「では今度は前を」
「前はいい!そっちは自分でするから!!」
自分の前に廻って跪くルキアを、彼は不自然にならない程度の強さで押し返そうとした。
薄い手ぬぐい一枚で覆った前を手で押さえ続けているのも、限界に近かった。
「でも兄様は必ずこちらも清めろと----」
「…待て。お前そんなこと何時もやってるのか」
「はい。殿方の背を流す時の作法はそうだと教わりました」
「妹にナニ教えてるんだ、白哉…」
「はい?」
浮竹の顔を見上げるルキアのあどけない顔を見ているうちに、浮竹の目頭が熱くなってきた。
この調子で、白哉に様々な嘘を教え込まれているのではないか---という疑念が彼の中で大きくなったのである。
あいつには一度きちんと問いただしてやらなくては、と浮竹の意識が白哉の妹教育に対する危惧に向けられた時、彼の手のガードが一瞬甘くなった。
「うわっ!ま、待てっ、どこ触って…!!」
石鹸の泡をたっぷりとつけた手ぬぐいで、ルキアは浮竹の固くなった一物を包みこんだ。
「殿方は背中を流されると必ずこうなるのだと聞きましたが」
手ぬぐいにくるんだまま棹を上下に扱きたて、ルキアはまじまじと浮竹の怒張を見つめた。
「隊長もそうなのですね」
「ち…違う、俺は!駄目だ、お前にそんなこと!」
石鹸でぬめるルキアの左手が、困惑に腰を捩る浮竹の柔らかい袋を摩りあげた。ルキア自身は純粋に洗浄のみを意図としているのであるが、滑らかなその動きは蠱惑的であり過ぎた。
「うあっ!」
限界近くまで張りつめたものにぬるい湯をかけられ、浮竹は情けない声をあげた。残った泡を丁寧に洗い流すルキアの手を、浮竹はがっちりと握りしめた。
「朽木、すまん!手を借りるぞ」
「えっ?」
ルキアの手を己の股間に導いた浮竹は、その上に自分の手を重ねた。
「隊長?あっ…」
息を弾ませながら、浮竹は己自身を握りしめたルキアの手を激しく上下させた。禁欲生活を続けていた肉体は、あっさりと頂点に向かって登り詰めていった。
「うっ…!」
眉間に皺を寄せ、浮竹はやや情けない思いと共に絶頂を迎えた。達する直前に先端を手ぬぐいで覆い、飛沫がルキアを汚さないようにしたのは、せめてもの気配りであった。
「隊長、あの…大丈夫ですか?」
ルキアの心配そうな声に、浮竹はがっくりと垂れていた頭を上げた。浴室の湯気の中、ルキアの頬も桃色に染まっている。肌襦袢の下の瑞々しい肉体を想像して、浮竹の内部がまた妖しく疼いた。
快楽の余韻で痺れた頭で浮竹は考えた。目の前で、しかも布越しとは言え手の中に射精されたのに、ルキアは彼のことを嫌がっていないようだ。白哉の間違った教育に関しては目をつぶり、浮竹はルキアの奉仕とそれに対する反応を都合よく解釈することとした。
「朽木!俺はお前のことを…」
前を隠すことも忘れ、勢い良く立ち上がった浮竹はルキアの肩を掴んだ。ルキアが驚いた様子で高い声を上げた。
「たっ、隊長!鼻血がっ!」
鼻血…?と浮竹は手で顔を拭った。鮮血が手についてきた。その途端、世界がぐにゃりと歪んだ。
「きゃーっ!しっかりして下さい、隊長ーっ!」
浴室の床に仰向けに倒れ、浮竹はぐるぐると廻る天井を見上げて自嘲した。
「は…ははは…やっぱり俺には刺激が強すぎたようだ…」
だんだん暗くなる視界の中、最後に浮竹の目にうつったのは、泣き出しそうなルキアの顔であった。