朽木ルキア大ブレイクの予感パート9 :  782氏 投稿日:2005/05/07(土) 01:28:45


『イチルキ』


「何故だ?こんなに広くて、しかも銘々に立派なベッドがあるのだぞ?何故、わざわざ私の部屋で寝ようとするのだ?勿体無いではないか」
「もったいないって…オメ、そーゆー問題なのか!?」

夏の終わり、ルキアと2人っきりで出掛けた豪華リゾートホテル。
そのホテルの、しかも超豪華スウィートルームの片隅で、俺は、何度目になるか分からないルキアのボケに悩まされてる最中だ。
スウィートルームってのはアレだ、アレ。
(俺も今日、この部屋に案内されてから知ったんだが)だだっ広いリビングルームとは別にベッドルームが幾つかくっ付いてる、とりあえずスッゲー部屋の事らしい。
何でも、普通に泊まったら1泊20万もするという。
そんな豪華な賞品が空座商店街の福引きで当たるというのも胡散臭かったのだが、まぁ、それは部屋に入ってすぐに理由は判明した。2つあるベッドルームの1つに
鬱陶しい小デブの男の幽霊が居付いていた訳だ。
ホテルとしては正規の客を泊めることも出来ず、かといって空き部屋にするのも勿体無いということで、格安の宿泊券をこっそり売っていたのだろう。
正規と俄か、2人もの魂葬のプロがやって来たのが僥倖だったな。

……ってな前置きはいいとして。
着く早々に魂葬やって、それからホテルの真ん前のプライベートビーチで夕暮れまで泳いだりダラダラしたりして。
ホテルのレストランで二人揃って慣れないナイフフォークでガチャガチャ音を立てまくり、恥ずかしい気持ちで飯を食って…。

部屋に戻ってすぐ、塩気で躰がベタつくと言ってルキアは風呂に入ってしまった。
さすがに追いかけてって一緒に入る度胸はなかったが、ベッドルーム同様、バスルームも2つあったので、これ幸いと俺も軽く汗を流して、さて!
……という時になってからの、ルキアのこの素ボケだ。
ルキアとしては、広い部屋と巨大なベッドを1人で使えるというシチュにウキウキしているのかもしれないが…。
しれないのだが、だが!
一家で宿泊できるチケットで、わざわざ2人だけで行こうと誘った時点で、こう…
なんとなくの流れってのを何故に気付かないんだお前は?

「今日は汽車というので遠出もしたし、思いっ切り泳いだし、ちょっと疲れた」
「あ、あぁ」
ダブルベッドを更に二つくっつけた位のデカいベッドの真ん中ににチョコンと座り、ルキアは妙に偉そうな態度で濡れ髪をタオルで押さえている。
お前、その仕草、何の気なしにやっているんだろうが……裏原んとこでもやってねーだろうな?
「分からんか?私はもう眠たいのだ。貴様もさっさと向こうの部屋に行け」
タオルをベッド脇の小テーブルに投げ遣り、ルキアはポフンとシーツの上に仰向けに転がる。
さすが高級リゾートホテル、備え付けの寝巻きもヨレた浴衣なんかじゃなくって、
丈長の白い前開きシャツのようなものが置いてあって、それを着たルキアは、パッと見にブカブカのシンプルなネグリジェを羽織っているように見える。
いや、飾り気がないので、見ようによっては彼シャツに見えなくもない。
これは…、こんなの見せられたらヤバいかも。
高級なコットンなんだろうが、いい布地な分、透けそうで透けてなさそうで、もどかしい具合にルキアの肢体を隠している。
ますますヤバい。

「えぇい、早く出て行けと言っておるだろうがっ!」
いつまでも未練たらしくベッド脇に立ち尽くしていた俺に痺れを切らしたのか、
笑えるほどたくさん積み重ねてあった枕のひとつを取り上げると、ルキアは容赦なく俺めがけて投げつけてきた。
ま、ホワホワした羽根枕くらいなら余裕で受け止められるが…。しかし、精神的なダメージは意外とデカい。
「私はもう寝るっ!」
「いや…っつーても…」
「なんだ?」
1度閉じた瞼を不機嫌そうに半分だけ開けて、ルキアはジロリと俺をねめつける。
「じゃあ聞くが、なんでお前がこっちの部屋で俺があっちなんだ?」
「………は?」
「こっちはマッサラピカピカだけど、あっちなんざ、ついさっきまで脂ぎったデブが鼻水たらしてベッドに齧りついてたんだぞ?んなとこで俺に寝ろってゆーのかよ!?」
いや、逆切れはしてみるもんだ。
ルキアは明らかに虚を突かれたようで、微妙に視線を泳がせている。

「しかし…、ちゃんと魂葬したのだから、今はキレイなもんだろう?貴様、あまり贅沢を言うな」
ほぉーう、そーゆー詭弁を弄するか。
「だったら、お前があっちの部屋で、俺がこっちで寝てもいいんじゃねーのか?」
「うっ……」
俺に言い負かされそうになったことが余程悔しいのか、ルキアはベッドの上に座り直し、剣呑な目付きで反撃の理屈を考えている。
「で?お前、あっちで寝てくれんのか?」
とりあえず、いつまでもベッド脇で立ち尽くしているのもバカなんで。
俺はベッド手前側からにじり上がり、膝立ちでノソノソと居場所を確保にかかった。
尤も、必要以上にルキアに接近はしない。下手に刺激して、本当に向こうの部屋に行かれてしまっては困る。
「莫迦な!魂魄とはいえ、長いこと男が縋り付いていたような寝床で休むなど御免こうむる!」
「お前、自分がイヤなことを人に押し付けるなよ」
「う…………」
ベッドの上にダラーンと伸びて、ルキアを見上げてみれば。
「分かった。じゃあ、此処で休んでもよい。私はもう寝る!」

そう言い放って、ルキアはプイとむこう向きに横になってしまった。
改めてマジマジと見ると、えれぇ小っちゃくて細い躰に胸をつかれる。
すぐにも触れたいんだが、もう少し寄らないと手が届かないっぽい。ホント、笑えるほどデカい寝床だ。
タイミングを見計らい、ソロソロと接近してみたのだが…。
おい!
いつの間にか、ルキアの呼吸が深くゆったりとしたものに変わりつつある。
まさかと思うけど、本当に寝に入ってる?
マジで疲れてるのであれば、ムリに事に及ぶのも憚られるし、どうしたもんかな?
俺は極力静かに、ルキアの寝顔を覗き込める位置にまで移動した。
どうやら本当に眠り込んでるらしい…。
ってことは、つまり、この野郎は俺の存在なんか全然意識してないってことか?
俺は、あまりにも自分が報われないような気がして、脱力気味にシーツに突っ伏してしまった。
尸魂界に乗り込む前、そっち方面の進展なんかカラッキシだった頃ならばともかく、今の関係…で、この扱われ方ってのは何だ?

尸魂界で、死にかけのドサクサで告って、やっぱり死にかけのドサクサで告り返してもらって、更にドサクサついでに何度か情を交わしたりした…ハズなんだが…。
アレは、もしかしたら死にかけの俺が見た都合のいい夢だったのか?
それとも、まさかとは思うがルキアの奴、コチラで療養ということで、新しい義骸(今回のはちゃんとしたモノだ)に入った時点で、
尸魂界での出来事を忘れてしまったり…してはない……よな?
そりゃ、まぁ…。照れ臭い気持ちが先に来て、現世に戻ってからこっち、以前のような素っ気無い態度を押し通してきたのは…俺…なんだが…。
でもなぁ…。
「ちったぁオトコの気持ちってのも考えろよな」
うっかり口に出てしまった科白は、自分で思っていたよりも大きな音になったようで。
耳元に位置していたルキアの後頭部が急に小刻みに震えだした。
「んあっ!?」
起こしちまったか?
いや、よくよく見れば、ルキアは必死に笑い出しそうになるのをこらえているようだ。
もしかして、寝たフリしてたのか?

「貴様…そういう殊勝な科白は相手が起きている時に言わねば、相手には届かないぞ」
くつくつと、満足した猫が見せるような、ちょっと意地悪そうな笑みをたたえてルキアは俺の方に向き直る。
馬鹿野郎!
俺は、俺の本心を人に知られるのが何より苦手なんだよっ!
自分でも情けないとは思ったが、耳たぶのとこに熱が集まってるのが感じられた。
多分、赤面してるのだろう。
っかー!恥ずかしさのあまり、こいつのこと、ムチャクチャにしてやりてぇ!
「素直に口説きにかかるようなら、私も素直に応じようと思っていたのだがな…」
そう言いながら、ルキアはツイと腕を伸ばして、俺の頭にポンと手を乗せてきた。
そのまま、髪の間に指を通し、その感触を楽しむように頭を撫でてくれる。
「カッコつけかどうかは知らぬが、どうでもいい事をゴチャゴチャ言うから、つい意地悪したくなった」
それは、つまり…。俺がどう切り出すかを観察してたってことか?
耳たぶだけでなく、ハッキリと顔面全体が熱を持つのが分かった。
「貴様、気付いてはおらぬだろうが…、物欲しそうな顔をしておる時は歳相応に可愛くなってお…ふんっ!んくぅ…っ!」
なにより、俺の羞恥心が限界だった。

俺の頭を撫でていた腕を取ると、そのままルキアの上にのしかかり、唇を重ねる。
話の途中だったルキアの歯列を割るのは簡単で、そのまま舌を絡めて、強く吸い上げる。
「んっ!んぅ…っ!」
驚きで固まっていたルキアの躰から、徐々に強張りが消えていく。
舌先で歯茎を軽くなぞり、それからゆっくりと唇を離すと、ルキアは深く息をついてから俺と視線を合わせた。
いつもは心持ちひんやりとしたルキアの肌だが、今日はわずかに熱を帯びている。
「………あまり強く触るな」
「あ?」
「昼間、日に当たり過ぎた。日焼けしたところが少し痛い」
「悪りぃ、痛かったか?」
「いや…」
眠そうな、うっとりしたような、どちらにもとれる穏やかな笑みと共に、ルキアは俺の首に両腕を絡めてくる。
「優しくしろと言っておるのだ。その位の言葉の裏は読めるようになれ、莫迦者」
ダメだ。もう白旗が揚がりそうだ。
出会った頃は、口煩い上に自分勝手で色気のない奴だと思っていたのだが、とんだ間違いだった。

こんなに潤んだ眼をして、こんな優しげな口調で俺を誘ってるだなんて、なんて悪魔なんだコイツは!
なんで、なんでお前、今の今まで、そーゆー態度を見せなかったんだよ。
お前はお互い様だと言うんだろうが…。

「ルキア…」
もどかしい気持ちで、ルキアの着ているコットンドレスの前留めのボタンをひとつひとつ外していく。
ツンと上を向いた小さな先端を舌先でつつく。
ルキアは日焼けをしたと言っていたが、露わになった肌は抜けるように白いままだ。
ほんのりと桜色に上気しているのが、その日焼けの名残りだろうか。
くっきりと浮き出た鎖骨の下を強めに吸うと、鮮やかな赤味が浮かび上がり、それが一際美しく見えた。
「…あぁっ!…ばっ!……やさ…しくしろ…とっ!」
「こう…か?」
ルキアの耳の後ろに舌を這わせ、触れるか触れないかのギリギリの距離で、うなじまで舌先を滑らす。
「あ…あぁ、ぁぁっ…!」

一方的に攻められるのを潔しとしないのだろう。だが、漏れ出る声を押さえようとして身を捩る様子が、俺の衝動を更に煽っていることには気付いてないらしい。
もう一度深く口付けて、右手は太腿から内股にかけてのラインをなぞるように往復させる。
しっとりと吸い付くような感触が、手の平に気持ちいい。
内股の奥は更に熱く、汗なのか、それとも別のものなのか、湿り気を帯び始めている。
内心では一瞬でも早く其処に到達したいのに、その気持ちをグッと抑え、指を引く。
「はぅ…っ!」
ルキアの洩らす吐息に切なさが混じって、物言いたげな視線が俺を捉える。
…が、ルキアは何も言わない。大きな潤んだ眼で見上げるだけだ。
意地っ張り同士だと、こんな場面ですらも意地を張り合うらしい。
触れたい俺と、触れて欲しいだろうコイツ。互いに、素直に態度に表すのがスッゲ恥ずかしいらしい。
もぉ、不言実行でいいよなっ!
何より、俺の我慢が限界だ。
震える指先でルキアの下着を剥ぎ取ると、淡い茂みの奥に指を挿し込んだ。

熱い……。
「あっ!んんっ!…………んっ」
人差し指と中指、2本揃えて合せ目を往復させる度に、ルキアはビクビクと上体を揺らす。
俺の首にかけた腕に力がこもり、時折り、容赦なく俺の髪を掴み上げる。おいっ!
そんなに引っ張ったら抜けるって!
頃合を見計らい、更に奥に沈めた指をクイっと曲げてみる。狭い路が指の形に沿って包み込んでくる。蕩けそうなネットリした感触、たまんねぇ…。
「ば…かぁ…。そんな…あっ!あぁ…」
バカと言いたいのはこっちだ!そんな声、耳元で出すな!
優しくしたくても出来なくなるだろうが!つか、出来るかっ!
ルキアの泣きが入るまでは前戯に徹しようという目論みはあっという間にダメになってしまった…。
つか、俺の歳では無謀な計画だったか。
俺は暴発させないようにするのが精一杯といった状態で、やっとのことでルキアの其処にオノレをあてがい、慎重に腰を進めた。

ズヌンと幾重にも重なった熱い襞が俺を包み込む。
俺の腕の中にいる可愛い女が身じろぐ度、息をつぐ度に、その動きがダイレクトに俺を締め上げる。
そして、その度に、自分達の躰が繋がっていることが実感できる。
今にも爆発しそうな余裕のない中で、だのに、妙な安心感と幸せを感じ取れる瞬間。
自然に腰が動き出した事への自覚は、もうなかった。
がむしゃらに、腕の中の女を愛おしむだけだ。
「ルキ…ア…。…ルキア!」
「あぁっ!あっ!あっ!…い…ちごぉ…!あっ!」
ルキアの顔にかかる前髪をかき上げ、露わになった額に口付ける。
応えるように、俺をかき抱く腕と、締め上げる力が強くなった。
「一護…!いち…ごっ!」
「くぅ…っ!」
 

力が抜けて前のめりに倒れこんだ俺を抱きとめ、ルキアは両の腕に更に更に力をこめてくれたようだった。


結局、若い上に勢いがついてしまった俺らは、宵の口から日付けが変わる頃まで頑張った訳で…。
最後にはグッタリと疲れて、色気なくも身体を投げ出して天井をボンヤリと見上げていた。
呼吸が平常に戻り、ふっと我に返ってすぐ横のルキアを見れば。
さっきまでの色っぽい女は何処かに消えてしまっていて、いつもの、口煩そうな小憎たらしい表情の小娘が、俺を横目で見つめていた。
「あれほど優しくしろと言ったのに…。貴様の耳はただの飾りか?」
「…………」
言い返したいことは、山ほどある。
が、疲れていたであろうルキアに、かなりの無理を強いたであろうことは明白な訳で…。
そうだな、こういう付き合い方が俺ららしいのかもな。
普段からケンカして、憎まれ口を叩きあって。
たまに、本当にたまに、優しい気持ちになって、その時だけ、お互いに素直になって…。

「私は本当に疲れた!本当に寝るから、これ以上ちょっかいを出して来たら、 本当に蹴り出すからな!」
「しつこい奴だな、何回ホントーって言やぁ気が済むんだ?」
「煩いっ!もう寝るっ!」
程なく聞こえてきた穏やかな寝息に誘われるように、俺もすっげ眠くなってきた。
だんだんと上手く動かなくなってきた頭を何とか回して、明日のことをチラと考える。
明日は……とりあえず、目が覚めたら、ちゃんと『おはよう』って声をかけてみようか。ルキアの奴、きっとビックリするに違ぇねー。
そして…そして……。
その先のことは、明日になってから考えよう。
「ん……」
寝返りをうったルキアが、モゾモゾと俺の方に擦り寄ってきて、俺は上機嫌な気分で眠りについた。


(完)