を投げかける。

「お前、今日は早番の筈だろう?立ち話するんならこんな隊舎に近い道端じゃなくてどこか店にでも入ったらどうだ?」
「いえ、実はあたしが急に朽木さんを呼び止めちゃっただけなんですよ」

ふふ、と何処か悪戯っ子のような笑みを零す乱菊に「ふーん」と相槌を返してから再び朽木ルキアの方へと視線を向ければ、
やはり何処か戸惑ったような表情を浮かべてこちらの遣り取りを見ている。
まぁ確かに仕事上の話ではないとしても、いきなり他隊の隊長・副隊長に挟まれて会話を繰り広げられてしまえば
平隊員である彼女が恐縮してしまうのは仕方ないことだろう。

「何か楽しい話でもあるのか?」

乱菊よりも遙かに目線の近いルキアに向かい問い掛ける日番谷の視線は、
彼女の胸元で握られた拳に自然と視線がいく。

「あー、そうそう、朽木さん。だからコレ、折角だから使ってね?」

思い出したように口元を綻ばせた乱菊が日番谷を無視してルキアの手を握るとそっとその掌を広げさせた。
細い、小さな手の平の上にあったのは、一本のマニキュア。

「あ…、あの。でも、松本副隊長…」
「あたしには可愛らし過ぎて似合わない色だから。朽木さんなら雰囲気的にも似合う色だと思うわ」
「ですが…」
「淡ーい色だから一度塗りじゃあまり発色しないわよ。色を綺麗に見せたかったら
二度塗りしたあとトップコートを塗るといいわ」

言いながらルキアの手から件のマニキュアを取り上げ手慣れた様子で蓋を開けると、
小さな小瓶を左手に器用に持ちつつルキアの手も同じように取る。
そうして右手の人差し指にだけ小さな刷毛で丁寧に彩りを添えると「うん、可愛い」と口元を綻ばせ
満足気に瓶の蓋を閉めた。

「やっぱりこの色、朽木さんに似合うわ。だからはい、あげる」

己の選択に間違いがなかった事に気をよくした乱菊は、自分一人だけ納得して
「それじゃぁ、あたしは帰りますねー」と告げ、さっさとその身を翻してしまったのであった。

後に残ったのはそんな女性二人の一連の様子を黙って見守っていた日番谷と、
禄に返事を返すことのできなかったもう一方の当事者であるルキアの姿だけで。

「あ、あの…。日番谷隊長…」
「うん?」

ぼんやりと己の指先と、もう片方の手元に残された小さな小瓶を交互に眺めやりながら
何処か困ったような顔をするルキアは。

「コレ…」
「あぁ、綺麗な色だな」

素直な感想を口にする日番谷に益々眉を八の字にしたルキアは、何処か心許ないような声で
隣の上官へ戸惑い気味に、こういった世の女性の自身を飾り立てる事への無知っぷりを露わにさせた。

「コレは…どのようにして落とせばよいのでしょうか?」

「ほ、本当に申し訳ありません…」
「気にするな」

結局その後ルキアを十番隊の隊長室へと招く羽目になった日番谷は、扉の入り口で恐縮して
肩を縮めるルキアを尻目に備え付けられた棚の上をゴソゴソと物色していた。

「私は…こういった事にとんと無知で…」
「いや、やるもんやって最後まで世話しなかった松本が悪いんだろう。
朽木が気にすることじゃない」

別段何を気にした風でもなく答え返す日番谷は、目的の物を見付けると手招きでルキアを呼び寄せ
部屋の中央に置かれたソファへと促す。

「何で隊長室に副隊長の私物スペースがあるかって質問は無しだぞ」
「はぁ…」

眉を顰め憮然とする日番谷にそう答え返すしかできないルキアは目をパチクリとさせて
言われた通りに質問は控える。
そうして机の上に置かれた品物に視線を向けると不思議な物を目にするかのようにして
首を傾げさせた。

「コレで落とせるのですか?」
「あぁ、除光液だ。松本の奴がよく休憩中にマニキュア塗ってる事があるから
常備してあるんだ」
「擦っても、水で洗っても落ちないのにコレで綺麗にすることができるのですか。
見た目、水と変わりないように見えますが」

言いながら蓋を開け鼻先にそれを近づけさせたルキアは、そのあまりの独特な匂いに
思わず小さく呻いて鼻を押さえる。
そんなルキアの行動にまるで年上のような苦笑を浮かべる日番谷は、
懐から懐紙を取り出してその瓶の中身を少量ばかり浸らせた。

「おら、これで拭えば落とせるけど…折角貰ったのにすぐに落としちまっていいのか?」

日番谷自身には分かり得ぬ思考だが、女性というものは基本的に自身を飾り立てる事に
心血を注ぐ物ではないのだろうか?
己の副官や、彼女ほどではないにしろ昔ながらの幼馴染みですら
綺麗な着物やら髪飾りやらにその瞳を輝かせる。

彼の良く知る女性二人は死神という職業柄、殊更派手に己を着飾ったり厚化粧をしたり等という事こそないものの、
それでも必要最小限の女性の特権とやらを彼女達ですら行使してもいた。

「そうですね…。とても綺麗な色なのですけれど」

そんな日番谷の言葉に、小さく笑みを浮かべたルキアは自分の人差し指を眺め、
それでも何処か諦めたようにその指先を握り締める事で指先の小さな花を隠してしまう。

「家の者が…こういった装飾を嫌うと思いますので…」

名残惜し気に松本から貰ったマニキュアを机の上に置くと、まるで宝物に触れるかのように
細い指先でその瓶を撫でる。

「何だ?お前は化粧の類は一切しないのか?」

貴族というものは身に付ける物は常に豪奢で煌びやかという印象しかない日番谷は
意外そうに首を傾げ、まぁでも、目の前の彼女ならば化粧などしなくとも十分煌びやかに
彩られる事も可能であろうと、年少者らしくもない大人びた考えが頭に過ぎる。

「いえ、そうではないのですが」

小さな笑みを零すルキアは再び自分の指先へと視線を向けながらポツリと小さく漏らす。

「家の催しや祝い事などで白粉をはたく事もあれば、紅を引くこともあります。
ですがこういった装飾は…朽木の家の者がするにはあまり好まれなくて」

だからコレも、折角松本殿から頂いたのにきっと付ける事はできないと思います。

そう言って困ったような笑みを零すルキアの姿は年頃の娘らしい化粧も身なりも諦め、
ただ朽木の家の者として相応しい身なりのみを義務づけられた諦めが漂っていた。


「でも本当はそういったモンにも興味はあるんじゃないのか?」
「え?」
「貴族のする格好とか身なりとかは流魂街出身の俺には分かりもしないが、
松本も言ってただろう?その色はお前に似合う」
「………」
「似合うんだから付けりゃーいい」

そう言いながらも日番谷は手にしていた懐紙に再び除光液を浸し、ルキアの手を取ると
人差し指の爪に彩られたマニキュアをそっと拭ってしまう。

「…あ」

呆然と本来の爪の色を取り戻した己の指先を眺め、言われた言葉と行動の意味を考えるルキアを余所に、
日番谷はマニキュアの瓶を手に取るとそれまで向かいに座っていた身を徐にルキアの隣へと投げ出した。

「ひ、日番谷隊長………?」

意味が分からず身動ぎながら隣へ座った相手を凝視するルキアに、何処か悪戯めいた
笑みを口元に浮かべる日番谷はニヤリと笑って一言言い放った。

「足の爪なら分からない」

「は?………って、きゃぁ!」

突然足首を捕まれ持ち上げられたルキアは上半身を仰け反らせて後方へと傾ぐ。
そんなルキアを気にする風でもなく掴んだ足首から白い足袋を脱がしてしまうと、
片手で掴んだ足首を固定したまま器用に片手だけでマニキュアの蓋を開けて
小さな刷毛でその液を少量取り出した。

「ああああああの、ひ、日番谷隊長…!」
「動くなよ。はみ出るから」
「いえ、そうではなく、突然何を……!」
「塗り方はさっき松本が言ってた通りにやればいいんだよな。トップ何とかってのが
あったかどうか分からねーが、まぁ二度塗りすりゃぁ綺麗に発色するんだろう?」

表情も変えず掴んだ足首を己の眼前に近づけると、脇にルキアの膝から下の足を挟むように固定して
ゆっくりと慎重に小さなつま先へ色を咲かす。
右足の親指から始まり続いて人差し指。
液を付け足して右足全ての爪を塗り終えると、よりハッキリと色を生かすために
もう一度親指つま先へとその刷毛を伸ばした。

「ひ、日番谷隊長……!もう結構ですから…!」
「あぁ?まだ片足しか塗ってねーだろう。っていうか動くな。はみ出す」

大して大きくもない二人が座るソファだが、ほぼ片足を持ち上げられた体勢のルキアは
上半身はほぼソファへと沈み込んでしまっている。
膝下がはだけられてしまった着物の裾を片手で押さえながら何とか事を止めてもらおうと
半身を起き上がらせたルキアは、その直後つま先にふーっと息を吹きかけられて一瞬思考が真っ白になった。

「………あっ!」

思いがけず口からこぼれ落ちた自身の声に驚いて口を押さえる。

驚愕した表情のまま目の前にいる相手へ視線を向ければ、日番谷の方もそれまで動かした手を
止めて何処か吃驚したような表情でこちらを見返していた。

「……擽ったい?」

ニヤリと口の端を持ち上げそんな子供の遊びのような言葉を返してくる日番谷の表情は、
その言葉とは裏腹に妙に人の悪さを浮かべ再びルキアのつま先へと再び軽く息を吹きかけた。

「……っっ!」

こそばゆい感触に思わず強く目を閉じ口も閉じ、知らず朱を帯びる頬を隠すように俯くルキアは
ギュっと堪えるようにして歯を噛み締める。

気付けば塗り終えられた右足は手を放され、やはりさっさと左足の足袋を脱がされると
先程と同じようにしっかりと足首と左膝下を固定されてそのつま先へ慎重に手元を伸ばされる。
その際、塗り終えた右足を日番谷の身体で擦らないようにとその小さな身体の肩に乗せられ、
あまりな体勢にルキアは着物の裾を抑えながら悲鳴じみた声を上げた。

「ひ、日番谷隊長……、や、止め……!」
「こら、暴れるな。折角綺麗に塗れてるんだから」

足首から細い脹ら脛へと撫でるように手を這わし、丁寧にルキアの足を彩る日番谷は
何処か愉し気に何度も息を吹きかけては目の前の小さく色づいた爪を見て
満足そうな笑みを浮かべた。
膝裏を持ち、塗り終えたマニキュアを適当に机の上に置くと空いた方の手で
ルキアの左足首を掴んで最後の締めと言わんばかりにゆっくりとつま先全体に
息を吹きかけてやれば、真っ赤になって声を噛み殺しているルキアの足がビクンと震えて
日番谷の気分をより一層快くさせた。

「できたぞ」
「……えっ?」

肩に乗せていたルキアの右足をそっと降ろし、乱れた着物の裾を整えてやると
半分涙目のルキアが呆然とした面持ちで日番谷の方を見返してくる。

膝から下の足を撫で上げ、少々しつこくはあったものの
息を吹きかけただけであるにも拘わらず、何処か扇情的な表情を浮かべるルキアの姿に
気付かぬ風を装うと、放った足袋を拾い上げルキアの視線を自身のつま先へと促した。

「……あ」
「いい出来だろ?」

綺麗に彩られた十本の爪先を眺め、目を見張るルキアを眺めながらソファから立ち上がり
ルキアの足下に跪いた日番谷はまるで悪戯が成功したかのような笑みで
その横へルキアの履いていた草履を揃える。

「これなら足袋を履いちまえば他の奴らには分からないだろう。
自己満足でしかないんだろうが見えない所を洒落にしてるってのが粋じゃないか?」
「………」

ぼんやりと己の足下を見つめ続けるルキアに向かってそう言うと、手にしていた足袋を
ルキアの膝に乗せ「完全に乾いたと思ったら捌け」と言い放ち元居た場所へと腰を落ち着ける。

「そいつを落としたくなったらまたここへ来ればいい。
そうしてまた別の色を塗ってけばいいんだろうし」
「……!」
「俺か松本が居れば別に問題ないだろう?要はバレなきゃいいんだろうし」
「………」
「暇な時を見てまたここに来い。俺は一向に気にしない」
「……あ、あの、日番谷隊長……」
「何だ?」
「あ……ありがとうございます」

今尚目元を赤らめて礼を言うルキアに軽く相槌を打つことで答え返した日番谷は、
その後に続いた「でも…」という小さな声に耳を傾ける。

「先程のような格好や行為をされるのは……その……」
「うん?」
「その……何と言いますか……」
「あぁ、すまない。ついガキの頃の遊びのようで夢中になっちまった。面白かったぞ」

ニコリと、まるで年相応の子供のような笑みを浮かべて言い放つ日番谷の姿に
何も言い返せないルキアは二度三度口をパクパクさせてから諦めたように頭を落とし、
何処か力の入らないような声でもう一度「ありがとうございます」と小さく呟いたのだった。

次の日。

十番隊隊執務室の机にて見慣れた小瓶を見付けた乱菊は小さく首を傾げさせた。

「隊長、コレ」
「何だ?」

淀みなく手元を動かし書類に判を押す日番谷は、彼女の手にした物を目に留めるも
特に何を気にした風でもなくその続きを促した。

「コレ、あたしの除光液なんですけど、何でここに出てるんですか?」
「そんなこと俺が知るか。大方お前がしまい忘れただけじゃないのか?」
「そんな事ないと思うんですけど……そうなのかしら?」
「そうでしかないだろう。大体俺がそんな物を使う必要ないんだから」
「そうか。そりゃそうですよね」

腑に落ちないまでも日番谷の言葉に納得した乱菊は「おかしいわねぇ」と呟きながらも
それを自分の私物スペースへとしまい直す。

「松本」
「はい?」
「そいつ、予備をストックしておけ」

多分そう日を置かないで彼女はこの場を訪れるであろうから。
その時はまた自分が彼女の爪先の色を落とし、そうして再び彩ってやろう。
その際はもう少し大胆に彼女に触れてみるのもいいのかもしれない。

子供の形っていうのも、時と場合によっては良いように利用できるものだ。

乱菊に気付かれる事なく小さな笑みを浮かべる日番谷の表情は、
子供が浮かべるそれではなく、確信犯に満ちた大人の男の笑みでしかなかった。


(完)