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朽木ルキア大ブレイクの予感パート6 :  936氏 投稿日:04/05/01 23:57


―あれから何日経ったのだろうか。
数えるのも面倒くさい。
薄暗い窓の外を見遣りながら、考えるでもなくそう思う。

一護。

今、何をしているのだろう。
私のことなど忘れて、以前の生活に戻ったのだろうか。

否、想い巡らすのはもうやめたはずだ。
これは全て私の責任。
一護にとっては、私のいない生活の方が自然なのだ。
まったく。こんなことで悩むなんて馬鹿らしい―

「なに一人で笑ってんだよ、気持ちワリーな」
背後から、囁くように小さな声。
「…恋次。…こんな夜更けに、何の用だ」
紅い髪の幼馴染は、ふぅ、と小さくため息をついた。
「ざまぁねぇな。こんなトコに入れられちまってよ」
「何の用だと言っている」
恋次は胸元に手を突っ込むと、何かを取り出してちらちらと動かした。
「これ、なーんだ」
「?」
暗くて見えぬ、とルキアが牢に近づくと、突然恋次のもう一方の手が彼女の腕を捕らえた。
「!? 何を…」
おっと、とすかさずルキアの口元を掌で覆い、先ほどの囮を再び仕舞う。
恋次の行動がさっぱり読めないルキアは、ただ彼の動きを目で追っている。
怪訝な表情の彼女を見下ろしながら、恋次は自分の心に改めて棘が刺さるのを感じていた。
「…恋次…?」
目が合う。
憂いをたたえたその瞳に、自分ではない誰かの存在を感じ取る。
ああ、それでも、俺は。

「好きだ」
それは、自分でも不思議なくらいなめらかな響きで。
ルキアは一瞬、両目を見開いて恋次を見たが、すぐに視線を逸らして俯いた。
「…好きだ、ルキア」
確かめるように、繰り返す。

しばしの沈黙を破ったのは、ルキアだった。
「…手」
「あ?」
「手を、離してくれ」
「…厭だ」
「恋次」
「俺は、」
ルキアの顔が上向く。何か焦っているような、そんな表情。
「俺は、お前を…」
彼女の腕を引く。言葉の代わりに身体が先に出た。
が、その瞬間、鈍い音とともに恋次はその場にしゃがみこんだ。
牢の鉄棒に思いきり頬をぶつけてしまったのだ。
「…ってぇ」
普段の彼女なら、ほれ見たことか不埒なことをしようとするからだ、とせせら笑う場面なのだが、
今の彼女は違っていた。
薄い唇をきゅっと結んだまま、真剣な面持ちで彼を見ている。
「…なんだよ。笑わねーのかよ」
却って気まずそうに頬をさすっていると、ぽそりと彼女が呟いた。
「…知って、いたよ」
頬をさする手の動きが止まる。
代わりに彼女の冷たい手が、赤くなった頬に添えられた。

ふ、と彼女の口角が上がる。
「貴様は莫迦だからな…感情など、お見通しだった」
「ルキア」
「本当に、莫迦だ。大莫迦者だよ、貴様は…」
一粒、二粒と涙が零れては無機質な床に落ちてゆく。
恋次はルキアの小さな顎に指をかけると、手前に引き寄せてその雫を吸い取った。
目を閉じたルキアの濡れた瞼に軽く口付け、うっすらと開いた唇に自らのそれをゆっくりと重ねる。
(…どうして皆、こんな私に命を賭して……)
牢屋越しのキスは、互いの角度を何度も変え、時折微弱な水音をたてながらしばらく続いた。


次の日、
恋次は積年の想いを託すべく、懺罪宮に向かうこととなる―



(完)