朽木ルキア大ブレイクの予感パート13 :  704氏 投稿日:2006/07/31(月) 03:59:14


偶然


(何故こいつが此処に居るのだ??)

月の物の痛みに堪えられず、四番隊を訪れ薬が効くまで休んで行くよう言われたルキア。
簡易ベッドが2つ置かれた部屋に入ると先客が居る。
無造作に置かれた隊長羽織り
銀色の頭がスゥスゥと寝息と共に上下している。

(・・・市丸、ギン)

嫌な奴に会ってしまった、今引き返せば会った事も気付かれない、無しに出来る。
そう考え霊圧を消し一歩後ずさるも、飲んだばかりの薬の効果はまだ無く貧血も合間って一瞬意識が遠退く。

(このまま戻るのは危険か・・・)

薬が効くまでおおよそ30分、都合よくギンは眠っている。
上手く行けば気付かれる事もなくこの場を去る事が出来ると思い直し

(頼む、眠っていてくれ・・・!!)

そう願いながら、市丸ギンの眠る隣のベッドに身を鎮めた。
痛みに耐えるように、薬の効き目にいち早く気付くように、無心に瞳を閉じる。
体調が不十分な事もあり、ルキアが眠りに入ってしまうのに、そう時間はかからなかった・・・。



1時間程たった頃か、ぼんやりと目を覚ましたルキア。
ぱちぱちと瞬く間に映る見慣れぬ天井に、自分が四番隊に居る事に気付く。
腹痛は殆ど無くなり、クッと弱く伸びをして再び目を閉じる。

何か、大事な事を忘れているような。




「おはようルキアちゃん」

瞳を大きく見開き勢いよく起き上がると声のする方へ視線を向ける。
「よう寝とったねぇ」
声の主は未だ布団に横たわったまま、ルキアをじっと見ていた。
「市丸・・・起きて??」
市丸の姿を目にした途端、眠る前の記憶が甦る。
会いたく無かったのに、そんな気持ちが溢れたような眼差しで市丸を見ていた。
「市丸やのーて市丸た、い、ちょ、う。やろ??
ルキアちゃん体調悪いんやねぇ、布団潜った思たらすぐ寝てもうて・・・まぁ、おかげでこっちはいい物見させてもろたけど」
フフッと軽く笑いながら枕を抱き抱えるようにして起き上がる。
「なんだと??」
青白い顔から更に血の気が引く。
確かに今この男は『すぐ寝て』と言った。いつから存在に気付かれていた??
そして自分の寝姿を見ていたとでも言うのだろうか。
苦手な男に無防備な姿を見られた事が、ルキアにはかなりのショックだったようだ。

「フッ」
市丸はルキアを見ると、何か言いたげな笑を浮かべ

・・・ギシッ

ルキアのベッドに手を掛けると、耳たぶに唇が触れてしまいそうな距離まで近づき

「ルキアちゃん・・・ボクに気付かれるん嫌やっったなら、四番さん来る前から霊圧消さんと、意味、無いで??」

と、囁いた。
それは、時折耳にする市丸の声とは比べ物にならないほど低く耳にまとわり付き、体中の血液が凍りついて硬直するような感覚に陥る程だった。
そんな感覚とは別に、かなりの至近距離に居る市丸からはお日様のような優しい匂いが鼻を掠める。

しかし、それもルキアには恐怖と嫌悪感しか感じる事ができなかった。

「ルキアちゃん」

ビクッ
名を呼ばれ、反射的に硬直した首を市丸側に向ければ視線がぶつかる。
冷汗が頬を伝ってシーツに落ちて染みを作った。
いつもは閉じられている瞳が薄く開き、赤い瞳に突き刺すように見つめられると
ルキアの鼓動がドクンッと一つ大きく跳ねた



「なんや血の匂いがする・・・」

「血、の、匂い・・・」

その言葉と共に、瞳の赤が濃くなったように感じた。
なんて鋭いのだろう
まるで獅子が野兎をいたぶってから喰らうような錯覚さえ覚える。

(気持ち悪い・・・)

体調不良と市丸の言葉の相乗効果で、頭の芯がぐらぐらと揺れる。
視界が固定され、その奥から真っ白な世界が迫って来る。
後ろから頭を引っ張られるように倒れた。



・・・ルキアちゃん

遠くで呼ばれる声がして、ぼんやり目を開けると市丸の顔。
いつもとは違う、と言っていいか解らない位の微妙な表情で覗き込んでいる。
片手は頬にそえられて、朦朧とした意識のせいか不思議と不快感は少ない。

「具合い悪なったん??四番隊長さん呼ぼか??」

この言葉で心配されている事に気付く。
市丸は頬から手を離し、卯之花を呼びに行こうとしている。
ルキアはまだ至近距離に浮くその手を咄嗟に掴んで声をあげた。

「ただの貧血だ・・・こんなことで、隊長の手を・・・煩わせるな・・・」

この言葉に、いつも上がっている市丸の口角がへの字にさがり
冷たい小さな掌の細い指を絡めるように握りかえされる。

「なんで・・・もっと自分を大切にせぇへんの??」


(未完)