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朽木ルキア大ブレイクの予感パート12 :  662氏 投稿日:2006/02/26(日) 17:16:29


罪人


崩玉を身に秘めた死神の、その名前を聞いた途端、確信した。
きっとこれは、自分が今までに起こした幾つもの罪に対する代償なのだろうと。
何度となく悪戯に人を弄び、傷つけ、壊しては、微塵の反省もしてこなかった非道な自分への。
数少ない慕ってくれる者達に背を向けて、日の当たらぬ場所へ向かおうとしている狡い自分への。

――そして何より、四十年以上もの間抱いてきた想いを、
ただ彼女に伝えることすら出来なかった、弱い弱い自分への。

さながら永遠のように長い時の中で、口に出来ずひたすらに秘めてきた恋情。
それを、まさかこのような形で再確認させられるとは思ってもみなくて、ギンは抑えきれず呟いた。

「……最低や」


     *     *     *

牢の入口に身体を潜め、極限まで霊圧を押さえ込む。
隊長核レベルでもなければ容易には気取られないほどに纏う霊気を薄くして、中をそっと覗き込む。
案の定牢の内側では、背徳的な行為に耽る罪人と、その兄が居た。

霊力抑止用の赤い首輪以外何一つ身に付けていないルキアは、まるで白哉の愛玩動物のように見えた。
それは見た目だけでなく、彼らの行動からも難なく感じ取れる感想であった。
そそり立つ白哉の性器を目の前に、ルキアは恍惚とした表情で奉仕する。
口腔に捻じ込まれた兄の一物は、ルキアの小さな口には到底収まりきれない大きさを持つ。
むんと咥内を占領する男の匂いが、ルキアの頭に靄を掛け、理性を剥ぎ取っていく。
滲む先走りの苦い液が喉を滑り落ち、それをこくんこくんと飲み下していく度に少しずつ、ルキアは従順になっていくのだ。
ちゅぷちゅぷと音を立て、嬉しそうな顔つきで白哉の性器を口淫する。

「巧いぞ。もっと舌を遣え」
ルキアの髪をくるくると指で弄びながら、白哉は涼しい顔で更にそう命じる。
「……はい」
言われるがままに、ルキアは唇の間から覗かせた舌でぺろぺろと白哉自身を愛撫する。
鈴口から雁首にかけて何度も丹念に往復させ、陰茎全体をきゅぅと舌で締上げれば、白哉もぶるりと腰を震わせる。
次第に濃厚な物へと変わっていく液体を喉で味わいながら、ルキアは上目遣いで白哉にねだった。
「兄様、下さい……」
「仕様が無い娘だ」
指先で遊んでいた髪をむんずと掴むと、白哉はルキアの頭を自身の股間へ一層押し付けた。
睾丸からせり上がる吐精欲のままに射精すれば、勢いよく飛んだ飛沫がルキアの顔をどろどろと汚す。
頬にかかった白濁を掌で掬い取って、何の躊躇もせずに口へと運ぶ。
「美味しいです……」
顔を赤らめてそう言うルキアと、彼女の頭をつまらなそうに撫でる白哉の姿に、ギンは背中を流れる嫌な汗が止まらない。

これが、四十年掛けた調教の結果か。
異常や、こいつら。おかしい。頭狂ってる。気色悪うて反吐が出る――。
こんなにも異様な関係を彼らがもう何十年も続けているのを、ギンは随分前から知っていた。
けれどギンに、二人の爛れ壊れた関係を咎める事は出来なかった。
ルキアは、義兄を愛している。
たとえどんなに歪んだ形であったとしても、二人の間には確かに何らかの情が存在している。
それが事実である限り、彼らを止めることが何の意味を持つというのだろうか。
それが分かっていたからこそ、ギンはルキア達の関係を嫌いこそすれ、脅かそうとは考えなかった。


   けれど、今になって思う。


視線の先では、既にルキアの細い身体が白哉の性器で串刺しにされていた。
腕を兄の首に架け全身をだらりと持たれかけさせた彼女を、白哉が上下に激しく突き上げる。
結合部から溢れる愛液がルキアの太腿をぬらりと光らせ、ゆっくりと足を伝い落ちていった。
一物を抜き差しされるたび、ルキアは痩身をびくんびくんと弓形に反らして、気持ちよさそうに嬌声を上げる。
熱い吐息に塗れたその声が、石造りの牢内で恥ずかしいほど大きく残響した。
「あ、兄様……っ、にぃ、さまぁっ!」
白哉の襟を皺がつくほど強くぎゅっと握り締めて、ルキアは快感に声を漏らす。
その艶濡れた表情を薄い笑みで視姦しながら、白哉はルキアをぐいと引き寄せた。
密着し、繋がったままの二つの身体が嫌らしく絡み合い、後ろの壁に大写しになった影が炎の揺らめきのようにくねる。
両腕で体を固定され、立ったまま激しく突かれているルキアの白い肌が、ギンの目には猛毒だ。
絶頂が近しいのか強張らせた肩を軽く痙攣させている彼女に、白哉は容赦せず攻めを続ける。
舌を絡ませる濃厚な口付けを交わし、糸を伝う唾液をそのままに、濡れた舌先で少女の乳房に吸い付く。
こりこりと硬く尖った乳首は薄く桃色に色付いて、白哉の舌遣いに悦ぶように左右に揺れた。
「……っ、もう、駄目です、ぁっ、イっ……」
「まだだ」
にべも無く切り捨てて、白哉はルキアのそこから唇を離した。
唾液でてらてらと輝く乳首の卑猥さに、ルキアは思わず目を背ける。
「しっかり見ていろ」
そう口にしたとおり、白哉は入念にルキアの乳頭を嬲った。
尖らせた舌先を用いて蛇の様にちろちろと舐め、乳首が硬く勃起する様をルキア本人にまじまじと見せ付ける。
白哉に命じられたとおり、目を逸らさずにそれを見つめているルキアが、羞恥と興奮で頬を染める。
これ以上無いほどツンと大きくなったそこを指でしゅっと擦り上げれば、特大の嬌声が室内に響いた。
「ん、んんっ、……はん!」
「嫌らしい娘だ。……こちら側もしてほしいか」
まだ触れられていない右の乳房をちょんと突付かれながらそう問われ、ルキアは素直に頷く。
「お願いします……舐めて、下さい」

何故、そうも従順になれるんや。
あれだけ鬼畜で、人を人とも思わない男のどこがそんなにもいい?。
ボクと奴と一体どう違うって言う。……奴の何が、そうまでキミの心を縛り付ける?
思考は迷宮の奥に入り込み、どれほど考えようと、答えなど出るわけも無い。


   ああ、もっと早く、彼女を自分のものにしてしまえばよかった。
   せめて、この想いだけでも伝えておけば。


「……っ、もう、駄目です、ぁっ、イっ……」
びくびくと身体を震わせて達した彼女を、労わる事もせず白哉は己の欲望のまま突き上げる。
ガシガシと腰を打ち付けられるその衝撃に、ルキアが失神しかけながらも白哉へ縋り付く。
既に足に力は入っておらず、ルキアは白哉へと完全に身体を預けている。
「んっ……ふはっ、っく」
膣壁を穿たれ、子宮を突かれる感覚に、ルキアが疲弊した声と懊悩した表情で喘ぐ。
「そろそろ出すか……」
一方、対する白哉は汗ひとつ掻かぬ涼しい顔でそう口にした。
その言葉に、腕の中のルキアが悦んだような顔を見せる。
白哉がびゅくびゅくとルキアの中に精液を流し込むと、彼女はそれに合わせ全身を痙攣させた。
奥に直接出される感触に身悶えながら、ルキアはくたりと白哉の胸に頭を埋める。
その頭を無理やり引き剥がして、白哉は何も言わずルキアから距離を置く。
「あっ……」
上からも下からも精を浴びせられ、未だ精液塗れの妹に、白哉はふっと冷たい視線を送った。
彼女をそうしたのは自分自身だろうに、彼の瞳は下賎の女でも見るような蔑視のそれに溢れていた。
そうして何一つ言葉を交わさぬまま、白哉は静かな足取りで牢の戸をくぐる。
その後姿を、よろよろと覚束無い足で立ち上がったルキアが縋る様な目で追う。
「また、来る」
そんなルキアの表情など、恐らく見なくとも重々分かりきっているのだろう。
振り返りもせず低音な声で白哉がそう告げれば、ルキアの顔に明るい微笑が射した。

性交の後の気だるげな雰囲気を微塵も寄せ付けず、白哉はこちらへと一直線に歩いてくる。
そこに立つギンの前で立ち止まると、憮然とした顔で不平を言う。
「――居たのか」
「白々しいなぁ。もっと前から気付いてたんでしょ?」
その軽口に直接の答えを返さぬ代わりに、白哉はこの同僚へと冷徹に忠告した。
「こんな所まで遊びに来るとは。まさか兄も、あれの刑に反対しているわけではないだろうな」
「ボクが? どうして」
「兄は、ルキアに惚れているだろう」
余りに直接的な言葉でさらりと言われて、途端、ギンが可笑しそうに吹き出す。
ただでさえ細い目をさらに糸のようにして、ギンはくすくすと笑った。
「……ぜぇんぶ、お見通しなんやねぇ。六番隊長さんは」
笑みを崩さぬまま、ギンは白哉に答えの分かりきった問いかけをする。
「それで、分かってて見せ付けたんか。あのコが誰のもんか、ボクに分からせる為に?」
「そうだ」
「あのコの身体も命も、犯すんも殺すんも、全部あんたの手の中って?」
「そうだ。あれは私の物だからな」
激昂で青筋走ったギンの両腕が、白哉の肩へと伸びる。
掴みかかったその手を、白哉はちらりと視線を動かしてつまらなそうに眺めた。
「……冗談言うなや。あんたが救ってあげんで、誰があのコ救うんや……。
 あんた、あのコの兄貴違うんか!」
「……そんなに大切なら、兄が救ってやればよいだろう」
平坦な口ぶりで返すと、凍りつく相手に構わず、白哉は長い廊下を無音で去って行った。
独り取り残されたギンが、その場で微かに苦笑いして呟く。
「ボクに、救えてか。……あの阿呆兄貴が!!」
ガンと地鳴りに似た音を立てて、ギンの拳が眼前の壁を殴り付けた。

苛立ちと、後悔と、苦悩と、欲望と。
ギンの胸の内の多くの物がどろどろと溶け合い、混ざり合って一つになっていく。

吸い寄せられるように自然と、ギンはルキアの待つ牢へと向かっていた。
先ほど抱かれた姿のまま、ろくに着物すら着ていない裸の彼女が、そこには居た。
「お早う、ルキアちゃん。随分とそそる格好やねぇ?」
その声に振り返った彼女は、まるで蛇に睨まれた獲物のように怯えた顔をしていた。

――――

「市丸隊長……いつ、から……」
驚愕に、元より白い肌を更に青ざめさせたルキアが、慌てて床に落ちていた肌着を拾い上げた。
素早く胸の前で着物を掻き合わせたその指先が、動揺からか小さく震えている。
「ん?ずっと前から居たよ。まあ、もっとも、あれじゃ気づけ言うんが無理な話やろうけど」
「なっ……」
「あない夢中で腰振ってたら、そら他の男の魄動なんぞわからんよなぁ」
開いた瞳をにまにまと紙縒りのように細くして笑いながら、ギンは嫌らしくルキアに告げる。
その台詞に思わず目元を赤くしたルキアが、耐え切れず顔を下へと俯かせた。
無言で床へと視線を落としたルキアを、ギンの卑猥な言葉は更に深いところまで追い詰める。
「あないやらしいおねだりして、気持ちよさそうに何べんもイって」
その台詞をルキアの脳に染み込ませでもするかのようにわざとそこで一旦区切ってから、ギンは続きを口にした。
「……ルキアちゃんて、えっちなコぉなんやねぇ」
揶揄するように言ったその声音に、キィと戸の軋む耳障りな音が重なる。
はっとルキアが顔を上げれば、そこには笑顔を貼り付けたままこちらに近付いて来るギンの姿が在った。
反射的に後ずさろうとするルキアを、しかしギンがそう簡単に逃してくれるはずもない。
風のように素早い瞬歩で声を上げるまもなく捕らえられ、即座に格子へと押さえ付けられる。
細身な身体の割りに予想外に強い握力が、ルキアの両の手首を痛いほどに締めた。
身体を捩り、手足をもがいて必死に抵抗するも、男の力の前に適うわけもない。
「やめろ!離せ、離さぬか!!」
「離さへんよ」

両腕を精一杯にバタつかせて抵抗するルキアの耳元に唇で軽く触れ、ギンはぼそりと呟いた。
その声は氷のように冷え切っていて、皮肉めいた普段の口ぶりの何倍も恐ろしさを増している。
「それに、そない怖がらんでも平気や。すぐ、なぁんも考えられなくなる」
真顔で告げられたその台詞に、本能的な恐怖は更に募る。
肩を震わすルキアをあやすように優しい手つきで引き寄せると、ギンはどこか加虐的に唇を歪めた。
「……第一、君は、だぁい好きやろ?」
『こういうコト』と唇を動かしながら、ギンの指先がルキアの胸元へと迫る。
腕を離されたルキアが、その隙に密着している身体を離そうとするのを、ギンは見逃さずきっちりと取り押さえる。
あっけなく彼女を押さえ込むと、彼はぎゅぅとその身にルキアを抱きすくめた。
容易に指の回る人形のように細い手首を更に強く掴んで、面倒くさそうに眉を寄せる。
「仕方ないなぁ」
その手首を二本纏めて頭の上に持ち上げさせると、ギンは床に落ちていた緋色の帯を手に取った。
長さを手早く整え、背後の太い格子にくるりと引っ掛ける。
そのまま後ろ手に縛り上げてしまえば、それだけで、彼女の自由は容易に奪えてしまう。
「や、めろ……離せっ!」
乱れた襟から覗く白色の喉元に喰らい付いて、ギンはそこに赤く歯形を刻み付ける。
舌の動きに合わせて、ずるりと軟体動物に這われているかのような感触が皮膚を襲い、気色悪いことこの上ない。
けれどその舌が胸元に近づくにつれ、ルキアの身体はいやがおうにも昂ぶっていく。
「ひはっ……、やだ、やめろ市丸っ!!」
「そないな嘘、吐かんでええのに」

ギンの唇が、ルキアの裸の胸元を慣れた舌つきでちろちろと嬲る。
先刻兄に抱かれてからろくに時間が経っていない身体は、未だ熱を十二分に保ったままで、
悪戯に触れる気色悪い舌先にも、容易に反応を見せてしまう。
「っ、く……」
声を押し殺そうと唇を前歯で噛み締める彼女の姿は、驚くほどに嫌らしい。
必死に耐えるルキアに嫌がらせをしたくて、ギンは彼女の唇を空いている方の手で抉じ開ける。
「んっ、むぅ」
食いしばる歯の間を長い指で無理に突かれて、思わずゴホゴホと咳き咽る。
その隙を縫って素早く指を加えさせると、ギンは胸への責めを再開した。
吸い付く様に柔らかな感触のそれを楽しみながら、硬く尖った頭頂部にちゅぅと音をさせて喰らい付く。
その強烈な刺激にも、しかしルキアの身体は徐々に順応していく。
尖ったそこをギンの舌で煽られて、全身が炎で炙られたように熱く火照る。
下腹部を襲うじんわりとした感触にどうにもできず、ルキアはもじもじと内股をすり合わせる。
「ルキアちゃん、意地張らんでもっと素直になったほうがええよ?」
「んんっ!!」
ギンが、一段強く胸先を吸い上げる。
耐え切れず嬌声を上げてしまったルキアを、ギンの細い目が見つめている。
その吸い込まれるような瞳の色が、ルキアの羞恥心を幾重にも倍増させる。
「だ、誰が、いじ、など……」
「おや、違うん? ならこれは、何やろねぇ」

先ほどまでルキアの肩にかけられていたギンの両手が、唐突に彼女の股の間に差し挟まれた。
ルキアがろくに身動きを取れぬのをいいことに、彼はその奥先に指をぬるりと滑らせる。
快楽によって分泌されたぬめりをべっとりと塗布された指先が、ルキアの腿の内を行き来した。
ぬるぬるする感触と眼前でくすくすと笑いを噛み堪えるギンの姿に、言いようのないほどの羞恥を覚える。
「これ、ルキアちゃんのアソコの汁やろ?そない気持ちいい?」
「……ち、違う!」
衝動的にそう答えるものの、ギンの言葉が事実であるのは明白だ。
「へぇ? なら一体、何でなんかなぁ。ルキアちゃんがココ濡らしてるんは」
ギンは、ねっとりとしたそれを親指と人差し指で摩り合せ、糸を引かせて楽しんでいる。
その動作に吐き気を覚えて目をそらしかけたルキアを、しかしギンが許すはずもない。
「教えて、ルキアちゃん」
「やっ……」
ルキアの頬に己の指先を汚していた粘液を擦り付けると、ギンは笑顔の、そのくせ少しも笑っていない瞳で告げる。
「これは何?」
そう強制されても、そんな恥ずかしい単語を口に出せるはずなどない。
無言でいやいやと首を横に振るルキアに、ギンは「それなら」と再び掌を近づけた。
「言わないんなら、お仕置きやね」
ルキアの股間へ伸ばした腕をもっていくと、ギンは彼女の両脚をおもむろに開かせた。
先刻の行為で暴かれていた通り、ルキアのそこはぐっしょりと湿り潤っていた。
うっすらと生えた恥毛を掻き分けて、その奥に在る芽をつんと指先で摘み上げる。

「あっ!」
ぬるつくそこを、二本の指でぐちゅぐちゅとこすり合わせる。
その刺激に合わせて、ルキアが「ひぃっ」と喘ぎながら苦しそうに呼吸を乱した。
「あれ? ルキアちゃん。さっきよりもっとコレが出てきてるみたいやけど?」
意地悪くそう尋ねながらも、ギンの手は止まらず、ルキアの神経に快楽を与え続ける。
充血してぷっくりと肥大したそこを、クリクリと指の腹を用いて卑猥に弄くる。
敏感なそこは、ほんの少し触れられただけでも声が漏れてしまうというのに、
ねっとりと、こね回すように嫌らしい手つきで刺激されては、我慢などできなかった。
嬌声とともにじゅぷじゅぷと汁が溢れ、ルキアの細い腿を伝って石造りの床に恥ずかしい染みを落とす。
「あっ、ふぁ……ぁっ!!」
がくがくと、ルキアの全身が大きく揺れた。
今にも達してしまいそうなのを抑え、快感に対抗するかの様に両の腿をぎゅっと強く閉じ合わせる。
しかし感情とは裏腹に、肉体はより多くの快感を追い求めてしまう。
ギンの指に押し開かれ、たいした抵抗もなくルキアの両脚はまたそこに侵入者を許した。
「や、めろ、市丸……、それ以上した、ら」
「イってまう?」
問う間にも、ギンの手は休むことをしない。
かりかりとそこを掻く爪の動きは、悶え死んでしまいそうなほど甘い拷問だ。
生理的な涙に濡れた瞳でギンを見上げると、ルキアは途切れがちな声で縋る様に答えた。
「そ、うだ。だから、もう……」

これ以上の刺激を与えないでくれ、と。
そう願おうとしたルキアの言葉の続きを、ギンがとぼけた口調でわざとらしく遮る。
「もう、早くイかせてくれって?」
「っ! ち、が……んぅうっ!!」
押しつぶされそうな強さでぎゅぅとそこを捻られて、ルキアの身体が弓形に仰け反る。
刺す様な痛みに全身を駆け抜けられ、彼女はぽろぽろと涙を落とした。
「っあ、やだっ……ぁあっ」
その嬌声と同時にびくびくと身体を震わせてから、ルキアはだらんと腕を弛緩させる。
達してしまったのだ、とそう気づいたのは、ギンにぺちんと頬を張られてからだった。
「イってもうたねぇ? お兄さんやない男の手で」
絶頂の残滓で未だぼんやりと呆けた顔のルキアに、ギンは意地悪く唇を動かした。
その台詞はいつものごとく皮肉的で、しかしどこか嫉妬の炎を秘めていた。
「……っ、外道が」
吐き捨てるようにそう告げたルキアの、臍から首筋にかけてを一直線に、ギンはつぅっと撫で上げる。
下から上へ上ってくる指先が彼女の白い喉元を捕らえ、赤ん坊でもあやすようにこちょこちょとくすぐった。
いやがって振り払おうと身体を左右にするルキアを押さえつけ、ギンは耳元に舌を這わせる。
進入するその舌に合わせ、酷く耳障りな声がルキアの耳孔を犯した。
「六番隊長さんよりも巧かったやろ。……ボクに乗り換えんか?」
それは、ギンにとっての精一杯の言葉であった。
こうして悪戯に人を傷つけながらする以外に、彼は自身の気持ちの伝え方を知らなかった。

息を呑んで押し黙るルキアの頬を、ギンの両手が泡を掬うように優しく包み込む。
それは、見方によっては口付け前の恋人同士の抱擁にも似た光景だった。
しかしルキアにはギンを愛しく思うことなど微塵もできず、ギンの真の気持ちにも当然気づく筈がなかった。
眼前の憎い男をまっすぐに見据えて、彼女はギンに冷たく言い放つ。
「私は貴様など大嫌いだ。貴様に触れられていると思うと、今も吐き気がする」
「……へぇ」
その相槌は、いつものへらへらとしたそれとほんの少し違っていた。
悲しさと惨めさの交じり合った、けれどそれをどうにか覆い隠そうとした空虚な相槌だった。
「まだまだ、素直にはならんねぇ」
表情を普段のものに戻して、ギンはぽつりと呟く。
「やっぱり、抱かな駄目やなぁ」
「何を……」
「女従わせるんには、無理やりでも何でも抱いてしまうんが一番手っ取り早いからねぇ」
愕然とするルキアに、さも当然といった顔で答えると、ギンはルキアの唇を己のそれで閉ざした。
唇をこじ開けて入り込んだ舌が、ぬるりと彼女の口腔に押し入る。
舌同士を無理に絡ませられ、たっぷりと唾液を送られて、ルキアは苦しげに噎せ返った。
口を塞がれては吐き出すことも出来ず、仕方なしにルキアはこくこくと喉を鳴らす。
咽喉を下っていくギンの唾液は、まるで毒薬のように思えた。
射抜くような瞳でにやにやと見据えられて、自然にじっとりとした汗が背中を流れる。
蛇に睨まれた蛙そのままに、硬直し微動すら出来ない。

「…兄様……」
咄嗟に口をついて出たルキアのその言葉は、だがギンの嫉妬心を再び燃え上がらせる効果しか無かった。
「来ない、ゆうてるやろ」
凍りつかされてしまいそうなほど冷たい、不機嫌極まりない声でそう言って、彼女を抑えつける。
鉄格子に再び背中を押し付けられて、ルキアは全く身動きが取れなくなる。
「あの阿呆兄貴はな、ボクがキミ犯しに行くん知っても、止めもしなかったわ」
「う、嘘を吐くな……! 兄様は、兄様は……」
そんな方ではない、と。そう反論したいのに、唇は無言のままだ。
それが事実であることを、ルキアは心の奥底で敏感に感じ取っていたからだ。

……市丸の言っている事は、真実なのだろう。
幾度肌を重ねても、一度としてあの方は私自身を見て下さった事などない。
兄様にとって、所詮私は緋真様の代用品でしかないのだ。
そしてそれを分かっていて尚、そうであっても構わないからと、自分はあの方を愛したのだから。

「それでも」
震える声で、ルキアはギンに告げた。真っ直ぐの瞳が、眼前の彼をしっかと捉える。
「兄様は、優しい方だ……。貴様とは違う」
奥様を亡くしたことで、その怜悧な心をバラバラに壊してしまった兄様。
ただ面差しが似ているからという理由だけで、私をお引取りになった兄様。
それほどまでに奥様を愛していらした、優しい優しい、愚かなほどに優しい兄様。

「玩具だろうと代わりだろうといいのだ。あの方のお側に居られるのなら、私は……」 
自分の考えの自虐さ加減に、嫌気がさした。
それでも、その思いは純然たる真実で、だからこそ余計に救われがたかった。
「馬鹿やな」
突然に、ふわりとギンの片手がルキアの頬を撫でた。
その手つきが、普段とは比べ物にならないほど優しいことに、ルキアは気づかない。
ギンの掌に触れられて初めて、ルキアは己の頬に涙が伝っているのを知った。
戸惑うルキアより先に、ギンの指先がその雫をそっと拭う。
「……ホンマに、馬鹿な子ぉや」
ギンの両腕が、ルキアの肩に回される。
温かい人肌が、ルキアの折れそうな細い身体を優しく包む。

惹かれた理由が、今なら分かる。
彼女は自分と同じなのだ。即ち、勝ち目など最初から一分も無い、不毛な恋をしている点において。
亡くなった妻を未だ愛する白哉。彼を恋うルキアと、そのルキアを欲する自分。
歪な四角関係の中でその恋心が一生報われないという点で、自分達はよく似ている。

彼女の髪をかき上げる。露わになった額に落としたキスは、ふわりと穏やかだった。
突然の予期していなかったその行為に、不快さよりも驚きが大きかったのだろう。
きょとんとした顔で自分を見上げるルキアの可憐さに、心から愛しさが込み上げる。

「怖いことはせんよ。痛くもしない」
言葉の通り、ギンはルキアの手を戒めていた拘束を、するりと紐解いた。
簡単に逃げてしまえるようにされて、ルキアはむしろ逆に戸惑う。
「何故?……っ! 」
不思議そうに眉を寄せた彼女を抱きすくめると、ギンは彼女の問いに答える代わりに唇に口付けた。
先ほどの乱暴なキスとは違う、軽く啄ばむ様な淡やかなキスだ。
そのくせ、二人の間をつぅっと橋渡す唾液の糸は妙に嫌らしい。
驚いて相手の顔を見つめるルキアに構わず、ギンはすっとその場に膝を突いた。
ほの白い足の甲に、ちゅっと音を立て唇を寄せる。
従者が永遠の忠誠を誓うようなその体勢に、ルキアが不可解そうな面持ちでギンを見下げる。
その表情をどこか照れくさそうな顔で見上げながら、ギンは己の唇を、徐々に高い位置へと上げていく。
脛と踝、ふくらはぎ、そして両腿の内側に。
キスマークの付けられる箇所が少しずつ上がっていく度に、ルキアがびくんと脚に力を込める。
その反応が楽しくて、ギンは幾つもの跡をそこに残した。
蝋のように滑らかな肌の表面に点々とつけられた赤い跡は、見るからに官能的だ。
舌の感触と、下から見上げられている妙な感覚とに身悶えしながらも、なぜかルキアは動けずにいた。
もう、手の戒めは解かれているというのに。
しかしその口唇が恥毛の内を掻き入ろうとしている段になってはじめて、ルキアははっと我に返る。
「……っ、そこ、は…」
慌ててぎゅっと両足を閉じようとするが、快楽に痺れた身体には力が伝わらない。

だらりと開いたままの足の間を、ギンの長い舌がぴちゃぴちゃと押し進んでいく。
「あっ……そこ、は駄目、だ…っ」
そう言いつつも、いつの間にかルキアの両手は縋るようにギンの頭部を押さえている。
それが二人を更に密着させてしまう行為だと、快感に侵された頭では考えられないらしい。
「……んっ、ふぁ、ぁあっ!!」
そこからぐちゅぐちゅと溢れる透明な雫を、ギンは上等の甘露のごとく美味そうに舐め掬う。
「やっ、いち、まるぅ……ひぅっつ」
指だけでも達してしまった敏感な突起をずずっと吸い上げられ、ルキアの声に悲鳴が混じる。
勃起したそこをちゅうちゅうと吸引されて、ルキアの呼吸は荒くなる。
「ふ、ぁっつ、や、だぁ…」
痛みは感じない。けれど、ねちねちと甘く噛むその感覚は、痛み以上に体を苛んでいく。
「気持ちええ?」
訊ねられ、反射的にルキアの頭がこくんと上下に揺れる。
その反応を満足そうに見据えて、ギンは愛撫を更に激しくした。
尖らせた舌先をルキアの最奥に突き入れて、幾度も出し入れを繰り返す。
中まで入ってくる舌はルキアの秘部を陵辱し、襞の一枚一枚まで確認した。
皺の数でも数えているかのように丹念に、時間をかけ内側からルキアの理性を溶かしていく。
「っひ、市丸、いちま、る……」
羽織の肩口にしがみ付く、弱弱しい手つきが愛らしくて仕方ない。
布地にぽたぽたと落ちる水滴は、もしかして快感の涙なのだろうか。

ぞくぞくとする思いと共に、ギンはルキアのそこから舌を引き抜く。
絶頂の少し前で行為を止められたルキアは、安堵よりも躊躇いの大きそうな顔でギンを見る。
その顔に嫌でも嗜虐心を喚起されて、ギンはわざと可虐的な言葉で訊く。
「入れてほしい?」
そう訊けば、当然ルキアはふるふると頭を横に振る。
けれど、否定の仕草は妙に力なさ気で、それが真実でないのを簡単に見ぬかさせる。
「へぇ、ホンマに?」
ルキアの蜜で既にしとどに濡れた人差し指を、ギンは少しだけ彼女の中に埋める。
第一間接のあたりでとめてくいくいと動かせば、その刺激にルキアは呆気なく喘ぐ。
「……はぅっ、ひ、」
「なら、ここで終わりでええんや」
くちゅくちゅと膣内の指を軽く上下に擦らせれば、ルキアの声はますます大きくなる。
立っているのが辛いのか足が軽く弛緩し、ギンを頼るようかのにしがみ付く握力が強くなった。
「やっ……」
ギンの空いた片手が、ピンピンに勃っている乳首をくりっと摘み上げた。
奥壁を突くのと同時に扱かれて、快楽に支配された瞳が涙で揺らめく。
小さな胸をすっぽりと収めたギンの掌が、卑猥な動きでルキアのそこを弄ぶ。
先をつまんでぎりぎりまで引っ張ったり、そこからピンと離してみたり。
そうする間も、中を広げ陵辱する指先は、止まらずにぐちぐちと動き続ける。
その刺激で完全に快楽の海に溺れ落ちたルキアが、蚊の鳴くような声で告げる。

「……市、丸っ。…」
その哀願を含んだ口ぶりに続く言葉を予想して、ギンは故意に動作を停止した。
煽るようにして、ルキアの中から引き抜いた指をべろりと舐めて見せる。
「何? ルキアちゃん」
「っ、……お願いだ、から」
注意していなければ聞き落としてしまいそうなほど小さな声で、ルキアは唇を震わせる。
火の点いた身体で快感に耐えることほど、苦しいものはない。
どれほど嫌悪する男が相手であっても、それは、生理的に仕方のないことだった。
「……して、くれ」
羞恥に、目元が赤く染まっている。
それを見たギンは、にこりと笑って、手早く着物の前を肌蹴させた。
そそり立つ物をルキアの腹に押し当てると、熱く硬いそれの感触に、彼女は息を張り詰めさせた。
「ええんやね」
その問いに、俯きながらも小さく頷く彼女を確認すると、ギンはルキアの両足をぐいと割り開いた。
濡れた秘園に猛った性器が宛がわれ、思わずルキアが瞳を閉じる。
一息に中を貫けば、ルキアの苦しそうな吐息がギンの胸元をくすぐった。
狭いその奥に、ゆっくりと腰を進めていく。
ざらつく中の感触は心地よく、すぐにでも強く突いてしまいたい衝動に駆られる。
それを我慢して、まずはゆるゆると、結合を慣らすように軽く揺さぶる。
「あ、ふっ……」
痛みと快感に挟まれて、ルキアはびくびくと全身を痙攣させる。

その身体を抱き留め、柳腰をぎゅっと引き寄せて、ギンは少しずつ突き上げを強くしていく。
深く挿入されたまま、ガツガツと腰を打ち付けられて、ルキアの口からは嬌声が絶えず溢れ出た。
「ひ……あ、くる、し……っ」
とうとう立てなくなったのだろう。そう言いながら、ルキアは足を折って崩れ落ちそうになる。
その痩身を容易に抱え込むと、ギンは両腕で彼女を抱き上げた。
いっそ細すぎるほどのその身体は、至極簡単に持ち上がる。
「や、嘘だっ……!」
挿入されたまま地に足の着かない不安定な体勢にされて、ルキアは身を竦める。
けれど構わず、ギンはそのまま、再びルキアを突き揺らした。
「……っん、あ、んんっつ!」
今にも落ちてしまうんじゃないかと不安になる浮遊感が、ルキアを襲う。
その恐怖から逃れるため、彼女はギンの首に両腕を回しぎゅっと密着した。
「いちっ、まるぅ……」
名を呼ばれたギンは、それに答えるかのように激しく、ルキアをぐいぐいと突き上げた。
貫いた性器の奥の奥まで自分の精液で汚してしまいたいという思いが、後から後から湧き上る。
腕の中のルキアの身体は小さく、ギンの強烈な攻めに壊れてしまいそうだ。
ギンの一物が中で擦れる度に、ルキアの全身は硬く強張って緊張する。
「っ、駄、目……も、う」
途切れる言葉に、ルキアが言葉をまともに発するのすら難しいのだと分かる。
間断なく続けられるギンの行為は、ルキアから意思と意識を少しずつ奪い去っていた。

ギンの動きに翻弄され、ただ嬌声をあげること以外何もできなくなっていく――。
もはや失神しかけている彼女をそれでも手放すことはなく、ギンは一心に攻めを続けた。
行為の根底にある自身の気持ちを、――彼女への想いを打ち消すかのように必死に。
「ひっ、あ……んぅ、」
絶頂が近いらしく小刻みに身体を震わせる彼女を、更に強く抱く。
眼前で露になった真っ白の喉元に、吸血鬼のように歯を立てると、ルキアがぶるりと打ち震えた。
それに合わせて、限界まで進められた腰を激しく打ち上げる。
「っ、ひ、ぁ、あっ、…さま、……ぃさまぁっ!!」
ルキアが達したのに少し遅れて、ギンもまた、その奥に精をぶちまる。
白濁したそれがルキアの内部を汚して、太腿伝いに脚を落ちていった。
「……結局、最後までそうなんやねぇ」
皮肉混じりな顔でふっと苦笑して、まだぼうっとしているルキアを一瞥する。
吐精後の気だるさと同時に覚えた言いようのない不快感の理由が、彼女の最後の言葉にあったのは明白だった。
しかし、恐らくルキアは自分がその男の名を口に出していた事すら気づいていないのだろう。
彼女にとって、彼はそれほど絶対的な存在であるから。
それこそ、目の前で自分を抱いている男などの何倍も。
「まるで、道化やな……」
呟く言葉に、首を傾いだルキアにそれ以上は何も言わないで、ギンは牢を出た。
一度だけ振り返ったその先に居た少女は、まだぼんやりとした瞳でこちらを見返していた。

*         *         *

あの日から、数日が経っていた。
あれ以来、ギンはルキアの牢に顔を見せてはいなかった。
けれど、最後に一度だけ。もう一度だけ会いたかった。

移送中の彼女を狙って、ギンは普段の表情を貼り付けたまま話しかけた。
周囲には他の死神がいる。
自分達にだけ分かるように『ボクとキミの仲』と口にすれば、瞬間、彼女の表情は色を変えた。

……それで、いい。
先ほどまでのキミはもう、死ぬ覚悟を決めた顔をしていた。
けれど、もっと足掻け。生きたいと願え。キミがそう願うなら、ボクは――。

「……助けたろか?」
彼女の耳朶に頭を寄せてそう告げる。
鼻を近づけたその髪から香る甘い匂いに、こんなときだというのにまた欲望が込上げた。
「どうや?ボクがその気になったら今スグにでも助け出せるで。キミも阿散井クンもそれ以外も」
驚愕と懐疑と、そして一縷の希望を宿した瞳が、ギンを真っ向から貫く。
怯えの中、僅かに心に芽生えた期待を押し殺そうとしているのだろうか。
ルキアは、決定的な言葉を口にしてしまうのを恐れるかのように、唇をぎりりと噛締める。


……どうして、そう依怙地になるんや。
キミには、死ななあかん理由なんて一個もないのに。
キミの刑は、僕らのエゴによって作られた偽物であるのに。
逃げたいとそう言ってくれたら、阿散井恋次もあの旅禍の少年も助けてあげる。
『助けて』『死にたくない』と、今この場でみっともなくボクに泣き付いてくれれば、
きっと、ボクは全てを捨てて君を救ってやるというのに。
……死神としての誇りやら職務やら。そんな物はもう、当の昔にどこかへ打っ棄ってしまった。
けど、ボクの中に唯一残っているあの人への忠誠心も、キミのためなら惜しくないんや。
キミの命のためなら、キミが生きているという事実が残るのなら、計画なんてどうなっても構いやしない。
そう言い切ってしまえるくらい、ボクはキミを愛しているから。
――お願い。どうか、どうか今だけはボクに頼って。

心中で、祈る。彼女がただ一言その言葉を、自分の前で宣言してくれることを。
崇拝してきた隊長を裏切ってでも彼女を生かす理由を、ルキア自身が作ってくれることを。
けれどこんな局面で彼女が、心底毛嫌いしている自分に頼るはずもない。
そんなことは言う前から百も千も承知だったから傷つきすらせず、冷たい作り笑いを浮かべてギンは呟いた。
その微笑がどこか悲しげな物を含んでいたのに、しかしその場で気付いたものは居なかった。
「……嘘」

小さな頭をぐいと上向きに引き上げてそう言えば、ルキアは愕然に瞳を見開いた。
触れた身体は、数日前より確実に痩せ細り、このまま折り殺してしまえそうに思える。
その思考に、いっそ、そうしてしまえたら、と黒い欲望が押し寄せるのを抑圧し、彼女から離れ背を向ける。
恐らく見てなどいないであろう事を了承しつつ、振り上げた手を左右に軽く振って別れの挨拶に代える。
「バイバイ、ルキアちゃん。……次は双極で会お」
告げて去り行く背後から、彼女の叫びがこだました。
絶叫と同時に崩れ落ちる身体の、線の細さが痛々しい。
もう一度そちらに走り出して、抱えて逃げてしまいたい衝動に駆られる。
それを抑え、けれど彼女と離れてしまうのが惜しいかのようにゆっくりと、時間をかけギンは橋を渡った。
もうあの橋の向こう側に戻れない。彼女を守ることも、出来ない。
なにせこれから数時間もすれば、自分達が彼女を殺すのだから。

……神様がいかに無能な存在かよくよく知っているけれど、それでも今は縋りたい。
誰か、あの子を助けて下さい。
阿散井クンでも、旅禍の少年でも、或いは――。

*         *         *

最後に『その男』の顔を想起したのは、どうしてだろう。
ありえなさ過ぎて、いっそ笑えた。
彼が、自身を捨ててルキアを救おうとするなど、ある筈が無いのに。

市丸ギンはそう思い、小さく小さく舌打ちをした。


(完)