いつの間にか眠りについていたようだった。
確か、兄様に呼ばれ、待っていたはずだが・・・・
意識は覚醒しつつも、いつまでも、この倦怠感、この浮遊感に浸っていたかった。
なにか、夢を見ていた気がする。
ぼんやりと、とりとめも無く思う。
誰かが、耳元で囁く。
うれしかった。心地よかった。気持ち良かった。
だから、答えた気がする。
何を答えたかは、自身でわからなかった。
この気持ちよさに、いつまでも浸っていたかった。
だが、意に反し、徐々に覚醒していく。
自分の今、置かれている状況を把握していく。
自身が着物を何も身にまとっていないことに気付く。
そのことがわかり、恥ずかさが浮かぶ。
だが、寒くはなかった。
室内の温度のせいでもあるが、絡みつく温かさを求め、自分もすがりついていたから。
わかることは、
恥ずかしかったのは、兄様の目に触れているから・・・
温かかったのは、兄様の肌に触れているから・・・・
そう理性が、現状を判断していく。
だが、なぜかルキアは、受け入れるのを拒否していた。現実と共に。
違和感を感じていた。
下腹部に。
気持ち良かった。だが、違和感があった。
自分の意思通りでないものがあった。
そう・・・自分の意思に反して、動いていく。
それに応じて、自身の身体と心が反応していく。
重い瞼を上げる。
近くに白哉の顔が見えた。
あいも変わらず美しい・・・・
ぼんやりと、ルキアは思う。
自分が求める感情も、望む感情も、想像する感情も、
何も捉えることのできない、その秀麗な顔を見つめる。
白哉と目が合う。
ルキアの頭部に白哉の腕が回る。
唇が重なる。
意識を放棄したい・・・だが、その思いとは反対に、徐々に自身の今の状況を理解していく。
自身は裸体である。うつぶせにいる。畳と自身の間にはある。
布団だけではない。
その人に絡まるように、自身は身をゆだねている。
何かが自身の中で暴れている。
それに応じ、意識より先に体が応えている。
感情が従っている・・・・
徐々に意識が覚醒されていく。
覚醒したくはない・・・・
・・・・違和感の正体をルキアは自覚する。
反射的に上げようとした声は、白哉の唇によって、妨げられる。
・・・・意識と感情、理性と快楽が交差する・・・・
自身が裸体であること。それは、とうに気付いていた。
自分がうつぶせの状態でいることを、理解するのはたやすかった。
自分が白哉のの身体に覆い被さるようにいたこと・・・・
・・・・その人が、ルキアの体を下から突き上げていた。
それが、ルキアに侵入。
それは、ルキアの意に反し、貫き、蠢く。
そのことを理解し、ルキアは顔を強張らせる。
咄嗟に、声を上げようとする。
何を言うでもない・・・何をつむぐはずではない・・・
だが、その声は、白哉により唇をふさがれ、舌を絡まされた声帯からは、
言葉として、発せられることは出来なかった。
夢・・・・・
そうであってほしかった。
・・・・そうであってほしくなかった。
だが、夢でなければ、これから、どうすればいいのであろう・・・・?
その考えを放棄したいが為に、あえてルキアは快楽の波に押し流されていった。
夜明けなど、来なければいい・・・・・
(完)